腸閉塞(イレウス)の診断・治療

■腸閉塞(イレウス)の診断

診断には問診・診察に加え、血液検査・エックス線検査を行う

腹痛などがあって受診した場合、腸閉塞の診断には、問診で、自覚症状とともに、 患者さんがこれまでにお腹の手術を受けたことがあるかどうかを確認することが重要になります。 子供の頃に受けた虫垂炎(盲腸)の手術や、出産時の帝王切開による癒着が、高齢になって腸閉塞の原因となることもあるため、 昔の手術のこともすべて医師に伝えることが大切です。 また、患者さんのお腹を診察して、どのくらい膨れているかや、ガスの溜まり具合、痛みの出方をみたり、 お腹に聴診器を当てて音を聞き、腸の動きなどを調べたりします。 そのほか、血液検査で炎症の有無などをみます。 画像検査では、エックス線検査が基本です。腸閉塞が疑われる場合には、バリウムを飲まずに撮影する単純エックス線検査を行います。 腹部は横になった姿勢と立った姿勢で撮影し、胸部も併せて撮ります。 腸に溜まった液体やガスの状態から、腸が塞がっている場合に現れる特有の所見(鏡面像)が確認されれば、腸閉塞と診断がつきます。 補助的に超音波検査を行うこともあります。 また、血流障害が疑われる場合などは、CT検査を行うと、腸管のねじれによる閉塞やヘルニア、腹水などもわかります。


■腸閉塞(イレウス)の治療

治療の基本は絶食・絶飲・点滴・鼻からの管で腸管の内容物を吸引する

腸閉塞は、その原因や状態によっていくつかのタイプがあり、タイプによって治療法も異なります。 腸管の癒着によって内腔が狭くなるなど、物理的な原因で内容物が通過できなくなっている場合は、原則として、「保存療法」が行われます。 治療は、通常、入院して行われます。まずは、飲食を完全に絶ったうえ、鼻から細い管を入れ、腸管に溜まった内容物を吸引して、 腸管内の圧力を下げることを目指します。体に必要な水分や栄養分などは、点滴によって補給します。 こうした治療で腸の内圧が下がると、癒着部分で折れ曲がったりねじれたりしていた腸管も元のような状態に戻り、通過障害が解消されることが期待できます。 そのほか、嵌頓ヘルニアの場合、起こってすぐなら、飛び出ている腸を医師が手で押し戻して、脱出した状態を解消することで改善できるケースもあります。


■腸閉塞(イレウス)の手術

血流障害が起こると緊急手術が必要になる

小腸で起こる腸閉塞の多くは保存療法で改善しますが、2~3週間治療を続けても改善しない場合には、手術を検討することがあります。 また、腸管の内腔が狭くなっているだけでなく、血流障害が疑われたら、緊急に手術が必要になります。 腸に血液が行き届かなくなると、酸素や栄養の供給が途絶えた部分が壊死して、穿孔(孔が開く)が起こる危険性があるためです。 癒着による腸閉塞でも、腸を支え、腸に血液を供給している腸管膜が、腸の癒着に巻き込まれて強く締め付けられたりすると、血流障害が起こることがあります。 腸捻転や嵌頓ヘルニアでも、腸の絡まりや脱出が速やかに解消されないと、血流障害が生じることが多くなります。 腸は、血流が途絶えると短時間で壊死してしまうので、血流障害があれば治療は一刻を争います。 手術では、通過障害の原因が明らかな癒着であればそれを剥がしたり、嵌頓ヘルニアでは脱出した腸を引き戻して、血流の回復を図ります。 すでに壊死が生じている場合は、血流が途絶えた部分の腸管を切除し、正常な部分を繋ぎ合わせます。 また、大腸に起こった腸閉塞では、治療は基本的に手術となります。 腸閉塞の手術は、一般に開腹手術行われますが、最近では、状況によっては腹腔鏡手術で行えるケースもあります。 高齢者では脚の付け根に起こる「鼠径ヘルニア」が多く、これが嵌頓ヘルニアになるリスクが高い場合には、予防のためのヘルニアの手術が行われることもあります。 最近では、腹腔鏡手術で行うことが増えています。