加齢性難聴対策④耳リフト

いつも表情が硬いと耳の筋肉も硬直し、聞こえが悪くなるため、よく笑い耳を引っ張る『耳リフト』を行え。


■表情の衰えが聞こえの悪化も招く

前頁までの記述は、新たに関連性が指摘された加齢性難聴の原因として、動脈硬化と騒音について詳しく述べてきました。 ただ、高齢者の聴力の低下には、他に意外な原因が関わっているケースも少なくありません。 その意外な原因の一つとして挙げられるのが「笑わない」ということです。 笑っているときには、誰でも顔を覆っている表情筋が盛んに活動しますが、その際、耳の筋肉も表情筋と同じように 活発に働いています。これは、裏を返せば、あまり笑わず表情筋と共に耳の筋肉も強張ってしまい、 聞こえるものも聞こえなくなってしまうことを意味します。 耳の筋肉の中でも特に重要なのが、中耳にあるアブミ骨の動きをコントロールするアブミ骨筋です。 アブミ骨は全長3mmほどの小さな骨で、ツチ骨・キヌタ骨と共に鼓膜から入ってきた振動を内耳に伝える役割を担っています。 そして、アブミ骨筋には、アブミ骨筋をコントロールして伝わってきた振動を調節し、音量を適正に変換する役目があります。 つまり、大きい音は抑え、逆に小さい音は増幅させるわけです。 あまり笑わない人は、表情筋と共にこのアブミ骨筋も衰え硬直化してしまいます。 その結果、アブミ骨が正常に働かなくなり、耳が聞こえにくくなるのです。 また、表情筋には耳(耳介)の位置を保つ働きもあり、表情筋が衰えると耳の位置が下がったり耳の変形を招いたりします。 そうなれば、やはり聴力は低下してしまいます。


●耳リフトで聞こえと見た目の老化を防ごう

こうした事態を防ぐには、とにかく普段からよく笑うように心掛けることが重要です。 もっとも、作り笑いではアブミ骨筋をほぐす効果は得られないので要注意です。 アブミ骨筋は私たちの意思とは関係なく働く不随意筋なので、作り笑いでは働きません。 アブミ骨筋がほぐれるのは、おもしろいと感じて心からリラックスして自然に笑うときだけ。 そのためには、普段から面白いものをおもしろいと感じられるように心に余裕を持つことが大切かもしれません。
なお、表情筋の衰えによって耳の位置が下がるのを防ぐには、耳をつまんで上に引っ張る『耳リフト』 が効果的です。耳リフトを行うと、外界と鼓膜をつなぐ外耳道が広がるとともに真っ直ぐになり、 耳の集音機能が高まるのです。実際これだけで6デシベルも聞こえがよくなる人もいます。 1回30~60秒の耳リフトを1日2~5回行えば見た目の老化も防げます。


●耳リフトのやり方

引っ張る耳と反対側の手を頭の後ろから回し、耳の上端をつまんで上に引っ張ります。