腎臓病の透析治療
腎臓の働きがかなり低下した場合、何らかの方法で腎臓の働きの”肩代わり”をする必要があります。 『透析治療』はその方法の一つです。
■腎臓の働きを”肩代わり”する3つの治療法
慢性腎臓病が進行すると腎臓の働きが失われ、 体に様々な異常(貧血、骨やミネラルの異常、高カリウム血症、体が酸性に傾く、全身のだるさ、食欲不振、 頭痛、吐き気、手足のむくみ、動悸・息切れ)が起こってきます。 このような状態になったら、腎臓の働きを何らかの方法で肩代わりする治療が必要です。 そのための治療法を「腎代替療法」といいます。 腎代替療法には現在(2021年4月)、血液透析、腹膜透析、腎臓移植という3つの方法があります。 日本で透析治療を受けている人は34万人ほどいますが、その多くは血液透析です。 腹膜透析を受けている人はおよそ1万人(3%弱)で、腎臓移植は年間2000件ほど行われています。 腹膜透析と腎臓移植は、最近、少しずつ増えています。 これらの治療に関して、日本の医療水準は世界の中でもトップレベルにあります。 どの方法を選んでも、安心して治療を受けることができるといえるでしょう。
●医療機関でうける「血液透析」
腕などの血管から体外に取り出した血液を「ダイアライザー」という装置に通すことで濾過する方法です。 医療機関で行われ、1回の治療に4~5時間かかります。 これを週に3回受けるのが一般的で、そのため、患者さんの日常生活や仕事に制限が多くなります。
●自宅でできる「腹膜透析」
腹膜とは、お腹の内側の壁や内臓の表面を覆っている膜です。
透析液を腹膜の内側の空間である腹腔に注入し、腹膜を通して血液を濾過するのが腹膜透析です。
透析液の交換は自分に行うことができ、清潔な場所であれば自宅でも職場などでも可能です。
1回にかかる時間は30分ほどで、1日に2~4回ほど行います。
「朝の出勤前」「昼休みに職場で」「帰宅してすぐ」「就寝前」などで交換するのが一般的です。
受診は月に1~2回で済むため、仕事や家事と両立しやすく、旅行やスポーツを楽しむこともできます。
血液透析と異なり、自分の腎臓がこれまで通りに使われます。
そのため、残っている腎臓の働きが比較的長く維持されやすいという長所があります。
血液透析では血液が体外に出て短時間で濾過され、体内に戻されますが、腹膜透析では血液がゆっくり濾過されます。
また、血液の一部を体の外へ取り出す必要がなく、心臓への負担が少なくて済みます。
注意すべき点は、腹部のカテーテルからの感染です。
また、体内に水分が溜まり過ぎると水分を十分に取り除けないことがあるので、その場合には、週1回程度の血液透析を組み合わせたりします。
腹膜透析は、行っているうちに徐々に腹膜の状態が変化していくため、多くの場合いずれ血液透析への移行が必要になります。
かつては腹膜透析を行えるのは5~8年ほどでしたが、透析の改良により、より長期間の継続が可能になってきています。
●健康な腎臓と置き換える「腎臓移植」
腎臓移植には、親族などから提供を受ける「生体肝移植」と、亡くなった方から移植を受ける「献腎移植」があります。
腎臓移植は、腎臓以外の心身の状態がよければ行うことが可能です。
心臓や肺が全身麻酔に耐えられることに加え、癌、全身の感染症、肝臓病などがないか、それらの治療を終えていることが条件です。
年齢制限はありませんが、70歳以上の場合は慎重な対応が必要になります。
すでに透析治療を行っている人でも受けられますが、最近は透析治療を始める前に腎臓移植を選ぶケースが増えています。
腎臓移植は、慢性腎臓病を根治できる唯一の治療法です。
移植した腎臓は、ほとんどの場合正常に機能するので、健康な人と変わらない生活が可能になります。
ただし、移植後は免疫抑制剤をずっと服用することになり、免疫の働きが低下するので、感染症には注意が必要です。