子宮頸癌

定期的なチェックで「治せる病気」に
性体験があれば、10代からでも検診を

子宮癌には、「子宮頸癌」「子宮体癌(内膜癌)」の2つがあり、日本人に多いのは子宮頸癌です。 子宮頸癌は、外子宮口付近(子宮膣部)に発生することが多い癌です。 膣のほうから見ると、奥の突き当たりに頸部の一部が見えますが、そのあたりに癌が発生することが多く、 検査すべき細胞や組織を採取しやすく、早期発見が容易なので、早期発見と治療によってほぼ100%治るといわれています。 頸部の癌は非常にゆっくり増殖しますし、検査では、癌になる前の異型細胞の段階から発見診断することができます。 また、他のSTD(性感染症)による子宮頸管炎なども、癌を起こしやすくするといわれています。 このように、SEXの経験があれば若くても定期的な検診は必要です。 特に30歳以降は、半年~1年に1度は頸癌検診を受けることが進められています。

子宮頸癌を発生する部位

ごく一部が癌化する


■子宮頸癌の原因

子宮頸癌の発症には、STD(性感染症)のひとつであるヒューマン・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)の長期にわたる持続感染が関与しています。 この事実が子宮頸癌を性感染症として理解することを容易にしています。  性行為によって感染し、子宮頸癌患者の90%以上から発見されます。 感染だけでは症状は現れず、普通は2年くらいで自分の持つ免疫によって自然に消えていきます。 ただ、その中の16型、18型、33型、52型、58型といったウィルスは強力で(ハイリスク型ウィルス)、 このウィルスに他の要因が加わると子宮頸部異形成という前癌症状を経て、子宮頸癌を発症させるといわれています。 ただし、このハイリスクウィルスが子宮頸部の癌化を促すのは20%程度とされます。 現在では多くのハイリスク型HPVに有効なワクチンや、HPVの持続感染を予防するワクチンなどが研究開発中です。 2009年(平成21年)、16型、18型のHPVワクチンが、日本でも認可されました。 ただし、日本の場合、このタイプのHPVは50%程度とされます。
子宮頸癌検診では、内診と細胞診が行われます。検査そのものは、ほとんど痛みがありません。 異形細胞が認められ、精密検査の必要がある場合は、コルポスコープによって患部を拡大して調べ、組織を採取して病理検査を行います。 精密検査の結果、癌だった場合は進行状態により、癌上皮内にある0期から骨盤の外に広がっているⅣ期の5つに分けられます。 子宮頸癌は非常にゆっくり増殖しますが、癌細胞が子宮頸部に見つかる以前の初期段階に、正常でない細胞が発生します。 この正常ではない細胞を異型細胞と呼びます。細胞診ではこの異型細胞の段階から診断することができるのです。

感染を予防するワクチン


■子宮頸癌の早期発見

子宮頸癌は、進行すると不正出血などの自覚症状が現れますが、初期にはありません。 早期発見のためには、検診を受けることが最も重要で、2年に1度受けるのが望ましいとされています。 子宮頸癌検診では、「細胞診」が行われます。綿棒やブラシなどで子宮頸部をこすり、綿棒を採取して調べる検査で、癌化する前の異形成を見つけることができます。 検査は、力を抜いていれば痛みはほとんどなく、1分ほどで済みます。 子宮頸癌検診は、自治体や職場での検診の他、医療機関で受けられます。 自治体などが行う子宮頸癌検診は、20歳以上を対象に費用補助をしているところも多くあります。 また、原因となるHPVの感染そのものを予防するためのワクチンもあります。 副作用としては、発熱、接種部位の痛みや腫れなどがあります。 ごくわずかな方に、接種後、多様な症状が現れると報告されていますが、因果関係は明らかではありません。 日本人では年間約1万人(2020年現在)の女性が子宮頸癌になり、亡くなる人は年間約3000人に上ります。 HPVの感染を予防するワクチンの有効性リスクをよく理解したうえで受けていただきたいと思います。

◆子宮頸癌が進行した場合に現れる自覚症状

  • 月経以外の出血(不正出血)
  • 性交渉による出血
  • 茶褐色、黒褐色のおりものが増えるなどのおりものの異常
  • 足腰の痛み
  • 血の混じった尿

