耳垢栓塞(耳垢による難聴)
80代以上の2割にある耳垢の詰りは難聴の隠れ原因で、除くだけで聴力が回復する例は多い。
■耳垢の自浄作用が衰え、耳垢が溜まりやすい
高齢者の難聴を悪化させる原因として意外に見過ごされがちなのが、『耳垢栓塞』、 つまり耳垢が溜まり過ぎて耳の穴を防いでいるケースです。 耳に入った音はいわゆる耳の穴である外耳道を通って鼓膜に伝わります。 ところが、耳垢が大きくなって外耳道を塞いでしまうと、音が鼓膜にうまく伝わらなくなるわけです。 耳垢栓塞では、極端な場合には、外耳道に栓をしたように耳垢が詰まることも珍しくありません。 なぜこんなことが起こるのでしょうか。
耳には、外耳道の中の古くなった皮膚などを外へ送り出す自浄能力が備わっており、耳垢が外耳道にたまらないようになっています。 しかし、年を取ると、この自浄能力が低下して、鼓膜周辺の古い皮膚が移動しにくくなります。 その結果、気付かないうちに耳垢が大きくなり、詰まってしまうのです。 60歳以上の耳疾患のない792人を対象に鼓膜ビデオ撮影検査を行った試験では、全体の17.4%に当たる138人に左右どちらかの耳に 耳垢栓塞があり、特に80代の人では、その比率が20%以上に達していました。 聴力については、耳垢栓塞がない人で平均28デシベルだったのに対して、耳垢栓塞がある人では平均32デシベルと、 耳垢栓塞がある人では有意に聴力が低いことがわかったのです。 ちなみにこの検査では、耳垢と認知症の関係についても調べましたが、耳垢栓塞が起こっている人では認知機能が低い傾向にあることも 確認されました。つまり、耳垢栓塞は認知症の発症・悪化の原因になり得ることも示唆されたわけです。
●耳垢栓塞の除去で認知機能までアップ
耳たぶの後ろ側に垢が溜まっている人は、耳垢栓塞ができている可能性が高いと言えます。 耳垢栓塞は、放置すると外耳道真珠腫という外耳道の炎症や骨破壊を招く病気につながる危険もあるので、 見つけたら早急に除去する必要があります。ただ、耳垢栓塞は自力で除去するのは難しいため、必ず耳鼻科を受診して、 医師に対処してもらいましょう。耳垢栓塞を取り除くことで聴力が回復するケースは珍しくありません。
耳垢栓塞に陥らないためには、普段から行う耳掃除も大切です。ただ、耳掃除のやり方を間違えると、耳垢を耳の奥へ奥へと 押し込んでしまい、逆に耳垢栓塞を誘発することがあるので注意が必要です。 耳掃除では、カサカサの人は耳かきを、湿った垢の人は綿棒を使い、耳の入り口から1cm以上は入れないようにしましょう。 2週間に1回の頻度で行ってください。