【質問】「しびれ」とはなんですか?

【答】

一般に、何もしないのに起こる「ビリビリする」「ジンジンする」というような異常な感覚を「しびれ」と表現しています。 しかも、その感じ方は、人によってさまざまで、「ジンジンする」「ビリビリする、ピリピリする」「焼けるように痛い」 などと表現する人もいれば、軽い麻痺があり、動きが悪いことをしびれと表現する人もいます。 現れ方も、「突然起きる」「次第に強くなる」など、一定ではありません。

【しびれが起こるメカニズム】

私たちの皮膚や筋肉が「冷たいものに触れる」「人に触られる」など何らかの刺激を受けると、その感覚情報は、 末梢神経(知覚神経)から脊髄を通り、脳へと伝えられます。 しびれは、この通り道のどこかに障害が起こり、異常な刺激として脳で処理されるために生じます。 しびれの原因となる障害は、「神経障害」「血行障害」に大別されます。 どちらも、一時的な圧迫などによって起こる場合と、病気によって起こる場合があります。 一時的な圧迫の多くは、日常生活で体験するものです。正座後の脚のしびれや、肘をぶつけたときの手のしびれ、起こります。 腕を下にして眠り込み、起きたときの腕のしびれなどは、一時的に血流が障害されたり、神経が圧迫されたりすることで また、運動したあとで筋肉が疲れ、しびれたように感じることもあります。 病気が原因となる場合は、「変形性頸椎症」「脳梗塞」「帯状疱疹」など、多岐にわたります。 まれな例では、「胃癌」で胃を切除したあとなどに、ビタミンB12の吸収不全によって脊髄の働きが低下して、 しびれが起きることもあります。特に高齢者は、動脈硬化が進んでいることが多いため、血行障害が起こりやすいといえます。 また、加齢により関節が変形したり、「骨粗鬆症」が進行して圧迫骨折をしたりしていると、神経障害が起こりやすくなります。


【質問】しびれは、体のどこに起こりますか?

【答】

日常体験する痺れの多くは手や足に起こりますが、神経や血管は全身に張り巡らされているため、 しびれは、全身のどこにでも起こる可能性があると言えます。また、1ヶ所がしびれることもあれば、 同時にいろいろな部位にしびれが起こることもあります。腕や脚などは片側だけがしびれることもあれば、 両側がしびれることもあります。


【質問】注意が必要なしびれとは?

【答】

正座後の脚のしびれなど、一時的なしびれは、少し時間が経過すれば自然に消えてしまうので、特に心配する必要はありません。 注意する必要があるのは、重大な病気が隠されているしびれです。また、血行障害によるしびれが長く続く場合、 放置すれば血行が悪いままの状態が続き、神経が障害され、さらにしびれが増すことがあります。 そうなると、体を動かさなくなり、ますます血行が悪くなるというように、「しびれの悪循環」が生じる恐れもあります。 次のようなしびれがある場合は、なるべく早く医療機関を受診してください。

【麻痺や言語障害を伴う】

体の片側にしびれが起こり、麻痺や言語障害などを伴う場合には、「脳出血」「脳梗塞」など、 脳の病気が考えられます。救急車を呼ぶなどして、医療機関をすぐに受診しましょう。 「両腕を水平に上げられない」「頬を膨らませることができない」なども、麻痺のサインです。 これらの症状が徐々に表れる場合には、「脳腫瘍」なども考えられます。

【しびれが長時間続いたり、繰り返す】

長く続くものほど注意が必要です。脚のしびれが長期にわたって続くと、細胞が壊死し、 最悪の場合には切断しなくてはならない恐れもあります。 また、しびれがすぐに解消しても、何回も繰り返す場合にも注意が必要です。 例えば、体のどこかにできた血栓が原因で一時的にしびれが起こっている場合、何らかの原因で血栓が溶け、症状が治まり、 それを繰り返すことがあります。しかし、放っておくと、血栓が脳や肺に流れて脳梗塞や肺塞栓症が起こる恐れがあります。

【しびれが次第に強くなる】

「時間が経つほど強くなる」「しびれる範囲が広がる」場合などには、生命にかかわる恐れもあります。

【しびれ以外の症状がある】

「しびれている部位が冷たい」「歩行障害がある」などの場合、血行障害が起きている恐れがあります。 足に血行障害が起きた場合は、左右を比べてみると、しびれがある方が冷たくなっていたり、青白くなっていたりします。 歩いていると足がしびれて歩けなくなり、しばらく休むとまた歩けるようになる「間欠跛行」が現れることもあります。

【しびれの範囲に特徴がある】

「首から肩や腕にかけてしびれ、首の痛みを伴う」場合は頸椎に、「腰から下肢にかけてしびれ、腰の痛みがある」 場合は腰椎に病気がある疑いがあります。


【質問】どんな病気が原因で起きますか?

