飲み込む力が衰えると

飲み込む力が衰えると、食事に支障を来したり、「誤嚥」が起こりやすくなります。 予防対策を行い、飲み込む力を維持しましょう。


■飲み込む力が衰える原因

飲み込む力が衰えると、食べ物を飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりします。 飲み込む力が衰える原因には、大きく2つあります。

●喉を支える筋肉が衰える

「喉頭蓋」は、食べ物が空気の通り道である気管に入らないように、気管の入り口を防ぐ”ふた”の役割を果たしている器官で、 いわゆる「喉ぼとけ」と連携して働きます。 しかし、加齢とともに、喉を支える筋肉が衰えると喉ぼとけが下に下がり、喉頭蓋の辺りにある空間に食べ物が残りやすくなります。 また、喉の筋肉が衰えることで、喉頭蓋が気管に蓋をするタイミングが合わなくなって、 飲み込んだ食べ物が気管に入ってしまう「誤嚥」や「窒息」が起こりやすくなります。

●喉の感覚が衰える

喉の粘膜が食べ物を感じると、反射的に喉ぼとけが持ち上がり、喉頭蓋が気管の入り口を塞いで「ごっくん」と飲み込む「嚥下反射」が起こります。 喉の感覚が衰えると、この嚥下反射がうまく機能しなくなってしまいます。 飲み込む力が衰えることで、次のようなことが起こります。

▼固形物を噛んで飲み込めなくなる
固い食べ物を飲み込めないため、柔らかいものや噛まずに食べられるものを好むようになります。 その結果、栄養が偏り、低栄養を来しやすくなります。

▼食事をすると疲れる、最後まで食べきれない
時間をかけて食べ物をよく咀嚼しないと飲み込めず、食事に時間がかかるようになります。 そのため、食事の途中で心身ともに疲れてしまい、食事をすべて食べきれないことがあります。

▼食べた後に声がかすれる
食べ物を飲み込んだ後に声がかすれやすくなります。また、口の中に食べ物が残ったり、痰が絡みやすくなり、ガラガラした声になったりします。

■飲み込む力を鍛える

飲み込むときに使う喉の筋肉は、40歳代から衰え始めるるといわれています。 飲み込む力を維持するために、喉頭蓋を支える筋肉を鍛える体操、喉や舌の筋肉を鍛える「声出し」を行いましょう。

飲み込む力を鍛える


■誤嚥性肺炎

喉の筋肉が衰えて、飲み込む力が弱くなると、「誤嚥性肺炎」が起こりやすくなります。 誤嚥性肺炎は、食べ物や唾液に含まれた細菌が誤嚥によって肺に入って増殖し、炎症が生じる病気です。 誤嚥性肺炎を含めた肺炎は、現在(2020年)、日本人の死亡原因の第3位になっています。 肺炎で入院した高齢の患者さんのうち、80歳代では約80%、90歳以上では95%以上が誤嚥性肺炎であったという報告があります。 一般に、肺炎が起こると、38℃以上の発熱や強い咳などが現れます。 一方、誤嚥性肺炎では肺炎の典型的な症状が現れにくく、「呼吸が浅く早くなる」「何となく元気がなくなる」「体が異常にだるくなる」 「食欲がなくなる」などの症状が多くみられます。 高齢者の場合、これらの症状があっても自覚しにくいため、周囲の人が体調の変化を見逃さないことが大切です。 また、高齢者では、睡眠中に唾液が少しずつ気管に入ってしまい、誤嚥性肺炎が起こることがあるため、注意が必要です。

【関連項目】:「誤嚥性肺炎」