ねじれ腸対策には
『大腸ゆらし』
日本人の8割は「ねじれ腸」で重傷便秘になりやすい! 治す決め手は「大腸ゆらし」。
■食物繊維でも便秘が治らない理由が判明
便秘は、日本で最も多い病気です。国民の5人に1人。特に女性の約半数が便秘に悩んでいるといわれています。 便がなかなか出ないというのは、実に辛いことです。そんな便秘の原因として思い当たるのは、生活習慣や食生活の乱れ、ストレスなどでしょう。 しかし、「野菜や果物で食物繊維を摂っているのに便秘になる」 「毎日ウォーキングをしているのにお通じがない」など、 便秘にいいとされていることをしているのに改善しない人はたくさんいます。 これはどうしてなのでしょう。
実をいうと、日本人の腸は、多くが複雑にねじれているからなのです。 おそらく皆さんは、腸の形というと、人体模型図などで見た、大腸が小腸の周りをグルリと取り囲んでいる四角い形を想像するでしょう。 確かに、欧米人の腸は大方、この形です。一昨年、ドイツで100人以上、大腸検査をした時も、全員ほぼ解剖図どおりでした。 しかし、日本人の場合は解剖図どおりの人はたった2割程度です。 つまり大腸がところどころでねじれている人が、なんと8割もいるのです。 なぜ日本人に「ねじれ腸」が多いのかというと、人種や遺伝が影響していると考えられます。 親子の腸を調べてみると、ねじれ方まで、実によく似た形をしているケースが多いのです。
では、ねじれ腸だと、なぜ便秘になりやすいのでしょうか?。 それは、いったん便が硬くなると、ねじれて狭くなった部分に引っかかって、先に送りにくくなるからです。 そして、便を溜め込むと、腸は長く太くなります。すると、腸はさらに複雑にねじれて便が出にくくなります。 溜め込んだ便の重さで、腸が骨盤にまで垂れ下がることもあるのです。 かといって、頑固な便秘を下剤に頼り切って解消するのは、お勧めできません。 下剤で無理に腸を刺激して動かしていると、やがて腸は疲れ、腸の神経がダメージを受けます。 こうなると、腸が動かなくなり、下剤を飲んでも便が出なくなってしまうのです。 また、日本で多く使われているセンナなどの刺激性下剤を長期間毎日使うと、腸が真っ黒になり、 ポリープや癌になりやすいことも報告されています。 そこでお勧めしたいのが「大腸ゆらし」という腸のマッサージ法です。 これを行って一時的にでも腸のねじれた状態を緩めてあげれば、便秘を解消することができるのです。
●便が出切って4kg痩せた
では、大腸ゆらしのやり方をご説明しましょう。 腸がねじれて便秘の原因になる場所は、主に3か所あります。 1つ目は、左腹部の下行結腸、2つ目は、下腹部のS状結腸、3つ目は、左上腹部になる横行結腸と下行結腸のつなぎ目の部分です。 したがって、この3つの部分の大腸を揺らして緩めるようにします。 これらのうち、S状結腸と下行結腸を揺らすマッサージは、どちらも床に仰向けになり、リラックスした姿勢で行います。 それぞれの位置を指でトントンと軽く叩き、お腹の上から大腸を揺らすようにします。 ただし、左上腹部にある横行結腸と下行結腸のつなぎ目は、肋骨の下にあるため、指で押しても揺らすことはできません。 こちらは、立った姿勢で上半身を左右にひねることで、ねじれ部分の大腸を揺らします。
この大腸ゆらしを行うお勧めの時間は、起床直後と就寝前です。 大腸は起床後に動き始め朝食を食べるとさらに腸が動いて便が出やすくなります。 この朝食後の排便を促すため、特に朝食前にマッサージを行うのがいいのです。 また2つのマッサージは寝たまま行うので、就寝時に布団に横たわった時も無理なく実行できます。 その他、入浴時に湯船の中で行うのもいいでしょう。水中では腹筋の力がかからず、大腸がゆらゆらしているので 腸を揺らしやすくなります。この「大腸ゆらし」で中には、便が出切ったことで4kgも体重が減った人がいます。 是非皆さんも、大腸ゆらしを実行し、つらい便秘の悩みを解消してください。
■体験談
お腹が張っても腹痛がまったく起こらない
神奈川県・50歳・主婦 藤原玲子(仮名)
私は、若いころから便秘症で、3~4日お通じがないことがざらでした。 30代半ばからは、便秘と下痢を繰り返すようになり、しばしば腹痛も起こるようになったのです。 その痛みは、腸閉塞や腸捻転でも起こしたかのように激しく、冷や汗が出たり、吐いたりすることもありました。 食事がきっかけでそうした痛みが起こることが多かったので、友人とランチをしたり、旅行に行ったりするときも、 いつ症状が起こるかと思うと、気が気ではありませんでした。
そんな腹痛は、年齢とともに頻度が多くなりました。そのため、一度きちんと病院で調べてもらわないといけないと思い、 久里浜医療センターの水上健先生の診療を受けたのが、昨年の2月のことです。 大腸内視鏡とCTコロノグラフィー(空気などで拡張させた大腸を、その画像を3Dにしてデータ処理したもの)による検査を行ったところ、 なんと腸がねじれていることが判明しました。 私の場合、下行結腸の部分がねじれ、横行結腸は便で延ばされて骨盤にまで垂れ下がっていました。 そのため、便がねじれた部分に引っかかり便秘になりやすかったのだそうです。 今まで原因がわからなかったので、それが判明した時は、なんだかホッとしました。
ねじれ腸は治療できないけれど、便秘は治せるとこのと。 水上先生は、便を柔らかくするマグネシウム製剤を処方してくださり、「大腸ゆらし」というマッサージを行うことも勧めてくれました。 これはS状結腸のあたりをトントンと叩いたり、上半身をねじったりすることで、腸を揺らして動かす方法です。 早速、マグネシウム剤を飲むと、自然なお通じがきました。 そしてお腹が張ったりするときに、大腸ゆらしを丁寧に行うと、あの激しい腹痛もまったく起こらなくなったのです。 長年に渡って悩まされてきた便秘や、激しい腹痛から解放されて、気持ちまで明るくなりました。 ねじれ腸であっても、大腸ゆらしを続ければ便秘とうまく付き合っていけそうなので、これからもずっと続けていくつもりです。