前立腺癌の早期発見に『PSA検査』

前立腺癌』は症状が現れにくく、早期発見が難しいとされています。 しかし近年、前立腺の状態を調べる血液検査が普及し、早めに見つけることが可能になっています。

■早期発見の”鍵”

前立腺癌の腫瘍マーカーを見る「PSA検査」を受ける

「PSA(前立腺特異抗原)」は前立腺癌の腫瘍マーカーで、検査では血液中にどれだけ含まれるかを調べます。 PSAはもともと前立腺から分泌されるタンパク質で、精液の成分となります。 正常ならば、血液中には僅かしか出てきませんが、前立腺癌や前立腺肥大症があると、前立腺の組織が破壊され、 PSAが血液中に漏れ出てきます。そのため、前立腺の異常を発見するのに役立ちます。


●値が高いほど前立腺が疑われる

血液中のPSAの量が多いほど、前立腺癌の可能性が高くなり、癌が進行している可能性も高くなります。 PSAの基準値は4.0ng/mLです。4.1~10.0ng/mLは「グレーゾーン」、10.1ng/mL以上は「前立腺癌が疑われる」と判定されます。 PSA値と、前立腺癌が見つかった患者さんの割合を調べたデータでも、PSAが4.1~10.0ng/mLの場合には、 30~40%程度の確率で前立腺癌が見つかっています。また、値が高くなるほど、前立腺癌が見つかる可能性が高くなります。


●40~50歳以上の人は検査を受ける

日本泌尿器科学会では、50歳以上の男性にPSA検査を受けることを勧めています。 ただ、前立腺癌の発生には、遺伝的要因も関与していて、父親や兄弟で前立腺癌がある人は、発生の危険性が5~10倍になります。 このような人には、40歳からPSA検査を受けることが勧められます。 PSA検査は、国が推奨する癌検診には含まれていません。しかし、市区町村によっては、住民健診に加えられているところがあり、 約75%の市区町村で実施されています。そのほか、勤務先の健康診断で受けられることがありますし、 人間ドックやかかりつけ医の下で受けることも可能です。


■確定診断のために

直腸診や経直腸エコー、針生検で詳しく調べる

PSA検査の結果が基準値を超えていた場合、詳しい検査が必要になります。

▼直腸診
医師が肛門から指を挿入し、直腸の壁越しに前立腺を触る検査です。癌が疑われる硬いしこりがないかどうかを調べます。

▼経直腸エコー
超音波の発信器を肛門から入れ、前立腺に超音波を当てて画像化します。前立腺の大きさや、内部の状態を調べることができます。 前立腺に癌ができていると、形がいびつになり、癌の部分が黒っぽく映し出されます。 前立腺癌があるかどうか、確定診断を行うためには、前立腺の組織の一部を採り、顕微鏡で調べる「前立腺針生検」 が必要になります。超音波で前立腺の位置を確認しながら、麻酔をしたうえで、前立腺全体に10~12本の組織採取用の針を刺し、 組織を採取します。採取した組織を調べることで、前立腺癌があるかどうか、癌がどの程度広がっているかがわかります。 また、癌の悪性度を判定することもできます。

●検査を受けるときに大切なこと

PSA検査が基準値以下の場合は、ひとまず安心です。ただ、前立腺癌のリスクは加齢に伴って高くなるので、定期的に検査を受けます。 1.0ng/mL以下なら3年程度、1.1ng/mLから基準値の間なら1年後の検査が勧められます。 前立腺癌が見つかった場合には、どの程度危険なのかリスク分類を行い、それに応じて適切な対応がとられます。 リスク分類で危険度が低いと判定された場合には、すぐに治療を始めるのではなく、しばらく様子を見ることもあります。 そうすることで、必要のない治療が行われないようにします。


前立腺癌を早期発見し、適切に対応するためにも、50歳代になったらPSA検査を受けることが勧められます。