■質問:前立腺癌の腫瘍マーカーの値が上がってきていいて再発が心配です
2001年に『前立腺癌』が見つかり、放射線と陽子線の交互照射による治療を受けました。 その後、治療を受けた医療機関で定期的にチェックを受け、10年目以降は地元の医療機関で経過観察をしてもらっています。 最近、少しずつですが腫瘍マーカーの値が上がってきていいて、再発が心配です。
【答】
放射線や陽子線による放射線治療は「前立腺癌」の完治を目指す治療法です。 治療後には、血中腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)を定期的に測定して再発の有無をチェックします。 PSAは正常な前立腺細胞でも作られますから、放射線治療後に癌が完全になくなっても、PSA値はゼロにはなりません。 放射線治療後のPSAの最低限+2の上昇を「生化学的再発」と定義しています。 ただし、画像検査などで病気の進行がはっきりしたり、再発の症状が現れたりするよりも、生化学的再発の方が数ヶ月から数年早く起こるのが通常です。
腫瘍マーカーが+2以上になった場合の治療法としては、「前立腺全摘除術」などの 局所療法または「ホルモン療法」が選択肢となります。 実際には、患者さんの年齢や患者さんの体にかかる負担を考慮して、ホルモン療法を行うことがほとんどです。 また、前立腺癌は進行がゆっくりな場合が多いため、生化学的再発が認められたからといって直ちに治療を開始すべきとは 限りません。期待される治療効果と副作用、そして予想される自然経過と年齢を勘案して、 治療開始時期を決めることが望まれます。もし高齢であるならば、腫瘍マーカーの上昇もゆっくりなため、 しばらくはそのまま経過観察をしてもよいでしょう。
ホルモン療法の本体は男性作用のを抑える抗男性ホルモン療法です。男性ホルモンの刺激がなくなることで、 前立腺癌の増殖が抑えられ、癌細胞が死滅して腫瘍は縮小します。ホルモン療法の方法としては、「両側精巣摘除術」 による外科的去勢やLH-RHアナログ注射による内科的去勢、抗男性ホルモンあるいは女性ホルモン薬を用いる方法があります。 また、去勢に抗アンドロゲン薬を加える「併用ホルモン療法(MAB/CAB療法)」が行われることもあります。
ホルモン療法治療後にさらに病状が再燃した場合には「去勢抵抗性癌」と呼ばれ、 抗癌剤による化学療法などが用いられます。 また、前立腺癌は骨に転移しやすいため、ビスホスホネート薬のゾレドロネート製剤や抗RANKLモノクローナル抗体製剤 デノスマブによる骨に対する治療対応も重要になります。