耳鳴り治療に『通電療法』

耳鳴りには、治りやすい耳鳴りと治りにくい耳鳴りがありますが、治りにくい耳鳴りの場合、 耳鳴りの音源が音声を処理する脳の聴覚野にあるため、脳が雑音を認識してしまい、 それがいわゆる耳鳴りとなった状態(脳鳴り)になります。 脳鳴りを改善させるには、心身をリラックスさせて 脳全体を活性化し、扁桃体の働きを正す必要があります。 そのための方法として、微弱な電流で脳の活性を促し、雑音の完治の乱れを正す 『通電療法』が有効なことがわかりました。 通電療法は、耳に電気を流すことで、血流改善と体温上昇を促すリラクゼーション治療法(心身医学療法の一部)で、 通電療法を行えば、イライラや不安が抑えられて脳が活性化し、 扁桃体の過敏さを正常化させることができます。 治療後数日から1週間ほどで脳鳴りを鎮められ、頑固な耳鳴りが徐々に完治に向かっていきます。


■難治の耳鳴りの多くは脳鳴りが原因だった

以下は健康雑誌に掲載されたクリニック院長の寄稿を転載したものです。

私の治療経験上、耳鳴りには、大きく分けて2つのタイプがあると考えています。通常の治療を受ければ治りやすいタイプと、 通常の治療を受けても治りにくいタイプです。それは、耳鳴りを生む音源がどこにあるかによって決まります。 治りやすいタイプの耳鳴りは、耳鳴りを生む音源が、聴覚の要ともいうべき内耳(耳の奥)の「蝸牛」という器官と、 蝸牛と脳をつなぐ聴神経に発生します。内耳が音源の場合は、低音のゴーとかブーという耳鳴りで、 聴神経が音源の場合はトントントンやジリジリジリなどの擬声音として聞こえます。 これらの耳鳴りは、内耳の血流循環を改善してあげれば、程度の差こそあれ改善し、完治することも簡単だといえます。

一方、治りにくいタイプは、耳鳴りの音源が音声を処理する脳の聴覚野にあります。 脳が雑音を認識してしまい、それがいわゆる耳鳴りとなった状態で、私はこれを『脳鳴り』と呼んでいます。 脳鳴りは、キーンといった高音を発生するのが特徴です。脳鳴りの場合、脳に音源があり、内耳の機能に関わらないので 通常の投薬治療を行っても、当然症状は改善しません。 もし、長い期間、通院しているにもかかわらず耳鳴りが改善しないという人がいたら、それは脳鳴りの可能性を疑ってください。 ちなみに、耳鳴りを訴えて私のクリニックに来院する患者さんの6~7割は、脳鳴りが原因です。


●心身がリラックスすれば、脳の働きも高まる

では、脳鳴りはどのような仕組みで起こるのでしょうか?
私たちの体からは、気付くかどうかは別にして常に雑音が出ています。例えば、心臓の拍動や呼吸の音、皮膚がこすれる音、 髪の毛が揺れる音などのさまざまな音です。通常、そうした雑音は、必要のない音として意識しないよう脳がコントロールしています。 ところが、イライラや不安を抱いて精神状態が悪くなったり、集中力が落ちたりすると、脳全体の働きが低下します。 すると、大脳の深くにある快・不快を感じるアーモンドに似た形の扁桃体はと呼ばれる部分の働きも過敏になり、 不快さに対する感度が高まってしまいます。 こうした状態では、脳の働きが悪くなっていて脳が雑音を感じ取るレベルが上がってしまうので、ふだん無視している雑音を 過剰に認識してしまいます。その結果、脳鳴りが起こるのです。そのため、脳鳴りを改善させるには、心身をリラックスさせて 脳全体を活性化し、扁桃体の働きを正す必要があります。

そのための方法として、私が辿り着いたのが、『通電療法』です。 これは、耳に電気を流すことで、血流改善と体温上昇を促すリラクゼーション治療法(心身医学療法の一部)です。 私は、心身医学療法について北海道大学病院に勤めていたころから、北海道大学応用研究所との共同研究を重ね、 通電療法を発展させていきました。そして通電療法を行えば、イライラや不安が抑えられて脳が活性化し、 扁桃体の過敏さを正常化させることを突き止めました。さらに、通電療法を行えば、治療後数日から1週間ほど 脳鳴りを鎮められることがわかったのです。


●効果を持続させるには生活習慣の改善が必要

通電療法では、ベッドい横になってもらった患者さんの耳に電極をつけ、数ミリアンペアの電気を約1時間流します。 リラックスしてもらうことが目的なので、苦痛を感じるような強さの電気は流しません。 治療を行うと、手足の表面が温かくなり、次第に眠くなってきます。このときレム睡眠(体は起きているのに脳が寝ている状態) の状態で頭がスッキリすれば、大抵の場合、耳鳴りが気にならなくなっています。 通電療法は、内耳の血流もよくするので、耳鳴りの音源がどこであろうと関係なく、すべての耳鳴りを訴える患者さんに 適しているのです。 実際に、当院に耳鳴りを訴えてやってくる新規の患者さんは、年間、500~600人いますが、通電療法を含めた脳を活性化する 治療法を続けていくことで、3人に2人は改善してます。残念ながら、リラックスするのが苦手な人は、脳鳴りが改善するのに 時間がかかりますが、根気強く治療を受け続ければ改善していきます。

通電療法の治療費は、週に1回であれば健康保険が適用され、自己負担はわずか数百円程度で済みます。 通電療法を一度受けただけで、耳鳴りが改善する人も大勢いますが、その効果はおよそ2、3日。 長い人なら、1週間くらいは効果が持続するでしょう。通電療法を続けていくことで、耳鳴りが完治に向かっていきます。 なお、耳鳴りの患者さんには、脳を活性化するために、以下の5つの点で生活習慣の改善をお願いしています。

第一に、1日最低でも5時間は睡眠を取ること。第二に、生活リズムを正して脳の血流を抑えること、 第三に、楽しいことをしたり、趣味に打ち込んだりして達成感や安心感を得て精神状態をよくし、 耳鳴りがあるのを認識する時間を、少なくすること。第四に耳鳴りは治らないとあきらめないこと。 耳鳴りがあるということに執着せず、治療経験の多い先生に診てもらうのが、諦めないことにつながります。 そして第五に、ストレスを溜めないよう生活の中に楽しみを見つけること、です。 この中でも、質の高い睡眠を取ることは、頭をスッキリさせ脳を活性化させるのに極めて重要です。 これらを実践すれば通電療法の効果もより大きくなり、耳鳴りも快方に向かっていきます。