【答】

しびれを起こす病気はさまざまです。大別すると、「末梢神経障害を起こす病気」「脊椎・脊髄の病気」「脳の病気」 「血行障害を起こす病気」などがあります。

◆末梢神経障害を起こす病気

一部の神経に障害が起き、しびれが1ヶ所に集中する「単一の神経障害によるしびれ」と、 複数の神経に同時に障害が起きて、全身の各所がしびれる「多発的な神経障害によるしびれ」があります。

<<単一の神経障害>>
▼手根管症候群
中年女性に多く見られる病気で、手首の神経が圧迫され、手のしびれや、「手に力が入らない」などの症状が現れます。

▼胸部出口症候群
鎖骨周辺にある「胸部出口」と呼ばれる、神経と血管の通り道が圧迫されて起こる病気です。 発症すると「手や足がしびれる」場合があります。症状が進行すると首や肩にしびれが現れることもあります。
<<多発的な神経障害>>
▼糖尿病
糖尿病が進んでいると、「だるい」「のどが渇く」などのほか、手や足にしびれや痛みを感じることがあります。
【関連サイト】 『糖尿病』

▼尿毒症
老廃物が尿中に排出されず、体の中にたまると、体の左右対称にしびれが起こることがあります。

▼膠原病
細胞同士を結び付けている結合組織に炎症が起きる病気で、血管にも炎症が起こるため、初期症状として、 手足にしびれが起こる場合があります。

▼有害物質による中毒
”薬害スモン”で知られるキノホルムなど、有害物質の摂取により、しびれが起こることがあります。

▼帯状疱疹
病気や過労で免疫の働きが低下すると、体内に潜伏していた水疱瘡のウィルスが活性化し、 神経や皮膚に炎症を起こすことがあります。体の片側に帯状の水疱ができ、しびれや痛みを伴います。

◆脊椎・脊髄の病気

頸椎や胸椎、腰椎などの脊椎(背骨)は、小さな骨(椎骨)が積み重なっています。 椎骨と椎骨の間には「椎間板」というクッションの役割を果たす組織があります。 加齢により椎骨が変形して脊髄などの神経を刺激したり、何らかの原因で椎間板が飛び出すヘルニアが起こったりすると、 神経を圧迫してしびれが起こります。

<<頸椎の病気>>

「変形性頸椎症」「頸椎椎間板ヘルニア」「頸椎後縦靭帯骨化症」「頸部脊柱管狭窄症」などがあり、 主に片側の首から手指にかけてしびれが起こります。

<<腰椎の病気>>

「変形性腰椎症」「腰椎椎間板ヘルニア」「腰部脊柱管狭窄症」などがあり、主に片側の腰から足の裏側にかけてしびれが起こります。

<<脊椎の病気>>

「脊椎腫瘍」や「多発性硬化症」などもしびれの原因になります。脊椎腫瘍の場合、痺れや他の症状が徐々に悪化していきます。 多発性硬化症の場合は、脊髄などの神経細胞が障害され、腹部や手足などのさまざまな部位に痺れや他の症状が現れ、 ”よくなったり悪くなったり”を繰り返します。

◆脳の病気

脳の血管が破れる「脳出血」や、脳の血管が詰まる「脳梗塞」が起こると、顔や体の片側にしびれが起こることがあります。 重症になると、麻痺が起こったり、会話がしにくくなったりします。「脳腫瘍」や、脳の細胞が変性していく「神経性疾患 (パーキンソン病など)」では、しびれや他の症状が徐々に重くなるのが特徴です。

