乳癌・子宮癌などの婦人科癌を予防する食品

乳癌・子宮癌などの婦人科癌の予防には、女性ホルモンの乱れを正すイソフラボンが多く含まれている食品、例えば、豆腐や味噌、テンペなどが有効です。また、乳癌の予防・改善にはα-リノレン酸の多いアマニ油の摂取も効果大で、実験では、乳癌の組織が半減したという結果が出ています。

■乳癌・子宮癌

近年、急増している

最近、「乳癌」や「子宮癌」といった婦人科系の癌にかかる女性が急増しています。子宮癌には、子宮の入り口付近にできる「子宮頚部癌」と子宮の上部にできる「子宮体癌」があります。このうち乳癌と子宮体癌の発生には、女性ホルモンの乱れが深く関係しています。女性ホルモンの一種エストロゲンが過剰に分泌されると、乳腺や子宮体部の細胞が刺激を受けます。細胞の中にはエストロゲンの受容体があり、そこにエストロゲンが結合すると、細胞の癌化が進んでしまうのです。こうした女性ホルモンの作用を食い止めてくれる成分が「イソフラボン」です。

また、乳癌は、かつて日本人には少ない癌でした。しかし近年、乳癌にかかる女性は増え続けており、いまや女性で最も多かった胃癌の患者数を追い抜くまでになっています。そのような乳癌の予防・改善に効果があると世界的に注目されているのが「アマニ油」です。

●イソフラボン

女性ホルモンに似た働きを持つ

イソフラボンは、マメ科の植物に含まれる「フラボノイド」（植物の色素成分）の一種で、大豆や大豆製品に豊富に含まれています。イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンと化学構造がよく似ていますが、体内でエストロゲンより穏やかな働きをします。イソフラボンが体内に入ると、エストロゲンより先回りして細胞の受容体と結合します。その結果、エストロゲンが受容体と結合するのを防いで、エストロゲンの過度の働きを抑える効果を発揮してくれるのです。これまでの研究によって、イソフラボンには

癌細胞の増殖を抑える
癌の成長に必要な血管の増殖を抑える
発癌の原因になる悪玉の活性酸素の発生を抑える

といった効果が認められています。また、国民栄養調査でも、イソフラボンの豊富な大豆製品をよく食べる地域の人は、乳癌や子宮体癌で死亡する危険度が低いこともわかっています。イソフラボンを豊富に含む大豆や味噌で、そのほか豆腐・納豆などの大豆製品にも含まれています。婦人科系の癌予防に、これらの食品を積極的に食べると有効でしょう（豆腐なら半丁が目安）。

また、イソフラボンと一口にいっても、体内に吸収されにくい低吸収型と、吸収力に優れた高吸収型の２種類があります。詳しい説明は省きますが、両者の違いは、分子構造の中に糖が含まれているかどうかにあります。低吸収型のイソフラボンは、その末端に糖がついているため分子が大きく、体内に吸収されにくいのです。一方、体内への吸収力に優れた高吸収型のイソフラボンは、味噌やテンペという食品に豊富です。テンペはインドネシアの伝統食で、ゆでた大豆をハイビスカスの葉についているテンペ菌という微生物で発酵させたもの。最近では、日本でもスーパーなどで市販されています。

なお、イソフラボンは便利なサプリメントも市販されていますが、日常食品に加えてイソフラボンを過剰に摂取すると体に悪影響を及ぼす恐れもあると指摘されています。製品に表示された適量を必ず守るようにしましょう。

【関連項目】：『イソフラボン』

●アマニ油

癌細胞の成長を抑える脂肪酸が豊富

乳癌の予防・改善に効果があると世界的に注目されているのが「アマニ油」。これはアマニという草から採れるゴマに似た種子を絞った油で、昔は日本でも食用にしていましたが、しだいに安価な大豆油などに取って代わられました。大豆油やコーン油に多いリノール酸という脂肪酸は、摂りすぎると癌や動脈硬化を招くことが指摘されています。一方、アマニ油はリノール酸が少なく、代わりに「α-リノレン酸」という脂肪酸を豊富に含むのが特徴です。癌予防の観点で見た場合、リノール酸は、癌細胞に取り込まれるとその成長を促します。その反面、α-リノレン酸は癌細胞の成長を抑えることが、動物実験で明らかになっています。つまり、アマニ油は癌予防に役立つ食品の一つと見ていいでしょう。すでに米国癌協会は「癌撲滅のために注目すべき食品」にアマニを収載しています。

◆乳癌の予防効果が数々の研究で判明

アマニ油と癌の発症に関する研究も、相次いで行われています。中でも特に注目されているのが、乳癌を抑える働きです。例えば、乳癌を誘発する化学物質をメスのネズミに投与した後、6週間にわたってさまざまな油を与える試験が行われました。その結果、乳癌細胞の数が最小限に抑えられたのは、アマニ油を投与したネズミだったのです。リノール酸の多いコーン油や菜種油を投与したときは、逆に乳癌細胞が増えたことも確認されています。また、すでに乳癌を発症したラットにアマニ油を7週間与えたところ、癌細胞の大きさが50%以上縮小したという報告もあります。カナダ・トロント大学のトンプソン博士のグループは、乳癌と診断された39人の女性を2つのグループに分け、一方にはアマニ粉末入りのマフィンを、もう一方にはアマニ粉末の入らないマフィンを5週間半、毎日食べてもらいました。その結果、アマニ粉末入りのマフィンを食べたグループの方が、乳癌細胞の増殖が有意に抑えられたと報告しています。

◆アマニ油の摂り方

アマニ油は一日小さじ1杯摂るのが目安です。ただし、加熱調理には使わず、ドレッシングの材料にしたり、食べる直前に味噌汁やスープ、ヨーグルトに加えたりしてください。保存する際は、光の当たらない低温の場所を選びましょう。また、アマニ油の独特のクセが気になる人は、サプリメントを利用するのもいいでしょう。

【関連項目】：『亜麻仁（アマニ）油』