閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査・診断・治療

問診の上、自宅で検査を行い、異常があれば精密検査を行う

■閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査・診断

『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』が疑われる場合には、睡眠外来や睡眠医療センターなどがある医療機関を受診してください。 また、日本睡眠学会では、睡眠障害の専門医がいる医療機関などの認定を行っています。 医療機関では、イビキや呼吸の様子、昼間の眠気、肥満の状態などについての問診が行われます。 就寝中の様子については、寝室を共にする家族がいれば同行し、答えるとよいでしょう。 問診で閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性があると判断された場合、患者さんは小型の測定機器を持ち帰り、自宅で簡易無呼吸検査を行って、呼吸の状態などを調べます。 簡易検査の結果、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の可能性が高い場合には、1泊入院して精密検査(終夜睡眠ポリグラフ検査)を受けます。 この検査は、患者さんの就寝中の脳波や心電図、胸部・腹部の動き、鼻と口の空気の流れ、眼球の動き、 動脈血中の酸素濃度など10種類以上のデータを測定しますが、特に重要なのは次の項目です。


●閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査①

▼問診
イビキの有無や日中の眠気などを確認します。 家族など一緒に寝ている人から睡眠中の様子を聞くことも必要なので、受診の際はできるだけ一緒に寝ている人が付き添いましょう。 問診で閉塞性睡眠時無呼吸諸侯群が疑われる場合、自宅での簡易無呼吸検査を行います。

▼自宅での簡易無呼吸検査
医療機関から貸し出されるパルスオキシメーターという携帯型の危機を使用します。 指先にパルスオキシメーターのセンサーを装着し、睡眠中に血液中の酸素飽和度や脈拍を測定し、 無呼吸や低呼吸の時間や回数、呼吸の深さなどを調べます。 この検査で閉塞性睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査による精密検査を行います。

▼終夜睡眠ポリグラフ検査
医療機関に一晩入院し、睡眠中の状態を調べる検査です。 頭部や胸、脚など20ヵ所ほどにセンサーなどを取り付け、脳波や心拍数、眼球運動、筋電図、口と鼻の気流などから、 睡眠の質、イビキや呼吸の状態などを調べます。

●閉塞性睡眠時無呼吸症候群の検査②

▼脳波
睡眠の深さなど、睡眠の質について調べます。

▼口・鼻の気流
呼吸の状態を調べます。口と鼻の空気の流れを測定し、波形で表します。

▼呼吸に伴う胸部・腹部の運動
呼吸するときの胸とお腹の動きを調べます。

▼心電図
心拍数の変化や不整脈の有無などを調べます。

▼酸素飽和度
血液中の酸素濃度を測定します。

●閉塞性睡眠時無呼吸症候群の診断

上記の検査で10秒以上続く無呼吸や低呼吸が、1晩(約7時間の睡眠中)に30回以上、1時間に5回以上あり、 「日中の異常な眠気」がある場合に、閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断されます。 一般に10秒間以上の無呼吸や低呼吸が1時間に5~15回未満の場合は軽症、15~30回未満は中等症、30回以上は重症と判定されます。 無呼吸とは、口と鼻の気流が10秒間以上停止した状態のことです。 低呼吸とは、10秒間以上、口と鼻の気流が通常の呼吸時より50%以上低下し、かつ、酸素飽和度が通常より3%以上低下した状態のことです。 無呼吸や低呼吸の回数が多いほど、重症とされます。


■閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療

重症度に応じて、装具や装置を用いて気道を確保する

閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療は、重症度に応じて適切な方法が選択されます。 軽症から中等症の場合には、主に「マウスピース」が用いられます。睡眠中に装着することで、気道を確保します。 また小児に多いのですが、肥大した扁桃が軌道を塞いでいる場合には、扁桃の切除手術が行われることもあります。 中等症から重症の場合は、主に、「CPAP」が行われます。

【重症度で分類】
▼軽症
まず生活習慣を改善します。主な原因である肥満を解消するため、減量に取り組みます。 また、飲酒すると舌や気道の周りの筋肉が緩み、気道が塞がりやすくなるので、就寝前の飲酒は控えます。 横向きに寝ると、舌の根元や軟口蓋が喉に落ち込みにくくなり、症状が改善しやすくなります。 横向きに寝る場合、抱き枕などを使うのもよいでしょう。
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▼軽症~中等症
生活習慣の改善と併せて、睡眠中にマウスピースを使うこともあります。 マウスピースで、下顎を前方に数mm程度移動させ、下顎が下がる動きを制限することで、 舌の根元や軟口蓋が落ち込んで気道が塞がったり、狭くなったりするのを抑えます。

▼重症
CPAPによる治療を行います。CPAPは、鼻にマスクを装着し、機械から一定の圧力で空気を気道に送ることで、気道が塞がるのを防ぎ、 無呼吸や低呼吸を改善します。減量などで症状が改善された場合には、CPAPによる治療を中止することもあります。

【方法で分類】
▼外科手術
扁桃腺の肥大によって、上気道の閉塞が起こっている場合には、扁桃腺を摘出する手術が有効です。 これは、特に子供によく見られます。

▼マウスピース
軽症の場合は、睡眠時にマウスピースを装着し、下顎を前に出して、上気道が塞がるのを防ぎます。 マウスピースは、歯科で作成します。
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▼CPAP療法
全ての例に有効ですが、特に重症例に用いられます。 小型の装置を使って、鼻から、患者さんに適した圧力で空気を送り込み、上気道が広がった状態を保つことで無呼吸を防ぐものです。 患者さんは鼻マスクを装着して眠るので、最初は違和感を感じることがありますが、 慣れてくると気にならなくなり、熟睡できるようになります。 目覚めがすっきりして、日中の眠気が治まる効果が期待できます。

CPAP療法を始めた多くの患者さんが、”よく眠れるようになった”など劇的な効果を実感しています。 ただ、まれに装置が気になって眠れないなど、継続が困難な患者さんもいます。 その場合には、マウスピースによる治療などに変更します。 CPAP療法には高い効果がありますが、気道の塞がりを根本から治すものではありません。 従って、基本的に治療は継続して行っていきます。 また、CPAP療法では鼻から空気を送り込むので「鼻炎」や「副鼻腔炎」などの鼻の通りを悪くする病気があると、十分な効果が得られません。 この場合には、耳鼻咽喉科で鼻の治療を受けます。

睡眠時無呼吸症候群の治療