胃癌の予防『野菜・果物の摂取』
胃癌の予防のためには、発癌を防ぐ多彩な抗酸化栄養素を多く含む果物を多食することが有効です。
■癌予防に効果のある食品
米国では癌予防のために果物を推奨
日本人の癌による死亡率が増えている反面、米国では1990年を境に、癌の死亡率も罹患率も減少しています。 米国がこうした成果を得られてのは、癌撲滅のためのさまざまな運動に取り組んできたからです。 癌による死亡者の増加を危惧した米国では、癌の発症予防に関する論文の中から、科学的に根拠のある論文をまとめ、 二つの勧告を出しました。一つは「禁煙の実行」、もう一つが「野菜や果物を多く摂ること」でした。 その後、米国国立癌研究所が中心となって、野菜や果物を1日400g食べることを勧める運動を開始しました。 そしてその運動から約10年が経ったころ、癌による死亡率が減少に転じたのです。
また、同じく米国国立癌研究所は、さまざまな疫学調査に基づいて、癌予防の効果の大きい食品を選び出しました。 それが「デザイナーフーズ・ピラミッド」です。
その中の食品を見ると、野菜や果物が大半を占めていることがわかります。 こうした米国の取り組みを受けて、最近、日本の厚生労働省も野菜や果物を摂ることを勧めるようになりました。
野菜や果物の摂取が、胃癌の発生率を下げることを確かめた調査があります。 これは、1990年に厚生労働省研究班が岩手県・秋田県・長野県・沖縄県に住む40~59歳の男女4万人を対象に行った 疫学調査です。「緑の野菜(ホウレンソウやコマツナなど)」「黄色の野菜(ニンジンやカボチャなど)」 「緑黄色以外の野菜(ハクサイ、トマト、キャベツなど)」「果物(特に種類を問わず)」のそれぞれの項目について、 「ほとんど食べない」「週に1、2日食べる」「週に3、4日食べる」「ほとんど毎日食べる」の4つから選んでもらい、 その10年後の胃癌の発生状況を調査したものです。 その結果、「ほとんど食べない」人が胃癌になった数値を1とすると、「週に3、4日食べる」人の胃癌発生の危険度は、 緑色の野菜では0.76、黄色の野菜では0.63、緑黄色以外の野菜では0.44、果物では0.69と低くなっていました。
●抗酸化力の強いファイトケミカル
野菜や果物には、他の食品にはない植物由来の有効成分「ファイトケミカル」が数千種類以上含まれていることが 確認されています。中でも注目を浴びているのが、過剰な活性酸素の害を退ける抗酸化成分です。 攻撃力の強い活性酸素が体内に過剰に発生すると、遺伝子に傷をつけてしまい、癌化を引き起こさせる引き金になってしまいます。 この活性酸素の害を防ぐには、 「抗酸化成分」を摂ることが最も大切です。 果物や野菜には、β-カロテン、ビタミンA・C・E、ポリフェノールやイオウ化合物(野菜の辛味・香り成分) などの抗酸化力の強いファイトケミカルが豊富に含まれています。 また、これまで世界の研究によって、果物は胃癌だけでなく、肺癌、大腸癌、膵臓癌、膀胱癌、食道癌、咽頭癌などに 予防効果をあらわすことが明らかになってきました。 さらに、世界の果物研究から、リンゴは、動脈硬化や心臓病などの生活習慣病の予防や整腸作用などにも効果のあることが 明らかになってきました。
●生ジュースやサラダにして積極的に摂ろう
最近、野菜の健康効果は広く知られるようになり、野菜を努めて食べようという意識を持つ人が増えています。 しかし、果物のほうはどうでしょうか。1998年に行われた世界の果物摂取量調査の結果を見ると、 ドミニカが1位、米国は28位、日本は何と117位で、1日当たりの摂取量は129gしかありません。 一方、日本の「果物のある食生活推進協議会」では、アメリカにならって、1日200gの果物を摂るよう呼びかけています。 通常、果物の種子や芯など食べられない部分を考慮すると、この量は、リンゴやナシなら約1個、バナナなら約1.5本、 温州ミカンなら約2個、イチゴなら握りこぶしくらいの量に相当します。 日本人の果物の摂取量が少ないのは、「果物は甘いので太る」というイメージを持つ人が、今でも少なくないことが 一因と指摘されています。しかし、実際には、果物のカロリーは野菜とほぼ変わらず、果物よりカロリーが高い野菜も たくさんあります。毎日果物を食べるのが難しい人は、次のような工夫をして見ましょう。
一つ目は、食事中におかずとして主食と一緒に食べることです。果物を食事のデザートとして食べることもいいのですが、 食事中に食べると消化がより高められ、食べすぎも防げます。 二つ目は、ジュースにして飲むこと。果物もまた、よくかんで食べるのが理想的ですが、カサの減るジュースにすれば 効率よく摂れます。三つ目は、果物を料理に使うこと。サラダにしたり、ジャムにしたり、リンゴならサツマイモ と一緒に煮たりすると目先が変わって飽きが来ないでしょう。
果物は一年を通して手に入るので、いろいろな種類のものを食べて、癌予防に役立ててください。