子宮体癌

『子宮体癌』は、子宮の奥の糸球体部にできる癌です。 現在、子宮にできる癌としては、その割合が増え、女性の癌全体の中でも、乳癌に次いで2番目に多くなっています。 近年は、発症の若年化が問題となっています。年代別で多いのは、閉経前後の40~50歳ですが、20歳代後半以降の女性にも増えています。 癌は”中高年の病気”と思われがちですが、子宮体癌は、閉経前の若い世代も注意が必要だといえます。


■子宮体癌の原因

子宮体癌の発生には、卵巣で作られる女性ホルモンが深く関わっています。 女性ホルモンには、子宮内膜の増殖を促す「エストロゲン」と子宮内膜の増殖を抑える「プロエストロゲン」があります。 この2つのホルモンのバランスが何らかの原因で崩れ、エストロゲンの働きが過剰になり、子宮内膜が異常に増殖すると、癌が発生します。 若い人にも子宮体癌が増えている要因としては、初潮年齢が早くなったり、妊娠・出産の回数が少なくなったりして、 エストロゲンにさらされる期間が長くなったことが挙げられます。 また、食生活の欧米化に伴う肥満も、要因の一つと考えられています。 エストロゲンは卵巣以外に、体の脂肪組織でも作られています。 肥満のある人は、脂肪組織が多い分、エストロゲンの分泌が過剰になり、子宮体癌のリスクが高くなると考えられます。

子宮体癌は、乳癌と同じように、女性ホルモンのエストロゲンに長期にさらされると発症しやすいといわれます。 子宮体癌は、組織学的にエストロゲンに依存するタイプと、エストロゲンに依存しないタイプに分けられます。 また、子宮体癌の前癌症状として、注目されているのが子宮内膜増殖症です。 このなかの、子宮内膜異型増殖症複合タイプが高エストロゲン状態にさらされて刺激を受けると、癌化するといわれています。 ただし、女性ホルモンとは関係なく発症する子宮体癌もあります。 子宮体癌は発生場所が子宮の奥なので発見しにくい癌の一つといわれます。 検査は、内診と細胞診です。細胞診は、細い長めの器具を用いて、子宮体部の内腔から細胞を取り出してチェックします。 あらかじめ超音波断層撮影を行い子宮の位置などを調べてから行います。痛みはそれほどではありません。 この検査で、要精密検査とされた場合には、子宮内膜の組織を採って調べる組織診や子宮の内部を直接見る子宮鏡診を行い、癌が確定されます。 子宮体癌は、異型増殖などの前癌症状がみられる0期から、癌が骨盤を越えて広がり、腸や膀胱に転移するⅣ期の5つの病期に分類されます。

子宮体癌が発生する部位


■サインは「不正出血」

子宮体癌のサインは、月経以外の性器からの出血、すなわち「不正出血」です(下図参照)。 また、「おりものに悪臭がある」「おりものが茶色っぽい」などの変化にも注意してください。 不正出血や月経不順は、ストレスが過度のダイエットなどでも起こりますが、子宮体癌を始め、子宮頸癌や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性があります。 サインをそのままにせずに、原因をきちんと調べておくことが大切です。 月経時の出血量に関わらず、気になる症状があれば、婦人科を受診するするようにしてください。 ただ、月経中だと、正確な診断が難しくなることがあります。 月経のある人は、できれば月経が終わった直後から1週間程度のうちに受診するのがよいでしょう。

子宮体癌のサインをチェック

●子宮体癌の検査

症状があって受診した場合は、まず、「細胞診」が行われます。 専用の器具を膣から子宮内まで入れて子宮内膜の細胞をこすり取り、癌細胞の有無を顕微鏡で調べます。 また、超音波を発生させる器具を膣から挿入する「経膣超音波検査」で、子宮内膜の厚さなどを観察します。 さらに、必要に応じて、子宮内膜の組織を採って詳しく調べる「組織診」を行います。 子宮体癌の検診の実施状況は、自治体によって異なります。 自分でサインに気付き、検査を受けることが早期発見の要です。


