脂質異常症とは?
血液中の脂質に異常が生じた状態を『脂質異常症』といいます。 脂質異常症は「LDLコレステロール値が高すぎる」「HDLコレステロールが低すぎる」「中性脂肪値が高すぎる」状態です。 脂質異常症があると「動脈硬化」が進み、「心筋梗塞」などを起こしやすくなります。 脂質異常症と診断された場合は、脂質の値を適切に管理することが大切で、 リスク別に「管理目標」が設定され、その値を目指して治療が行われます。
■脂質異常症
血液中のコレステロール値や中性脂肪値が異常になる状態
血液中の「LDLコレステロール」や「中性脂肪」が多過ぎたり、「HDLコレステロール」が少なすぎる状態を 「脂質異常症」といいます。脂質異常症は、「動脈硬化」の大きな危険因子です。 動脈硬化は「狭心症」「心筋梗塞」といった冠動脈疾患や「脳卒中」などを引き起こします。 現在、日本の死亡原因の第1位は「癌」ですが、冠動脈疾患と脳卒中を合せると全体の約30%を占め、癌に匹敵します。 そうした背景には、食生活の欧米化が進み、脂質異常症が増え、日本における「総コレステロール値」 の平均がアメリカと同程度にまで高くなったことがあります。
◆冠動脈疾患予防のために脂質を管理する
冠動脈疾患の発症に血液中の脂質が異常に関わっていることは、すでに多くの研究で証明されており、 日本における冠動脈疾患は今後もさらに増加することが予想されています。 冠動脈疾患の発症を防ぐためには、血液中の脂質の状態を適切にコントロールすることが大切です。
◆「高脂血症」から名称が変更された
脂質異常症は、従来「高脂血症」と呼ばれていましたが、この高脂血症の中にはHDLコレステロール血が低すぎる場合、 すなわち「低脂血症」も含まれていました。そこで日本動脈硬化学会では、2007年の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」の改訂に当たり、 「脂質異常症」へと名称を変更しました。また、基準値の項目も、一部変更されました。
●脂質異常症の診断
血液検査で血液中の脂質の量を調べる
- ▼検査
- 血液中に含まれているコレステロールと中性脂肪の量を調べます。検査は、原則として12時間以上絶食した後に行います。 食事を摂っても、コレステロール値はすぐには影響を受けませんが、中性脂肪値は食事を摂ると大きく上昇するためです。
- ▼診断基準
- 「LDLコレステロール値が140mg/dl以上」「HDLコレステロール値が40mg/dl未満」「中性脂肪値が150mg/dl以上」の いずれかに該当する場合に、脂質異常症と診断されます。ただし、この診断基準は、あくまでも診断のための基準となる 数値です。誤解されることもあるのですが、これらに該当すればすぐに「薬物療法」を開始するということではありません。
●脂質異常症と診断されたら
自分に合った目標値に向けて脂質の値を管理する
脂質異常症と診断された場合は、動脈硬化性疾患の予防のために、管理目標値が設定され、その値を目標として治療を行います。 管理目標値は、冠動脈疾患の発症経験の有無、および「高LDLコレステロール血症」以外の冠動脈疾患の危険因子の数などによって決まります。
◆管理目標値の設定の仕方
冠動脈疾患を発症したことがない場合とある場合とでは、LDLコレステロールの管理目標値が大きく異なります。 発症したことがある場合は、最も厳しい値が設定されます。冠動脈疾患を発症したことがない場合は、 「年齢」「高血圧」「糖尿病(耐糖能以上を含む)」「喫煙」「冠動脈疾患の家族歴」「低HDLコレステロール血症」 といった冠動脈疾患の危険因子の数に応じて管理目標値が決められます。 HDLコレステロールと中性脂肪の管理目標値は、冠動脈疾患の発症経験の有無に関係なく、すべてのケースに共通です。
- ▼危険因子を減らすことが大切
- 日本で長期間にわたって行われた大規模な研究では、総コレステロール値や血圧、血糖の値が高くなり、 危険因子の数が多くなるほど、冠動脈疾患による死亡率が高くなることが証明されています(下図参照)。 危険因子は1つでも多く減らしておくことが大切です。
- ▼治療
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治療法には大きく分けて生活習慣の改善と「薬物療法」があります。
治療方針は、冠動脈疾患の発症経験の有無で行います。
冠動脈疾患を発症したことがない場合は、その発症を未然に防ぐ「一次予防」としての治療を行います。
まず、生活習慣の改善に取り組むのが基本です。「食事療法」や「運動療法」を一定期間行っても
管理目標値に達しない場合は、薬物療法を考慮します。
冠動脈疾患を発症したことがある場合は、「二次予防」として、再発を予防するための治療を行います。 通常は、生活習慣の改善を開始すると同時に、薬の使用についても考慮することになります。 脂質異常症の中には、体質的にLDLコレステロール値が高い場合がありますが、この場合は、生活習慣の改善と並行して、 最初から薬物療法を行うのが一般的です。