腎臓病の食事療法

楽しく食べて治す工夫

腎臓病があると、”食べることを楽しめない”と思っていませんか?
工夫次第で、充実した食事を楽しめます。


■食事療法の基本

腎臓に負担をかけない食事で腎機能の低下を遅らせる

腎臓病がある場合、「腎機能を保つ・低下を遅らせる」ことが治療の基本となります。 食事については、腎臓に負担をかけないことが大切です。 ただし、腎臓病は、原因となる病気も進行の仕方も、個々の患者さんによって実に様々です。 食事について考える際も、以下に紹介する3つの基本を押さえつつ、一人一人の患者さんの状況に応じた対策を探していきます。

①タンパク質を摂り過ぎない

食事から摂ったタンパク質は、腎臓で処理され、不要なものは老廃物として尿の中に排泄されます。 タンパク質を摂り過ぎると老廃物が増えるため、腎臓病のある人では、腎臓に負担がかかります。 そのため、日々の食事でタンパク質を摂り過ぎないことが重要です。 腎臓病のある人の1日のタンパク質の摂取量は、その進行具合によって異なりますが、 「標準体重1kg当たり0.6~1.0g」が推奨されています。 身長165cmの人なら、標準体重は約60kgなので、1日のタンパク質の推奨される摂取量は36g~69gになります。 健康な人の一般的な食事では、1日に60~80gのタンパク質を摂っているとされています。 これに比べると、物足りなく感じるでしょう。しかし、タンパク質の少ない食材を増やすなどの工夫で、 満足感のあるしっかりとした食事を摂ることは可能です。

タンパク質の制限を”緩める”ケースも

若い年代の患者さんの場合は、腎機能の低下を抑え、将来的に透析治療に至らないようにしたり、遅らせたりするために、 多くの場合、タンパク質をしっかり制限します。 しかし、高齢や小児の患者さんの場合は、その制限を緩めるケースもあります。 十分なエネルギー量を摂れずに、タンパク質の摂取量を減らすと、筋肉量が減少しやすくなります。 特に、筋肉量が減少しがちな高齢者の患者さんでは、さらに筋肉が減ると、寝たきりに繋がる可能性があります。 そのため、サルコペニアと診断されているなどの場合は、年齢や腎機能の状態などを考慮して、タンパク質の制限を緩めることがあります。 小児の患者さんの場合は、体の成長を防げないために、制限を緩めます。 また、早期の腎臓病で腎機能が低下していない場合は、年齢にかかわらず、過剰にタンパク質を摂らないように注意するとされています。

②エネルギー量はしっかりとる

タンパク質を制限した上に、摂取エネルギーの全体量が不足すると、体は筋肉を分解してエネルギーに変えてしまいます。 そのため、筋肉量を維持するには、活動量に合わせてエネルギー量をしっかりとる必要があります。 タンパク質を減らした分のエネルギー量は、タンパク質と並ぶ三大栄養素である「炭水化物」と「脂質」で補います。 炭水化物は米やパン、麺類、イモ、果物、砂糖などに、脂質は油などに多く含まれています。 これらの食品を意識的に増やして、摂取エネルギー量を維持しましょう。 糖尿病肥満がある場合は、 炭水化物や脂質の摂り方について、担当医や腎臓の専門医、管理栄養士と相談して、自分に合った方法で行いましょう。

●食塩は控えめに

腎臓には、体内の余分な塩分を排泄する働きがあります。 腎臓病のある人が食塩を多く摂ると、うまく排泄できず、体に溜まりやすくなって血圧が上がり、腎臓にさらに負担がかかってしまいます。 食塩は、1日3~6gを目標にします。 ただし、一気に6g未満という目標を達成しようとすると、難しいことも多いと思います。 「まずは1日当たり1g減らす」ことから始めて、それを続けることで最終的に6g未満にするという方法もよいでしょう。 また、医療機関によっては、定期的に尿検査を行い、患者さんの尿から食塩の摂取量を推測することで、 個々の患者さんに応じた食塩制限のアドバイスを行っている場合もあります。


腎臓病の食材選びと調理のコツ