【質問】尿意と便意が常にあります

椎間板ヘルニアで1年間、ブロック注射を受け、痛みは軽減しました。 そのころから立って背筋を伸ばすと、尿意と便意が四六時中、起こります。 トイレで便座に座ると両方ともありませんが、立ち上がると同じ症状が出ます。 インターネットで調べて馬尾神経障害かと思うのですが、整形外科では「馬尾の損傷は治らない」と言われました。 何か良い治療法はありませんか。
●53歳・男性
糖尿病の治療中


【答】

背骨の骨と骨の間には、クッションの役割をする椎間板という軟骨があります。椎間板の後ろには神経が通っています。 腰の部分を通る神経の束は馬尾と呼ばれ、椎間板のところで左右に枝分かれして(この部分を神経根と呼びます)、脚のほうに向かいます。 椎間板が傷んで内部の組織が後方に飛び出し、 神経を圧迫した状態が椎間板ヘルニアです。 腰痛や坐骨神経痛(脚の痛みや痺れ)、ときに脚の筋力低下を生じます。 通常、ヘルニアは左右どちらかに偏って飛び出すので、片側の神経根が圧迫され、圧迫された側に症状を来しますが、 稀に正中(真ん中)に大きく飛び出して、馬尾を強く圧迫することがあります。 この場合は、脚の両側の強い痛みや痺れに加えて、尿漏れや排尿・排便困難などの馬尾症状を生じることがあります。 椎間板ヘルニアの多くは、鎮痛剤の内服、神経ブロック、運動療法などの保存療法で改善します。 保存療法の効果がない場合は、内視鏡や顕微鏡などを用いたヘルニアの摘出手術や、最近では椎間板溶解術という椎間板を溶かす酵素の注射が行われることもあります。 ただし、馬尾症状を来した場合は、下肢の麻痺や排尿障害などが残らないように、 早期に手術を行うのが望ましいとされます。

ご質問者の症状が椎間板ヘルニアによる馬尾症状かどうかを断定することは困難です。 前述のように、馬尾症状を来した椎間板ヘルニアの場合は、急いで手術が行われるからです。 ただ、ご質問者は、椎間板ヘルニアの症状が1年間ほど続いていることから、長期間の圧迫によって馬尾が徐々に障害された可能性も完全には否定できません。 また、尿意や便意の異常は、糖尿病による自律神経障害や精神的な要因などから生じることもあります。 まずは泌尿器科を受診して、原因を詳細に調べてもらうのがよいと思います。 原因によっては適切な薬物治療などで症状が軽快する可能性もあると思います。

(この答えは、2019年11月現在のものです。医療は日々進歩しているため、後日変わることもあるのでご了承ください。)