膀胱炎

若い女性に多く見られる膀胱炎は、排尿時の痛みや残尿感などの症状が特徴です。 抗菌薬を服用して、日常生活での注意を守れば治りやすい病気ですが、再発も多いため、治療も気をつけることが大切です。


■「膀胱炎」とは?

尿道から入った細菌によって膀胱に炎症が起こる病気

「膀胱炎」とは、尿道から膀胱に大腸菌などの細菌が入って増殖し、膀胱の粘膜が炎症を起こす病気です。 風邪を引くと、喉が炎症を起こして真っ赤になりますが、膀胱炎では、これと同じようなことが膀胱内で起きると考えてよいでしょう。 女性に圧倒的に多く見られますが、これには男性と女性の体の構造の違いが関係しています。 一般に男性の場合、尿道の長さは約20cmありますが、女性では尿道が4~ 5cm程度しかありません。 さらに、女性は、尿道口の近くに膣や肛門もあるので、排便時や性交時に細菌が尿道に入りやすい構造になっているのです。 そのため、発症しやすいのは、10歳代後半から40歳代の女性です。 この年代では、特に性交が原因の感染が多く見られます。


■膀胱炎の主な症状

排尿時の痛み、頻尿、残尿感などが現れる

▼排尿時の痛み
排尿時に下腹部が引きつるような痛みがあります。 特に、排尿の終わりに激しく痛むのが特徴です。

▼頻尿
排尿のために頻繁にトイレに行くようになります。ただし、1回の排尿量はわずかです。

▼残尿感
排尿しても、まだ全部出し切れていないような、すっきりしない感じがします。

▼血尿
進行すると現れる症状です。尿が赤やピンク色に見えたり、トイレットペーパーに血が付いたりします。 また、肉眼ではわからなくても、顕微鏡で調べるとわかるケースもあります。

排尿時の痛み、頻尿、残尿感は、初期から現れる典型的な症状です。 また、膀胱内に繁殖した細菌を排除しようとして増えた白血球や、炎症を起こした膀胱の粘膜の分泌物などが尿中に排出されて、尿が濁って見えることもあります。 膀胱炎を放っておくと、膀胱内の細菌が「尿管」を通って腎臓に達し、「急性腎盂腎炎」を起こすことがあります。 急性腎盂腎炎になると、腰痛や高熱が起こり、多くは入院が必要になります。 そのため、排尿時に違和感があったり、1日に10回以上排尿のためにトイレに行く日が続いたりする場合は、 一度、泌尿器科やかかりつけ医を受診するようにしましょう。


■膀胱炎の検査と治療

尿検査で診断する。治療は抗菌薬の服用が中心

●検査

受診すると必ず行われるのが「尿検査」です。 尿を顕微鏡で調べ、炎症が起こっていることを示す白血球や、出血を示す赤血球、炎症の原因となっている大腸菌などの細菌が発見されれば、膀胱炎と診断されます。


●治療

膀胱炎の治療の基本は、「抗菌薬」の服用です。抗菌薬で、膀胱内に繁殖した細菌を除去します。 薬を服用すると2~3日で症状が治まりますが、まだ細菌は完全に除去されていないため、自己判断で服用を中止してはいけません。 膀胱内の細菌をすべて除去するには5~7日間は服薬が必要なので、指示された期間は必ず薬の服用を続けます。 薬の服用と合わせて、水分をたくさん摂ることも大切です。 尿の量を増やすことで、膀胱内の細菌を洗い流し、細菌数を減らすのです。 また、細菌の繁殖を防ぐためにも、尿意を感じたら我慢せずにトイレに行くようにしましょう。 多くの場合、治療によって症状は改善されます。 そのため、医師に指示されていても、再受診しない人が少なくありませんが、必ず再受診することが大切です。 受診時には尿検査を行い、白血球や細菌がいないかどうかを調べます。 そこで白血球や細菌が確認されなければ、治療は終了します。


■膀胱炎の再発を防ぐために

指示通りに抗菌薬を服用。水分を多く摂り、体を清潔に。

通常、膀胱炎は医師の指示通りに治療に取り組めば、比較的治りやすいのですが、再発も多い病気です。 特に次のような人は、注意が必要です。

●再発に特に気をつけたい人

▼途中で治療をやめた人
自己判断で治療途中に薬の服用をやめた場合、まだ膀胱内に細菌が残っているため、再発しやすくなります。

▼骨盤内の手術を受けた人
婦人科系の病気や直腸の病気などで骨盤内の手術を受けたことがある場合、排尿に関係する神経が障害されていることがあります。 すると、尿が出にくくなって、残尿が増えることなどが原因で、膀胱炎が起こりやすくなります。

▼性感染症にかかっている人
膀胱炎は性交が原因で繰り返すことがありますが、「クラミジア感染症」や「淋病」などの性感染症にかかっていると、 これらの病気に付随して膀胱炎を特に発症しやすくなります。


●日常生活での注意

再発を防ぐには、完治するまで治療を続けるとともに、「尿量や排尿回数を増やす」 「尿道口付近を清潔に保つ」などの日常生活での注意も大切です。 膀胱炎は日常生活での習慣が原因で起こることが多いため、そうした習慣を見直すことが再発防止につながります。 また、体力や免疫力が低下すると、細菌感染を起こしやすくなるので、栄養・睡眠を十分にとり、体調管理に努めることも大切です。

▼尿量・排尿回数を増やす
・排尿を我慢しない
・水分を多めに摂る
膀胱に尿が長く残ると細菌が繁殖しやすくなるので、排尿は我慢しない。 水分を多くとって尿量を増やし、細菌を膀胱から排出させることも大切。

▼尿道口付近を清潔に保つ
・排便時の後始末に注意する
・生理用品はこまめに交換する
・性交後は早めに排尿する
排便時、肛門に付いた大腸菌が尿道に入るのを防ぐため、前から後ろへ拭く。 生理中は、尿道口付近に細菌が増えやすいので、こまめに生理用品を交換する。 性交時も尿道口に細菌がつきやすいので、性交後は早めに排尿して、細菌が尿道に入るのを防ぐ。

▼下腹部を冷やさない
下腹部が冷えると、尿意が強くなったりして、膀胱炎の症状が悪化することもある。 ひざ掛けやカイロなどを使って、下腹部を冷やさないようにする。