過活動膀胱
頻尿・尿漏れ・尿失禁は、膀胱の働きが悪くなる「蓄尿障害」という病気で、国際禁制学会は、 蓄尿障害の大きな原因である尿意切迫感(突然の我慢できないほど強い病的な尿意)に注目して、 尿意切迫感を主症状とする新しい症候群『過活動膀胱』を定義しました。 過活動膀胱は中高年の8人に1人が悩んでいる現代病です。
■過活動膀胱とは
過活動膀胱の患者は推計810万人
『過活動膀胱』とは文字通り、活動が過ぎる膀胱のことで、急に尿意を感じて我慢できなくなる 「尿意切迫感」、頻繁にトイレに行く「頻尿」、尿意を感じるとトイレに間に合わずもらしてしまう 「切迫性尿失禁」などが主な症状の症候群です。 「過活動膀胱」は2002年、新しい疾患名として国際禁制学会によって認められ、ひそかに悩んでいた人にとっても、診断を受けやすくなりました。 日本排尿機能学会の調査などによると、日本では約810万人に過活動膀胱が見られる と推定され、困っている人がいかに大勢いるかがわかります。
通常、尿がたまるにつれて尿意は徐々に強まりますが、ある程度自分の意思で排尿を我慢したり、コントロールすることができます。 しかし、過活動膀胱では、膀胱の知覚神経が過敏になり、少量の蓄尿であっても冷気、水に触れるなどちょっとした刺激に対して過度に反応します。 その結果、自分の意思とは関係なく膀胱が収縮(排尿反射)して尿意切迫感が引き起こされ、 外出が億劫になったり、夜間の頻尿で寝不足になるなど日常生活に支障を来たします。
日本排尿学会が2002年に行なった調査によると、日本では40歳以上の男女の12.4%、約810万人に過活動膀胱があると推定されています。 また発症率は年齢が上がるにつれて増加する傾向があるため、今後はさらに患者の増加が見込まれています。 しかし、実際に過活動膀胱の治療を受けている患者は全体の1~2割に過ぎません。 それは、過活動膀胱という病気を知らない人が多いためとみられます。
●過活動膀胱の薬物療法
過活動膀胱の基本治療となる薬物療法では、主に「コリン薬」が使われます。 膀胱の収縮は、骨盤神経の末端から放出された「アセチルコリン」という神経伝達物質が膀胱の受容体と結合して、 排尿シグナルが伝わることによって起こります。抗コリン薬は、アセチルコリンが受容体と結合するのを阻害して、膀胱の収縮を和らげます。
従来のコリン薬は、膀胱以外の唾液腺や腸にも作用するため、「口内乾燥感」や「便秘」などの副作用が起こります。 高齢者は加齢の影響で唾液の分泌機能が低下している場合が多く、抗コリン薬を使えばさらに悪化するため、処方を控えるケースもありました。 最近では、排尿抑制効果は従来のものと同等で、膀胱により選択的に作用することから 副作用を少なくする可能性がある新しいコリン薬も発売されています。 1日2回の服用だと1日1回のものより作用時間が短いため、夜間頻尿に悩む患者の場合、 寝る前に服用すれば夜間に薬が作用して、口内乾燥や夜間頻尿を防いで安眠できることが期待されます。 また年齢による副作用の発現率が変わらないコリン薬は「高齢者に優しい薬」といえます。
過活動膀胱は積極的に治療すれば、健康な人と同じような生活ができます。 現在は、以前のような痛い検査や恥ずかしい検査はほとんどなく、症状による診断へと変更されているので、 泌尿器科やかかりつけの内科、整形外科、婦人科などで気軽に相談してください。 過活動膀胱は生命にかかわるものではありませんが、QOL(生活の質)を大きく損なうため早急に対処すべき病気です。 悩んでいる人は積極的に治療を受け、尿漏れや夜間頻尿から開放される喜びを味わってください。