前立腺癌のPSA監視療法

PSA監視療法』(待機療法)とは、前立腺癌の中でも「おとなしい癌」を根治のための治療を先延ばしにして待機する治療法です。 放っておいても寿命に影響がないと考えられる「おとなしい癌」を見分け、できるだけ副作用を避け、体に負担をかけないようにするというものです。 PSA監視療法では、まず前立腺癌と診断された時点でグリーソンスコアでおとなしい癌か、そうでない癌かを見分け、その後もPSAで癌を監視し続けます。 小さくておとなしい癌であれば、最低1年PSAの動きを監視してから治療に入っても遅くはないといわれています。


■「前立腺癌のPSA監視療法」とは?

「おとなしい癌」を見分け、根治のための治療を先延ばしにして待機する

「前立腺癌」は男性にとって気になる癌の1つです。2020年には患者が78,000人と、 2000年に比べて約8倍になると予想されています。
一方、「前立腺特異抗原(PSA)検査」の普及で小さな癌まで見つかるようになり、 放っておいても寿命に関係ない癌を過剰に治療し、患者が副作用に苦しむ可能性も指摘されています。 そのような中、早期の癌の中から「おとなしい癌」を見分け、根治のための治療を先延ばしにして待機する 『PSA監視療法』(待機療法)が注目されています。


■PSA検査

血液中に含まれるたんぱく質「前立腺特異抗原」の濃度を調べる検査です。 前立腺癌になると値が上昇するため敏感な指標として活用されていますが、前立腺肥大症や前立腺炎などでも 値が上がります。値が血液1ミリリットル当たり4~10ナノグラムが「グレーゾーン」で、 25%~30%に癌が発見されます。それ以上の値では癌の可能性がさらに高くなります。 PSA監視療法では、PSAの値を、癌の大きさと考えて監視します。 対象となる癌が前立腺の内側に限られている早期癌で、「グリーソンスコア」が6以下、 PSAが1ミリリットル当たり20ナノグラム以下なら、PSA監視療法の対象になります。


●グリーソンスコア

生検では、前立腺に細い針を刺して、6ヶ所以上から組織を採取します。 採取した組織を顕微鏡で詳しく調べ、癌が見つかったら悪性度に応じて「1」(最もおとなしい)から 「5」(最も悪い)に評価します。採取した組織の中には、さまざまな悪性度の癌が混じっているので、 最も多い評価と次に多い評価を足し算した結果を、「グリーソンスコア」と呼びます。 足して「7」が最も一般的で、中くらいの悪性度、「6」以下が「おとなしい癌」になります。


●根治療法の開始時期

PSA監視療法では、定期的にPSAの値を測って癌の状態を監視し、状態が悪くなるようなら根治のための治療 を始めます。PSAが増える勢いを示す指標として、「PSA倍加時間」が使われます。 これは値が倍に増えるのに必要な期間のことで、2年以内に倍増するような勢いになれば、 PSA監視療法を打ち切って根治療法を始めます。


■PSA監視療法の適用

90年代後半からPSA検査が普及し、ごく早期の癌が見つかるようになりました。 患者増もからみ、今後さらに増加することが予想されます。 一方で、癌以外の原因でなくなった70歳を超えた男性の前立腺を調べると、2~3割の人に前立腺癌が見つかります。 一部は放っておいても寿命に影響がなかったと考えられます。 寿命に影響ない癌を見分け、できるだけ副作用を避け、体に負担をかけないようにする、 とうのが『PSA監視療法』です。

PSA監視療法では、まず前立腺癌と診断された時点でグリーソンスコアでおとなしい癌か、そうでない癌かを見分け、 その後もPSAで癌を監視し続けます。小さくておとなしい癌であれば、最低1年PSAの動きを監視してから 治療に入っても遅くはないといわれています。 ただし、最初の生検の病理診断に誤りがあったり、PSAの上昇程度を過小評価したりすれば、 癌が大きくなったり、転移してしまったりして寿命に影響を与えることもあり得るので、 75歳未満の患者には、PSA監視療法は積極的には勧められていません。