ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)

■ARBの上手な使い方は?

●どのように服用するのか?

ARBは、基本的に1日1回服用しますが、原則的には朝飲みます。 人間は誰でも、朝起きて活動を始めるとともに血圧が上がっていくからです。 飲み忘れを防ぐために「朝食後に服用」とすることが多いのですが、朝食を摂らないと飲んではいけないという意味ではありません。 毎朝きちんと飲むことが大切です。なお、夜間や早朝に血圧が高くなる人では夜飲んだり、朝と夜に分けて飲むこともあります。 家庭血圧を測って、その記録を医師に見せると、血圧の変動パターンに合った服用の工夫もしやすいでしょう。 高齢者では原則として通常の1/2量から開始します。早く血圧を下げようと無理をすると弊害が出やすいので、ゆっくりと下げます。



●ARBを使えない人、注意を要する人


ARBは妊娠中の女性などは使えませんが、高齢者の場合、注意を要するのは、腎臓に血液を送る腎動脈に狭窄がある人です。 高齢者は一般にレニン・アンジオテンシン系が活性化されていて、ARBが効きやすい可能性があります。 なかでも、動脈硬化が進んで腎動脈が狭窄している人は、ARBを使うと著しく血圧が下がり、 糸球体の内圧が下がりすぎて腎機能を急速に低下させてしまうことがあるのです。 頻度は低いものの、両側の腎動脈に強い狭窄がある場合は、ARBは使いません。 ただ、腎動脈の狭窄を確認するには造影検査が必要で、簡単には行えません。 通常は、腹部の聴診で腎動脈の狭窄をうかがわせる雑音がないかを調べたり、血液検査で「クレアチニン」「eGFR(推算糸球体濾過量)」を見て腎機能をチェックしたうえで、少量から慎重に薬を使い始めます。 少量のARBで急激に血圧が下がった場合には、腎動脈の狭窄も疑われます。 その他、高カリウム血症がある人は使用を避け、重症の肝障害がある人も慎重に使う必要があるとされています。 こうした注意はACE阻害薬でも同じです。

●服用中に気をつけなければいけないことは?

ARBを使うときに、飲み合わせで問題になりやすい薬などはあるのでしょうか。 「解熱鎮痛薬として使われる『非ステロイド性抗炎症薬』や漢方薬に含まれている『甘草』、ステロイド薬などは、 ARBに限らず降圧薬の効きを悪くします。使用している薬は、処方する医師に全部伝えるようにしましょう。 漢方薬や健康食品などは関係ないと思われがちですが、影響することがあるので忘れずに伝えてください。 ARBの副作用としては”効きすぎ”が代表的です。 特に高齢者は起立性低血圧がを起こしやすいので、立ちくらみやめまいに注意してください。 軽いものでも、万一、転倒して骨折したり頭を打ったりすると大変です。

飲食物で注意することは、カルシウム拮抗薬を飲んでいる人は基本的にグレープフルーツやそのジュースを避ける必要がありますが、 ARBだけの場合は問題ありません。むしろ注意していただきたいのは、食塩の摂りすぎやお酒の飲み過ぎなどです。 もちろん高血圧の人にとって血圧を下げることは大切ですが、目的は臓器を守ることです。 薬で血圧を下げれば、何をしてもいいということにはなりません。 高血圧以外の危険因子もできるだけ減らすことに努めてください。

●飲み始めたら、ずっと飲み続けるのか?


薬をいつまで飲むのか、気になる人もいるでしょう。
高血圧の薬は、飲み始めたらやめられないから飲みたくないという人が少なくありません。 しかし、これは誤解です。高血圧には遺伝的な因子と、生活習慣などの環境的な因子がかかわっています。 遺伝は変えられなくても、環境は変えられます。肥満のある人が減量したり、減塩や節酒をしたりすることで、 血圧が下がって薬を減らしたりやめられる人もいます。 仕事のストレスが大きかった人は、退職後に血圧が下がることもよくあります。 ただし、他の要因が変わらない限り、服用をやめればまた血圧が高くなってしまうのは、ARBも他の降圧薬と同じです。 服用をやめるときは、徐々に減らしていき、やめても血圧が上がってこないのを確かめることが大切です。 その後も血圧のチェックは続けてください。
どの降圧薬を飲んでいるときも、薬をやめた後も、生活習慣の修正が大切なことは変わりません。