前立腺癌

前立腺癌』は、ここ30年ほどで患者数が急激に増えている癌で、ゆっくり進むのが特徴です。 前立腺癌は、早期には症状がほとんどありませんが、進行すると「排尿障害」などが現れてきます。 最近では、血液検査で前立腺癌の可能性をチェックできる方法が普及し、早期の段階で発見できるようになっています。 早いうちに発見できれば、その分治療の選択肢も広がり、治る可能性も高くなります。


■前立腺癌とは?

高齢者に多い男性特有の癌。患者数の増大が予測されている

「前立腺」は男性特有の生殖器官の1つで、膀胱の出口付近に位置し、中心を尿道が通っており、大きさは15〜17ml程度で、ほぼクルミ大です。 役割の1つは、精液の約30%を占める「前立腺液」を分泌することです。 もう1つ、排尿をコントロールする役割もあります。 前立腺の下にある括約筋と共に、尿漏れを防ぐ働きや、排尿を促す働きをしています。 この前立腺から発生する癌が、「前立腺癌」です。 前立腺癌は、高齢の男性に多い癌で、患者全体の約90%を60歳以上の人が占めています。 患者数は増加の一途をたどっており、2008年には、新たに前立腺癌と診断された人が約5万人いました。 この数は年々増え、2025年には約12万人になると予測されています。

●患者数が増えている理由は3つある

1つ目は食生活の欧米化です。肉や乳製品などから動物性脂肪を摂り過ぎることが関係していると考えられています。 2つ目は、高齢者が増加していることです。前立腺癌は、50歳代から見られるようになり、60歳代で急に増加し、70歳でピークになります。 高齢者が増えれば、前立腺癌の患者さんも増えるのです。 3つ目は、前立腺癌の発見に役立つ血液検査が普及してきたことです。 検査・診断の進歩により、癌の発見率が高くなったことなどが指摘されています。


■前立腺癌の特徴

進行が遅いのが特徴で初期のうちは症状が現れにくい

前立腺癌には次のような特徴があります。

▼症状が出にくい
前立腺は、内側の「内腺」と外側の「外腺」から成り、それを「被膜」が包んでいます。 尿道に近い内腺に起こる「前立腺肥大症」とは異なり、前立腺癌の多くは尿道から遠い外腺に発生するため、 初期のうちは排尿への影響はほとんど現れませんが、進行して癌が大きくなると、 尿道が圧迫されて「排尿障害」などが現れるようになります。 癌が前立腺内にとどまっている場合を「限局癌」、癌が大きくなって前立腺の被膜を破ったり、 近くの臓器に進行した場合を「局所進行癌」といいます。局所進行癌でも、症状が出ることはあまりありません。 ただし、尿道側や膀胱側に癌が進行した場合には、「血尿」や「頻尿」などの症状が出ることがあります。

▼骨に転移しやすい
前立腺癌は骨に転移しやすく、骨盤の骨や腰椎などによく転移します。 そうなると腰や背中が痛むようになり、その痛みで癌に気付くことがあります。 骨盤骨や脊椎(背骨)に転移すると「骨盤や腰、背中の痛み」が起きたり、 背骨に転移した癌が神経を圧迫して「神経麻痺」「歩行障害」などが現れたりすることもあります。

▼ゆっくり進行する
前立腺癌には、進行がゆっくりしているという特徴があり、早期には症状がほとんど現れません。 そのため、かつては、発生して数十年たって癌が進行してから発見されることが多くありました。 しかし現在では、早期発見に役立つ検査が普及し、早い段階で発見されるケースが増えています。 早期に発見できれば、その分治療の選択肢も広がり、適切に治療できれば、多くは完治が可能です。 早い段階で見つかれば、前立腺癌で命に関わることはほとんどありません。 50歳を過ぎたら、自治体などの検診を定期的に受けることをお勧めします。

■前立腺癌の検査

まずは血液検査で「PSA」の値を調べる

前立腺癌が疑われるときは、次のような検査が行なわれます。

▼血液検査(PSA検査)
「PSA(前立腺特異抗原)」は 前立腺の細胞だけが作り出すたんぱく質で、前立腺癌ができると、多量のPSAが血液中に出てきます。 血液中のPSAの量を測定することで、早期の段階から癌の有無をチェックできます。 PSAの値は4ng/ml以下が基準値で、これを超えている場合には、前立腺癌の疑いがあると考えられ、 より詳しい検査が行なわれます。ただし、4ng/ml以下でも前立腺癌のある人はいますし、 PSA値は前立腺肥大症などでも上昇するため、これだけでは診断できません。 PSAの測定は、自治体の検診や人間ドックなどでもしばしば行なわれています。 定期的にPSA検査を受け、PSAの値が急上昇してきたときは要注意です。

▼直腸診
医師が肛門から指を入れて直腸の壁越しに前立腺に触れ、癌の有無を調べます。 癌があるとその部位が硬く、ゴツゴツした感触があります。「前立腺肥大症」や「直腸癌」の有無も調べます。 50歳以上の人は1度受けるとよいでしょう。

▼経直腸的超音波検査
超音波を発する機器「超音波プロープ」を直腸に挿入し、前立腺の状態をモニターに映します。 前立腺の大きさや形状から、癌が疑われる部位があるかどうかを調べます。 癌のある部位や癌の大きさがわかる場合があり、治療方針の決定に役立ちます。

●確定診断

癌かどうかを確定するためには、「生検」が行なわれます。直腸の壁越しに前立腺の数ヶ所に特殊な針を刺し、 前立腺組織を採取して顕微鏡で調べ、癌細胞の有無を調べます。 生検は、外来や1泊程度の入院で受けることができます。 検査の合併症として、「出血」が起こることがあります。また、直腸内から針を刺すため、 直腸内の細菌が前立腺に入る可能性があります。そのため、検査の前後に抗菌薬を使用するなどして、 「感染症」が起こらないようにします。

●病期を調べる検査

「MRI」や「CT」「骨シンチグラフィー」などの画像検査を行い、癌がリンパ節や周辺の臓器に広がっていないか、 骨やリンパ節に転移していないかなどを調べます。これらの検査結果を元に癌の病期(進行度)を判定し、 治療方針を検討します。


■その他

▼前立腺肥大症があると前立腺癌になりやすい?
前立腺肥大症と前立腺癌はまったく別の病気です。前立腺肥大症の人が前立腺癌を発症しやすいということはありません。 ただ、どちらも加齢に伴って増える病気ですし、前立腺の肥大は高齢の男性に多く見られますから、 前立腺癌に前立腺肥大が合併することは多いといえます。そのため、前立腺肥大症があると前立腺癌が発症しやすいという誤解が生じることになったのでしょう。