機能性ディスペプシアの治療

運動機能改善薬(胃の動きを改善する薬)や、胃酸分泌抑制薬を用いる

機能性ディプペプシアの治療は、薬物療法が中心です。 使用される薬にはいくつかの種類がありますが、「運動機能改善薬」「胃酸分泌抑制薬」が第一選択薬となるのが一般的です。


■薬物療法

機能性ディスペプシアの治療では、主に次のような薬が使われます。

▼消化管運動改善薬
最もよく使われる薬で、胃の働きをよくすると同時に、知覚過敏を改善する効果があります。 胃の運動をよくし、食べたものを外からスムーズに排出されるようにすることで、症状を改善します。 機能性ディプペプシアの治療薬として「アコチアミド」という薬が、2013年6月から日本で使用できるようになりました(世界でも初めて) 。

▼胃酸分泌抑制薬
胃酸の分泌を抑える薬です。胃酸の分泌を抑制し、胃や十二指腸への刺激を減らします。 内臓知覚過敏がある場合には、胃酸に対して胃が非常に鋭敏な状態になっています。 そこで、少しでも刺激を減らすために、胃酸の分泌を抑えます。

▼抗鬱薬・抗不安薬
ストレスを自覚していたり、ストレスの影響が大きいと判断される場合に使われます。

▼漢方薬
体力が低下している人やお年寄りの場合に「六君子湯」などが使われます。

これらの中から患者さんに適したものが選ばれ、まず2週間ほど服用します。 効果があれば服用を継続し、効果がない場合は、別の薬に変更したり、複数の薬を併用したりします。 なお、市販の胃腸薬の大半には、消化管運動改善薬などの成分が含まれていません。 一時的に市販薬で対応してもかまいませんが、医療機関を受診して検査を受けた上で、治療を受けることが勧められます。

◆受診の目安

週に2~3回以上症状があり、日常生活に支障が生じている場合は、消化器科や内科を受診しましょう。 癌などの病気が隠れている可能性もあるので、内視鏡検査を受け、診断を受けることが重要です。


■生活上の注意

症状を改善するためには、ふだんの食事に注意することも必要です。

▼香辛料や脂質の多い食べ物を摂り過ぎない
香辛料を摂りすぎると、胃の知覚過敏を招きます。また、脂質の多い食べ物を摂りすぎると、消化が遅くなり、胃の働きが悪くなります。

▼よく噛んで、ゆっくり食べる
よく噛まずに早く食べると胃に負担がかかります。

▼腹八分目を心掛ける
一度にたくさん食べ過ぎると胃に負担がかかります。

▼食べてすぐに寝ない
食べてすぐに寝ると、食べ物が朝まで胃に残り、起きたときに胃の調子が悪いと感じます。

▼楽しい雰囲気で食べる
リラックスした状態で食事をすると、胃の機能がよくなることがわかっています。

食事に気をつけるほか、ストレス解消を心掛けるようにしましょう。


●不安の解消で症状が和らぐことも

ストレスが関わることも多いため、不安の解消が治療に役立つことがあります。 医療機関を受診し、担当医に話を聞いてもらうだけで症状が軽くなる人もいます。 また、胃の内視鏡検査を受け、胃潰瘍や胃癌などの異常がないとわかることで、症状がすっかり良くなる人が3割ほどいるとも言われています。


●その他に気を付けること

ピロリ菌の除菌や生活習慣の改善が大切

症状の改善のためには、次の点に気を付けることも大切です。

◆ピロリ菌の除菌をする

胃にピロリ菌が感染している場合には、除菌治療を受けることが勧められます。 ピロリ菌の感染が機能性ディプペプシアの原因になっていない場合があるかもしれませんが、除菌することで、 将来起こるかもしれない胃潰瘍や胃癌のリスクを下げることもできるからです。

◆生活習慣を改善する

機能性ディプペプシアの患者さんには、食事などの生活習慣が乱れている人が多いことがわかっています。 「朝食を摂らない」「運動量が少ない」「睡眠時間が短い」などの傾向があるのです。 こういった生活習慣を改善していくことが、機能性ディプペプシアの症状を改善することにつながると考えられます。


●担当医とのコミュニケーションを図る

胃の不快な症状でQOLが低下し、つらい思いをしている人が少なくありません。 「重大な病気が隠れているのではないか」などの不安や「生活するうえでこんなことに困っている」などの悩みがある場合は、 担当医に相談しましょう。また、自分の病気の状態についての説明をよく聞くなど、 担当医とのコミュニケーションをとりながら、治療に取り組むことが大切です。