◆血行障害を起こす病気

「バージャー病」「閉塞性動脈硬化症」「レイノー症候群」など、動脈硬化が主な原因となる病気の場合、 血行障害によるしびれが起こる場合があります。

◆その他

この他、免疫異常で起こる「ギラン・バレー症候群」も、初期症状として手足のしびれが起こることがあります。 また、栄養障害から起きるしびれもあります。特にビタミンB群の不足が原因になりやすいので、注意が必要です。 ビタミンB1が不足することで起きる「脚気」では、太腿から下の部分にしびれや痛みを感じます。 栄養状況の向上により近年は減少していましたが、最近、「インスタント食品ばかりを食べる」 「おつまみを食べずに過剰に飲酒する」などにより、栄養障害から脚気を起こす患者さんが増えてきています。 慢性的に過剰な飲酒をしている場合には、アルコールそのものによる神経障害から、手足のしびれが起こる場合もあるので、 酒量にも注意が必要です。


【質問】どこを受診すればいいですか?

【答】

麻痺や言語障害がない場合には、「整形外科」、脳の病気の疑いがあるときや原因不明の場合には「神経内科」が勧められます。 それぞれの医療機関では、問診や画像診断などを行い、専門外の病気が疑われる場合には、適切な診療科を紹介してくれます。 何かを受診すればよいかわからない場合、受付で症状を伝えると診療科を紹介してくれる医療機関もあります。 最近では、しびれを総合的に診察し、診断、治療をする「しびれ外来」を開設する医療機関も出てきています。


【質問】どんな検査を行いますか?

【答】

「問診」の後、痺れのある部位を軽く叩いたり、触れたり、針を刺して痛みを感じるかなどの「感覚検査」を行います。 これらの検査で異常が見つかれば、神経障害が疑われます。足の甲の動脈に触れて、血管がコリコリとした感触で、 脈拍が弱ければ、動脈硬化による血行障害が疑われます。 その後、脳の病気が疑われる場合には「CT(コンピュータ断層撮影)検査」または「MRI(磁気共鳴画像)」、 脊椎・脊髄の病気の場合にはエックス線検査、CT検査またはMRI検査などの画像検査を行い、 脚の病気の場合には「超音波血流検査」や「サーモグラフィー」を行って血行や温度を調べます。 他に、筋電図検査、神経電動速度検査、髄液検査、血管造影検査などを行うことがあります。 また、有害物質による中毒やビタミン欠乏症などが疑われる場合には、血液検査を行うこともあります。


【質問】受診時の注意はありますか?

【答】

痺れはさまざまな原因で起こるので、適切な治療を受けるためには、正確な診断が大切です。 問診の際には、できるだけ具体的に症状を伝えてくだささい。 そのために、受診の前に、あらかじめ症状や経過を整理しておきましょう。 例えば、「どこがどのように痺れるか」「いつから症状が出始めたか」「何かきっかけがあったか」 「まずどこに症状が出たか、次はどこに出たか」などを書きだしておくとよいでしょう。


【質問】日常生活で注意する点はありますか?

【答】

病気が原因の場合、専門的な治療に加え、日常生活でも次の点に注意すると、痺れの改善につながります。

▼体を冷やさない
体が冷えると血管が収縮し、血行が悪くなるので、「体を冷やさない」ように注意します。 冬季の防寒対策はもちろん、夏季はエアコンによる冷え過ぎに気をつけます。 「適温のお風呂にゆっくり浸かる」「腹巻きやサポーターなどで保温する」のもよいでしょう。

▼適度な運動を行う
いつでもどこでもできるウォーキングが勧められます。ただし、病気によっては、運動が症状を悪化させる恐れもあるので、 開始前に担当医と相談してください。

▼食事に気を配る
「栄養バランスの良い食事」や「規則正しい食事」をとるように心掛けます。 特に、末梢神経の働きには、ビタミンB1の摂取が大切です。 ビタミンB1は、豚肉、うなぎ、玄米などに多く含まれています。

▼姿勢や動作に気を付ける
頸椎や腰椎などの病気が原因の場合、「中腰での作業や首を後ろにそらす姿勢を長時間続ける」「重い荷物を持つ」など、 脊椎に負担をかける姿勢や動作を避けることが大切です。注意したい姿勢や動作は、症状によって異なるので、 担当医の説明や指導に従ってください。このほか、禁煙や肥満対策などを行うことも、血行を改善するために大切です。