肺癌の治療『薬物療法』
抗癌剤は、「従来の抗癌剤」と「分子標的薬」の大きく2つに分けられ、 肺癌のタイプや遺伝子変異の有無などによって、抗癌剤が選択されます。 「小細胞肺癌」と「非小細胞肺癌」とでは、治療方針が異なります。 小細胞肺癌の場合は、薬物療法が中心となります。 非小細胞肺癌の場合、薬物療法を行うかどうかは、病気の進行度を表す「病期(ステージ)」に加えて、 患者の体力や年齢、肝臓や腎臓、心臓などの機能が保たれているか、合併症の有無などによって決められます。 「非小細胞肺癌」の薬物療法では、手術後の「抗癌剤」の使用や、 癌だけを狙って作用する「分子標的治療薬」を使うなど、新しい治療法が出てきています。 特に「分子標的治療薬」では、効き目の現れやすいタイプの人がいることがわかりました。 さらに、今後どのように生活していきたいかということなどを担当医とよく話し合いながら、治療方針を決めていきます。
■肺癌の抗癌剤
早期癌の再発予防や、進行癌の治療に用いられる
日本では、1年間に約10万人が『肺癌』を発症しています。 肺癌の治療では、「手術」や「放射線療法」とともに、「抗癌剤」を使った「薬物療法」が行われます。 抗癌剤は、癌細胞の増殖を抑えて、癌を小さくする目的で使用されますが、従来の抗癌剤は副作用が強く、 期待した治療効果が得られない場合も多くありました。 しかし、現在では、効果が十分に得られるようになっています。肺癌が足の骨に転移して歩行できなかった患者さんが、 歩いて通院できるまでに改善した例もあります。 抗癌剤は、通院もしくは入院して静脈で投与されるほか、内服薬として服用します。 肺癌の薬物療法には、手術や放射線療法と組み合わせることで治療効果を高めて、癌を根治させたり、延命を図るなど、さまざまな目的があります。 ただ、抗癌剤は、よく効く患者さんがいる一方、なかなか効果が見られない患者さんもいます。 効果的な治療のためには、患者さんの状態や肺癌のタイプに合った抗癌剤の選択が必要です。
●抗癌剤の効果とは?
肺癌の治療法は、「手術」「放射線療法」「抗癌剤治療」に大別されます。 癌が肺の中に止まっている早期癌の場合は、手術や放射線療法による治療が中心となり、抗癌剤治療は再発予防のために加えられます。 この場合は、肺癌の根治が治療目標です。肺癌が進行して、脳や肝臓、副腎、骨といったほかの臓器に転移している場合は、 抗癌剤治療が中心となります。この場合は、現在のところ根治を目指すことは困難であるため、癌の進行を遅らせて 生活の質を保つことが治療の目的となります。しかし、抗癌剤の進歩により、数年にわたって治療効果が得られるようになって きています。
■肺癌の薬物療法
肺癌の治療では、「手術」や「放射線療法」とともに、「抗癌剤」を使った「薬物療法」が行われます。 抗癌剤は、癌細胞の増殖を抑えて、癌を小さくする目的で使用されます。 抗癌剤は、通院もしくは入院して静脈で投与されるほか、内服薬として服用します。 肺癌の薬物療法には、手術や放射線療法と組み合わせることで治療効果を高めて、癌を根治させたり、 延命を図るなど、さまざまな目的があります。
病期などを考慮して薬物療法の方針を決める
「小細胞肺癌」と「非小細胞肺癌」とでは、治療方針が異なります。 小細胞肺癌の場合は、薬物療法が中心となります。 非小細胞肺癌の場合、薬物療法を行うかどうかは、病気の進行度を表す「病期(ステージ)」に加えて、 患者の体力や年齢、肝臓や腎臓、心臓などの機能が保たれているか、合併症の有無などによって決められます。 さらに、今後どのように生活していきたいかということなどを担当医とよく話し合いながら、治療方針を決めていきます。
■抗癌剤のタイプ
大きく2つに分けられ、作用の仕組みが異なる
肺癌の治療に用いられる抗癌剤は、大きく次の2つに分けられます。
- ▼従来の抗癌剤
- 「殺細胞性抗癌剤」とも呼ばれ、増殖しているすべての細胞に対して作用します。 癌細胞にとどまらず、周りの正常な細胞にも作用が及ぶため、さまざまな副作用も現れます。
- ▼分子標的薬
- 近年注目されている抗癌剤です。癌細胞には特徴的な分子の異常があり、分子標的薬はその異常に対して作用するため、 癌細胞だけを狙い撃ちすることができます。大きな効果が期待できますが、正常な細胞にも多少作用するため、 副作用が全くないわけではありません。
最近は、遺伝子レベルでの分子標的薬の研究が進歩し、治療前に薬の効果の有無がわかるようになってきました。 それにより、個々の患者さんに合わせて治療をする「個別化治療」が進んでいます。
■抗癌剤選択のポイント
年齢や癌のタイプなどから、患者さんに合った薬を選ぶ
ある程度進行した肺癌の治療では、まず、患者さんが抗癌剤による治療に耐えられるかどうかが重要なポイントになります。 それを調べるための要素となるのが、「年齢」「体力」「持病の有無」「肝臓や腎臓の状態」などです。 年齢は、75歳前後までが一つの目安になります。体力は、少なくとも軽い労働ができる程度が必要と考えられ、 ふだんの生活がどの程度できているかを目安とします。ただ、年齢や体力が目安を満たしていても、 持病の内容や程度によっては、治療が難しい場合もあります。肝臓や腎臓の状態に関しては、機能が正常であれば、 特に問題はありません。
●肺癌のタイプも薬の選択に関わる
肺癌は、「非扁平上皮癌」「扁平上皮癌」「小細胞肺癌」に大別され、非扁平上皮癌はさらに 「腺癌」と「大細胞癌」に分けられます。非扁平上皮癌は喫煙者に多く、腺癌は肺癌全体の約50%、 大細胞癌は約5%を占めています。扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙者に多く、扁平上皮癌が全体の30%、小細胞肺癌は約15%を占めます。 こうした肺癌のタイプによっても、抗癌剤の選択は異なります。
●小細胞肺癌の薬物療法
肺癌全体の約15%を占める小細胞肺癌は、進行が非常に早く、根治が難しい癌です。 そのため、基本的には癌が見つかった段階で、すでにリンパ節や他の臓器などに転移があると考えて、 手術は行わず、最初から抗癌剤を使用します。また、小細胞肺癌には、抗癌剤がよく効くといわれています。 小細胞肺癌は、進行の程度によって、「限局型」と「進展型」に分類されます。 限局型は、全ての癌が放射線の照射可能な範囲内にとどまっている場合で、進展型は、癌がそれ以上に広がっている場合です。 一般的に、限局型は抗癌剤による薬物療法と放射線療法を組み合わせて行い、進展型は抗癌剤による薬物療法のみが行われます。