【質問】間質性肺炎[特発性肺線維症(IPF)]の治療中です
昨年9月、ウォーキング中に息苦しさを感じたので受診したところ、「間質性肺炎による呼吸不全」と診断されました。
家庭用酸素吸入器の使用を勧められましたが、まだ使わずに我慢しています。
外歩きは苦しくて満足にできませんが、家庭内での移動は苦しさを感じません。
軽い咳と粘り気のある白い痰が出ます。食欲がなく、この半年で体重が6kg減りました。
医師には「風邪を引かないように注意し、現状維持以外にない」と言われており、心配です。
●79歳・男性●既往症:急性肺炎、前立腺癌、胃癌、鼠径ヘルニア●使用中の薬:テオロング、カルボシステイン250mgサワイ、
スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入、シムビコート、タービュヘイラー60吸入ほか
【答】
「間質性肺炎」は、肺胞と肺胞の境目である肺の間質が線維化を起こし、体の中への酸素の取り込みが悪化する疾患です。 加齢とも関係する病態で、長年吸い込んだたばこの煙や粉じんなどが肺の細胞を刺激し傷害することにより発症してくると考えられています。 間質性肺炎には、薬剤性のものや膠原病に合併するものなどのほかに、原因が全く特定できない「特発性間質性肺炎」があります。 この特発性間質性肺炎の中で最も患者数が多く、また病気のたどる経過が大変悪いのが「特発性肺線維症(IPF)」です。 ご質問者の年齢を考えると、恐らくIPFと思われます。担当医より酸素吸入を勧められているとのことですが、症状が悪く、基準に合致する場合は、 健康保険が適用される「在宅酸素療法(HOT)」があります。HOTの導入をためらう方もいますが、この治療法を始めたらもう離れられないというようなことはなく、 眼鏡と同じで、大変便利なものです。必要がある状態なら、ぜひ使うことをお勧めします。 酸素を吸いながら歩行できますし、歩くことで食欲も増して全身的な状態の改善も見込めます。
IPFの治療に関しては、つい最近まではよい薬もなく、仕方なくステロイドや免疫抑制薬を使うのみでした。 しかし、近年この分野は大きな進歩が得られており、抗酸化薬のN-アセチルシステイン吸入や、 日本が開発した世界初の抗線維化薬ビルフェドニンといった薬が使える時代になっています。 特にビルフェドニンは、「光線過敏症」や胃腸障害といった副作用もありますが、難病で打つ手のなかったIPFの患者さんにとって大きな朗報となる薬で、 今やヨーロッパにおいても広く使われており、効果が得られた患者さんでは、症状のある程度の改善や呼吸機能維持も見られています。 また、IPFの患者さんは、冬季などに、風邪をきっかけに急に悪化し、重症化することもよくあります。 風邪予防のためにも、なお、この特発性間質性肺炎の診断と治療は難しい面が多いため、ぜひ一度、 こういった疾患を数多く治療している病院にて呼吸器専門の医師の診察を受けることをお勧めします。
(この答えは、2014年9月現在のものです。医療は日々進歩しているので、後日変わることもあるのでご了承ください。)