■子宮頸癌の治療

子宮頸癌の主な治療法には「手術」「放射線療法」「抗癌剤治療」の3つがあり、癌の進行度によって治療法が変わります。 早期の場合は、手術や放射線治療を単独で行う治療が中心ですが、少し進行した癌では、手術後に抗癌剤治療や放射線治療を加えるなど、 癌の進行度によって3つの治療法を組み合わせていきます。年齢やほかの病気、妊娠の希望なども考慮し、担当医や家族とも十分に相談したうえで、 納得できる治療法を選択してください。また、治療後も5年間程度は通院が必要なため、通いやすい医療機関を選ぶことも大切です。

●子宮頸癌の病期
病期 特徴
0期 子宮頸部の粘膜にとどまる
Ⅰ期 Ⅰa期 子宮頸部に限られ、顕微鏡によって診断される
Ⅰb期 子宮頸部に限られ、肉眼で確認
Ⅱ期 Ⅱa期 子宮頸部を越えるが、膣壁の下1/3までは達していない
Ⅱb期 子宮頸部を越え、骨盤腔にも広がるが、膣壁の下1/3までは達していない
Ⅲ期 Ⅲa期 膣壁の下1/3まで達するが、骨盤へ期には達していない
Ⅲb期 骨盤へ期に達し、水腎症や無機能腎が認められる
Ⅳ期 Ⅳa期 膀胱、直腸の粘膜まで広がる
Ⅳb期 骨盤を越えて遠くの臓器に広がる

病気0期では、癌が上皮内にある状態なので、子宮頸部の円錐切除術や、レーザー光線を当てて、癌を死滅させるレーザー蒸散術、 高周波で癌を殺す高周波療法、癌を凍らせて死滅させる冷凍療法などを行います。子宮は温存できます。 Ⅰ期の場合は、進行度によって二つに分けられ、Ⅰa型は子宮だけを取る単純子宮全摘術か、子宮周辺の組織も取る準広汎性子宮全摘術、 Ⅰb~Ⅱ期は骨盤までの組織も取る広汎性子宮全摘術に、骨盤内のリンパ節も取る骨盤郭清や、 卵巣など子宮部付属器切除術も同時に行います。Ⅲ期とⅣa期では、放射線療法や化学療法、もしくは両方を併用して行います。


●子宮を残す「温存手術」

早期の癌で妊娠の希望がある場合は、子宮を残す温存手術を検討します。

▼レーザー蒸散術
異形成を対象とし、頸部の病変をレーザーで焼く方法です。外来や日帰りでの治療が可能です。

▼円錐切除術
レーザーや超音波メスを用いて、子宮頸部の一部を円錐状に切り取ります。 妊娠・出産は可能ですが、流産・早産のリスクがわずかに高くなるといわれています。

▼広汎子宮頸部摘出術
子宮頸部をやや広い範囲で切除し、残った糸球体体部と膣を縫い合わせます。 比較的早期の癌で、妊娠の希望がある場合などに行われています。 ただし、流産・早産の危険性が高くなり、分娩は帝王切開となることがあります。 この広汎子宮頸部摘出術を実施している施設は限られているため、担当医と十分相談することが必要です。

●子宮を切除する「全摘手術」

癌の進行度や組織のタイプなどを考慮して、手術の方法を選択します。 手術後は、再発のリスクに応じて、抗癌剤治療と放射線治療を組み合わせて行います。

▼単純子宮全摘術
子宮頸部の周りの組織は残し、子宮だけを摘出する手術です。

▼広汎子宮全摘術
子宮と、骨盤内のリンパ液を摘出します。卵管や卵巣は残すこともあります。 手術後に排尿障害やリンパ浮腫(脚のむくみ)などが起こることもありますが、完全に摘出できれば完治が期待でき、転移の有無なども詳しく検査できます。 高度な手術なので、地域の癌診療連携拠点病院や専門病院での治療が勧められます。

●手術が難しい場合でも治療法は多い

手術が難しい場合でも、治療法を組み合わせることで、治療が可能です。

▼放射線と抗癌剤での治療
放射線治療を行いながら「シスプラチン」という抗癌剤を使います。 放射線治療を単独で行う場合よりも、生存率が高くなると報告されています。

▼抗癌剤だけで行う治療
主に遠隔転移のある場合や再発した場合に行われます。 シスプラチン、又は腎臓への負担の少ない「カルボプラチン」に「パクリタキセル」などを併用します。 さらに「ベバシズマブ」という分子標的薬を併用すると、より治療の効果が高くなることがわかっています。

◆抗癌剤の主な副作用

骨髄抑制(白血球減少や貧血など)、吐き気や嘔吐、脱毛、痺れ、関節痛など。 抗癌剤と併用する分子標的薬の副作用としては、出血、高血圧、タンパク尿、血栓症などがあります。