子宮内膜症
■子宮内膜症の症状と特徴
子宮の内腔を覆っている組織を子宮内膜といいます。子宮内膜は月経周期に合わせ、女性ホルモンの働きによって増殖肥厚し、 卵と精子が出会って妊娠したときに受精卵が着床する場所です。 しかし、妊娠しなければ卵は受精せず、妊娠の準備をしていた子宮内膜も不要となり、月経として排出されてしまいます。 子宮内膜が、本来あるべきところではない子宮の筋層内(子宮腺筋症)、膣や外陰部、膀胱、腹膜、肺、リンパ節など、 子宮以外の臓器にでき、月経周期に合わせて増殖・出血を繰り返すのが子宮内膜症です。 子宮以外にできた場合、他の臓器は子宮と違って月経血を排出できないため、血液や内膜の崩れたものが溜まり、他の臓器や組織と癒着を起こし、 ひきつれたり、ねじられたりして、さまざまな症状を引き起こします。 不快症状の第一は、月経痛です。子宮内膜症の場合、強い子宮収縮を促すプロスタグランジンというホルモンが、 子宮内膜が増殖した分だけ多く子宮内膜から分泌されるので、激しい腹痛と腰痛が生じます。 同時に、頭痛や吐き気、のぼせ、むくみなどを伴い、薬を飲んでも軽減せず、寝込むこともあります。 月経困難は、回を追うごとにひどくなり月経量も増えていきます。さらには月経以外でも下腹部痛や腰痛、排便痛、性交痛が生じます。 不妊の原因になることもあります。30~40歳代の成熟期にみられ、年々、患者数は増えています。
■子宮内膜症の原因
原因には、腹痛が子宮内膜へ変化したもの、月経血の逆流、子宮内膜の転移など、さまざまな説がありますが、はっきりしたことはわかっていません。
■子宮内膜症の治療
膣や外陰部など、目で見てわかるところの子宮内膜症は診断できますが、腹腔内にできた場合は診断が難しく、手術をして初めて診断できることもあります。 子宮内膜症の治療としては、ホルモン療法と手術があります。ホルモン療法は、低用量ピル(経口避妊薬)、プロゲステロン、 ダナゾールやGnKHアゴニストなどを使って偽閉経状態を作り出し、症状をコントロールしていきます。 これと併用して漢方薬を用いたり、月経の痛みが強いときに鎮痛剤を使用したりします。 ホルモン療法で十分な効果が得られない場合は、手術を行います。 手術には、妊娠出産の可能性を残し、患部だけを取り除く保存的手術、卵巣の一部は残し、子宮を全摘する準根治手術、 子宮やその付属器を切除する根治手術があります。 なお、妊娠出産を機に症状が軽くなったり、閉経とともに症状が消失したりするので、ライフステージを考えながら医師と相談し、治療することが大切です。