【質問】慢性甲状腺炎と診断されました
7ヵ月ほど前に『慢性甲状腺炎』と診断されました。
甲状腺は働いているので、経過観察中です。ただ、時折、強烈な疲労感や眠気を生じることがあります。
以前は感じることはなかったのですが、これは慢性甲状腺炎の症状でしょうか。
●43歳・女性
【答】
「慢性甲状腺炎」は、「橋本病」とも呼ばれ、
成人女性ではおよそ10人に1人の高い頻度で見つかる病気です。
男性は女性よりもかかりにくく40~100人に1人の頻度で見つかります。
また、成人だけでなく、子供から高齢者まで幅広い年齢で見られます。
甲状腺は”のどぼとけ”の下あたりにある重さ10~20gの小さな臓器で、その働きは甲状腺ホルモンを血液中に分泌することです。
甲状腺ホルモンは全身の臓器や細胞に届けられ、新陳代謝を促し、生命を維持するのに必要なエネルギーを作ります。
女性ホルモンと異なり、生まれる前の胎児のときから生涯にわたって分泌され続けます。
慢性甲状腺炎は甲状腺に痛みを伴わない慢性的な炎症を起こす病気です。
炎症の結果として甲状腺が腫れ、進行すると甲状腺ホルモンを分泌する働きが低下します。
原因は「自己免疫」と呼ばれる免疫異常です。
免疫細胞が自分の甲状腺を異物と間違って攻撃してしまうために炎症が起こります。
甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、全身の新陳代謝が低下し、エネルギー不足になるため、疲労感や眠気、寒がり、便秘、皮膚のカサつき、
物忘れ、むくみ、体重増加などの「甲状腺機能低下症」
の症状が現れます。
ただ、炎症が軽い段階では甲状腺の働きは保たれているため、甲状腺ホルモンの分泌は低下しません。
したがって、このような時期には甲状腺機能低下症の症状は現れません。
また、病気が進行して甲状腺ホルモンの分泌がいったん低下すると、数日単位で正常に戻ることはなく、毎日同じような症状が続きます。
ご質問者の場合、甲状腺は働いている、つまり、甲状腺ホルモンの分泌は保たれているということですので、
疲労感や眠気の原因が慢性甲状腺炎である可能性は低いということになります。
甲状腺の働きが保たれている時期でも、慢性甲状腺炎の原因である自己免疫が倦怠感や気分の落ち込みを引き起こしている可能性があるとする研究報告も
一部にはありますが、数万人を調べた研究では否定されています。
前回の検査から数ヵ月経っている場合は、甲状腺の働きが低下してきている可能性もありますので、再検査を受けることをお勧めします。
また、疲労感や眠気の原因となる病気には、甲状腺の病気以外に睡眠障害や
睡眠時無呼吸症候群などもあります。
症状が続く場合は担当の医師に相談して、甲状腺以外の視点から原因を探っていただくことも必要だと思います。
(この答えは、2018年5月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)