【質問】「黄体ホルモン剤」について教えてください
8ヵ月前、不正出血があったので婦人科を受診しました。
「子宮筋腫」と
「子宮内膜症」があることがわかりました。
内服薬を使い、閉経まで様子を見ていくことになり、黄体ホルモン剤を飲み始めました。
この薬には副作用として出血があると聞きましたが、
乳癌との関係はないのでしょうか。
薬局で、たくさんの方がこの薬を使用していると聞きましたが、この薬について詳しく教えてください。
●47歳・女性
●使用中の薬はディナゲスト錠1g
【答】
「子宮内膜症」は疼痛や不妊をもたらすことで女性のQOL(生活の質)を著しく損ねる疾患です。
この疾患の主な治療法として、手術療法と薬物療法がありますが、手術療法については再発も多く、繰り返しの手術を避けるため、
薬物療法による長期管理が重要となります。
子宮内膜症治療薬であるディナゲスト錠(成分名ジエノゲスト)は、長期投与可能な黄体ホルモン薬です。2008年1月より日本で販売されています。
ジエノゲストは女性ホルモンの一種である黄体ホルモンの仲間で、黄体ホルモンとしての働き以外の余分な作用は少ない薬です。
子宮内膜症の病巣は、卵巣から出る別の女性ホルモン(エストロゲン)により増殖し、病状が悪化します。
一定量の黄体ホルモン薬を服用すると、卵巣からのエストロゲンの産生を抑制します。
また、ジエノゲストは、子宮内膜症の病巣に対して直接、増殖を防ぐ働きもあります。
これらの働きにより、ジエノゲストを服用すると子宮内膜症の症状が改善されます。
現在内服されているジエノゲストを長期間内服することで
「乳癌」の発症リスクが増加するという報告はありません。
日本人においては、この薬が承認されるまでの国内における臨床試験及び製造販売後の調査においても、乳癌を発症した患者さんの報告はありませんでした。
加えて、医療機関及び薬局からの報告(2008~2013年)でも、本薬投与中の乳癌発症の事例は稀でした。
一方、通常使用する量の10倍の高容量のジエノゲストを24時間投与することで、乳腺組織の縮小が認められ、
乳管の拡張や乳輪境界域脂肪の肥厚などの乳腺の増殖促進を示唆する所見は認められなかったと報告されています。
これらのことから、ディナゲスト錠の服用により乳癌発症リスクが増加する可能性は少ないと考えられます。
しかしながら、リスクがないと評価するためには、今後、より多くのデータを収集する必要があります。
乳癌のリスクについては、年齢や家族歴との関連が報告されています。
したがって、乳癌については定期的に診断を受け、乳房にしこりなどが認められる場合は、速やかに受診してください。
(この答えは、2014年10月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)