胆石症の治療

胆石症』の治療は、身体的負担が比較的軽く、かつ胆嚢を摘出できる「内視鏡的胆石除去術」や 「腹腔鏡下胆嚢摘出術」などの内視鏡・腹腔鏡による治療が主流になってきています。


■胆石症の治療

『胆石症』で治療が必要なのは、疝痛発作が起こったり、 肝機能障害や急性胆嚢炎などの合併症が起こった場合です。 症状がない場合には、経過観察を行うこともよくあります。しかし、症状がなくても、胆嚢の壁が厚くなっていたり、 石灰化が認められる場合には、胆嚢癌の発生する可能性や、検査で見落とされやすいことなどを考慮し、 治療が行われます。また、疝痛発作が起こりやすいような場所に胆石がある場合も、治療が検討されます。

治療の中心は、胆嚢や胆石を摘出する手術です。胆嚢結石の場合は、胆嚢を丸ごと摘出します。 胆嚢を摘出しても、必要な胆汁は肝臓で作られ供給されます。 治療法には、身体的負担が比較的軽く、かつ胆嚢を摘出できる「内視鏡的胆石除去術」「腹腔鏡下胆嚢摘出術」などの内視鏡・腹腔鏡による治療があります。

そのほか、胆石溶解薬を長期間服用して胆石を溶かす「溶解療法」、 体の外から衝撃波を当てて胆石を砕く「破砕療法」などがあります。 これらの治療法は、患者の体の負担が軽くてすみますが、胆嚢を摘出せずに残すため、再発が多いのが現状です。


●腹腔鏡下胆嚢摘出術

「腹腔鏡下胆嚢摘出術」は、腹部に小さな孔を3~4ヶ所ほど開け、そこから腹腔鏡と手術器具を挿入して、 腹腔鏡による映像を見ながら、胆嚢を摘出する治療法です。 胆嚢を摘出しても、総胆管が自然に太くなったり横向きになったりして、胆嚢の代わりをするようになるので、 大きな問題はありません。この治療法のメリットは、体全体への負担が軽いことです。手術翌日から水を飲んだり、 歩くことができ、ほとんどの場合、1週間以内に退院できます。 開腹手術に比べて、傷口が小さく痛みが少ない、回復が早い、手術の後も目立たないという特徴があります。

◆腹腔鏡下胆嚢摘出術に適さない場合

次のような場合は、腹腔鏡下胆嚢摘出術ができないため、開腹手術が行われます。

▼腹部の手術を受けたことがある
胃や大腸などの手術を受けた人は、腹部の組織が癒着している可能性が高く、手術操作が難しくなります。
▼胆嚢に強い炎症がある
「急性胆嚢炎」がある場合は、開腹手術のほうが安全といえます。
▼心臓や肺の病気がある
腹腔鏡下胆嚢摘出術の際は、手術操作をしやすいように、炭酸ガスでお腹を膨らませます。 心臓や肺に負担がかかるため、これらの臓器に病気がある人には向いていません。
▼重度の肥満がある
重度の肥満の場合は、胆嚢の周辺に大量の脂肪が付いているため、腹腔鏡下での手術操作が困難になります。

●内視鏡的胆石除去術

「内視鏡的胆石除去術」とは、胆石が胆嚢の外に出て、総胆管に詰まっている場合に行われる治療法です。 石が小さい場合は、総胆管と十二指腸の境目にある「ファーター乳頭」の括約筋を電気メスで切開して、 石を十二指腸に排出し、便として体外に出します。 また、内視鏡の先端から送り込んだ「バルーン(風船)」を膨らませて総胆管の入り口を広げ、 石を排出させる方法もあります。これらの方法で対処できない大きさの石の場合には、 内視鏡の先端から「バスケット鉗子」というワイヤーを出して、石をつかんで取り出します。 バスケット鉗子で、石を砕くこともできます。

◆治療後

内視鏡による手術そのものは、外来でも受けられます。ただし、出血や膵臓の炎症が起こる可能性もあるので、手術後1~2日間は安静が必要です。 また、いざというときに安全に処置を行えるように、入院することもあります。


●経過観察の場合

摘出手術を受けない場合は、1年に1回程度、定期的に検査を受けるようにしてください。 また、脂肪の摂りすぎを避けたり、規則正しく食事を摂るなど、食生活に気をつけることが大切です。