■子宮体癌の治療

子宮内膜異型増殖症の場合、妊娠出産を希望する人には、プロゲステロンによるホルモン療法を行います。 希望しない場合には、単純子宮全摘術を行います。 Ⅰ期では、単純子宮全摘術、両側付属器切除術、子宮の筋肉へ深く侵入している場合には骨盤リンパ節郭清術や傍大動脈リンパ節郭清術も行います。 再発の可能性が高い場合には、術後に化学療法を行います。 Ⅱ~Ⅲ期に入ると、単純子宮全摘術、両側付属器切除術、骨盤リンパ節郭清術、傍大動脈リンパ節郭清術を行い、術後は化学療法を行います。 Ⅳ期では、化学療法が中心になります。

【ホルモン療法】

癌が子宮内膜にとどまっている最も初期の癌で、癌の悪性度が低く、患者さんが強く妊娠を望んでいる場合は、 子宮を残すために、ホルモン療法を検討することもあります。 子宮内膜の増殖を抑える働きのあるプロゲステロンのホルモン薬を4~6ヶ月間服用します。 治療中のその効果や癌の状態を確認するため、定期的に子宮内膜を採取して検査が行われます。 ただし、癌を一時的に排除できても、治療をやめるとすぐに癌が再発する危険性もあります。


●子宮体癌の病期
病気 特徴
Ⅰ期 ⅠA期 子宮筋層の1/2未満に広がる
ⅠB期 子宮筋層の1/2以上に広がる
Ⅱ期   子宮体部を越えて頸部に広がる
Ⅲ期 ⅢA期 子宮外膜や骨盤の腹膜あるいは卵巣・卵管に広がる
ⅢB期 膣並びに/あるいは子宮傍組織に広がる
ⅢC期 ⅢC1期 骨盤リンパ節転移がある
ⅢC2期 傍大動脈リンパ節転移がある
Ⅳ期 ⅣA期 膀胱ならびに/あるいは腸粘膜まで広がる
ⅣB期 腹腔内ならびに/あるいは鼠頸部のリンパ節転移を含む遠隔転移がある

●早期なら多くは根治を望める

もっとも初期の子宮体癌にたいしては「ホルモン療法」を行うこともありますが、通常、治療の第一選択は「手術」です。 開腹して、子宮と卵管、卵巣を摘出します。子宮体癌は卵巣に転移しやすいため、癌が子宮内膜の中だけにとどまっていても、 卵管や卵巣を摘出するのが基本です。早期なら、8~9割は手術で根治が可能だといわれています。 また、開腹手術よりも身体的負担を減らした「腹腔鏡手術」も行われています。 癌が子宮内膜の外に広がっている場合は、子宮周辺の組織やリンパ節も切除します(下図参照)。

癌の進行に応じて切除範囲が決まる


◆手術後に抗癌剤治療などを行うことも

早期癌でも特殊なタイプや、リンパ節転移がある場合には、手術後の再発率が高くなります。 そこで、再発予防のために、「抗癌剤治療」や「放射線治療」を追加することがあります。 手術が難しい場合も、抗癌剤治療や放射線治療が行われます。 また、一部の子宮体癌では、抗癌剤治療で効果がない場合でも「免疫チェックポイント阻害薬」の「ペムプロリズマブ」が有効なことがあります。

■手術後は「リンパ浮腫」に気を付ける

手術でリンパ節やリンパ管を切除するとリンパ液の流れが滞って、脚がむくむ「リンパ浮腫」が起こることがあります。

◆リンパ浮腫の4つの治療

リンパ浮腫にたいしては次の4つの治療法を組み合わせて、生活の質を保ちます。

▼弾性着衣
弾性ストッキングや弾性包帯で脚を圧迫し、むくみを抑えます。

▼リンパドレナージュ
手でさするなどなどしてリンパ液の流れを促すことです。 自分で行う方法と、専門家が行う方法があります。

▼適度な運動
軽く体を動かしてリンパ液の流れを促します。

▼スキンケア
皮膚にできた傷から細菌が入って感染し、リンパ浮腫を招くことがあります。 皮膚を清潔に保ち、保湿することが大切です。

手術後のリンパ浮腫が早くに改善し、それ以降、浮腫が現れない場合も多いですが、数年以上たってから悪化することもあります。 過剰な心配はいりませんが、むくみに気付いたら、担当医に相談してください。