【質問】腰痛がよくなりません
腰痛(すべり症)で2年間ほど整形外科に通っていますが、完治しません。
普段は病院で習ったストレッチ体操をしていますが、いま一つ効果がありません。
薬物療法や手術はどのような場合に行われるものなのでしょうか。
70歳代・男性
【答】
「すべり症」は、腰部脊柱管狭窄症の一種で、 近年、中高齢者の間で増加している病気です。 背骨の一部がずれて神経が圧迫されることで、腰部や下肢痛が起こり、続けて歩くことが難しくなる間欠性跛行という症状が特徴です。 症状とMRI検査から比較的容易に診断できますが、下肢の動脈が細くなって血流が低下すると同じような症状が出ることがあるので、区別が必要です。 痛みなどの症状は日によって変化し、「もう治ったかな」と思うこともありますが、しばらくするとまた出てきます。 腰部での神経の圧迫は、前屈(前屈み)で軽くなり、直立や後屈(腰をそらせた姿勢)で悪化するという特徴があるため、 歩行は5分間程度しかできないのに、自転車なら30分でも漕げるという不思議な現象を経験することもしばしばです。 自転車を漕ぐときは前屈姿勢になるため、神経の圧迫が軽くなるからです。
治療の基本は、体操や日常生活の工夫と薬物療法です。体操では後屈を避け、筋力強化よりもストレッチを中心に行うことが重要です。 朝風呂も血液循環を促す効果があるのでお勧めです。また、後屈だけを制限する装具(コルセット)もあるので、試してみるとよいでしょう。 薬物治療では、非ステロイド性消炎鎮痛薬、アセトアミノフェン、血流改善薬、神経障害性疼痛治療薬、弱オピオイド鎮痛薬、抗うつ薬などの内服薬が用いられます。 特に後三者の有効性は高く、いずれかの薬で症状が軽減することが多いので、薬の使用を躊躇する必要はありません。 ただ、人によってはめまい、吐き気、便秘などの副作用が出ることもあるので、薬は少量から開始するのがよいでしょう。
数か月の薬物治療で効果がなく、日常生活での不便が大きい場合は、手術による治療も考慮します。 手術の基本は神経の除圧ですが、すべりや不安定性があるときは、除圧に加えて金属材料を使った固定も行います。 いずれの場合も手術の翌日からリハビリを始め、入院も10日~2週間が普通になってきています。 手術を実際に行っている医療機関で、直接ご相談することをお勧めします。
(この答えは、2020年6月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)