肺癌
癌のなかでも肺癌は早期発見が大切です。
近年『肺癌』は、胃癌を抜いて、日本の癌死亡率の第1位となりました。 肺癌は脳や骨に転移しやすく、発見が遅れると予後の悪い病気です。 肺癌になる人は世界的に増加傾向にあります。 肺癌は50歳以上に多く発生し、男女の比は約3:1です。 1999年の肺癌による年間死亡者数は、約5万2千人であり、(癌で亡くなった方の総数は約29万人、うち胃癌約5万人)、 1993年からは、肺癌は男性の癌死亡率の第1位となり、女性では胃癌に次いで第2位となっています。 肺癌の5年生存率(治療開始から5年間生存している割合)は25~30%といわれています。 しかし、最近では、早期のうちに治療を始めれば、治すことが可能になってきています。 ただし、早期の段階では自覚症状がほとんどないため、定期的に検査を受けることが大切です。
■肺癌と喫煙
肺癌については、現在様々な研究が進められ、その大きな要因として喫煙が挙げられています。 一般に「重喫煙者(1日の本数×喫煙年数=喫煙指数が600以上の人)」は、肺癌の「高危険群」といわれています。 わが国における男性の喫煙率は約55%と先進国ではトップですし、女性の喫煙者も年々増加しており、 また、喫煙は本人だけでなく、その周りにいる人にも影響を及ぼすといわれています。 特に肺の入口にできる肺門型の癌は喫煙と深く関係しています。この癌はレントゲンには写りにくいのですが、 痰の中に癌細胞がこぼれ落ちてくることが多いので、痰の細胞検査で早期に発見することができます。 特に50歳以上の重喫煙者の方は、肺の入口の部分の癌にかかる率が高く、定期的な痰の細胞診を行う必要があります。
【関連項目】:『喫煙と効果的禁煙方法』
■肺癌の種類
肺癌は、癌が発生した場所によって、「中心型」と「末梢型」に分けられる。
日本では、新たに『肺癌』にかかる人が、1年間で6万人を超えており、
その半数以上が進行した状態で見つかっています。
その結果、癌による死亡者数の順位は、男性では肺癌が1位、女性でも3位で、男女を合わせると、
肺癌で死亡する人の数が最も多いのです。しかし最近では肺癌は、早期に見つかれば、
体への負担の少ない治療法を選ぶこともでき、治すことが可能な癌になってきています。
肺癌は、癌が発生した場所によって、「中心型肺癌」と 「末梢型肺癌」に分られます。
- ▼中心型肺癌
- 肺の入り口の気管や、太い気管支にできる癌で、「肺門型肺癌」ともいい、 喫煙者に多く、「咳、痰、血痰」などの症状が見られますが、癌が小さいと、自覚症状がないことがあります。
- ▼末梢型肺癌
- 肺の奥のほうにある細い気管支や、スポンジ状の「肺の実質」にできる癌で、「肺野型肺癌」ともいい、 早期には自覚症状がほとんどありません。なお、肺癌は、組織や性質の違いからは、「小細胞癌」と 「非小細胞肺癌(腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌)」に分類されます。
■中心型肺癌の検査
「喀痰細胞診」と「気管支鏡検査」を行う
中心型肺癌と末梢型肺癌とでは、発生する場所が違うので、検査方法も異なります。 中心型肺癌は「胸部エックス線検査」や「CT検査」を行っても、心臓や横隔膜、太い血管、背骨などに 隠れてしまうため、癌がかなり大きくならないと写りません。中心型肺癌は気管や太い気管支にできるため、 多くの場合は痰の中に癌細胞が混じるので、中心型肺癌の発見には、まず「喀痰細胞診」が行われます。
●喀痰細胞診
痰を採取し、痰の中に癌細胞が混じっていないかどうかを顕微鏡で調べる検査です。
朝起きた直後にうがいをして、口の中をきれいにしてから、大きくせきをして専用の容器に痰を吐きます。
これを3日間毎朝行って、検査機関に提出します。
喀痰細胞診の結果は、1~2週間でわかり、中心型肺癌であれば、約8割の確率で癌細胞が痰の中に出てきます。
痰の中に癌細胞が混じっていた場合は、癌の場所を特定するために「気管支鏡検査」を行います。
●気管支鏡検査
「気管支鏡」という、直径5mmくらいの専用の内視鏡を気管支の中に送り込んで観察しながら癌の場所を特定します。 1cmほどの癌を発見することも可能です。最近はより精度の高い「蛍光気管支鏡検査」も行われています。
■末梢型肺癌の検査
早期癌を発見するにはCT検査が有効
末梢型肺癌の早期発見には、「エックス線検査」が有効です。 エックス線検査には、胸部エックス線検査とCT検査があります。
●胸部エックス線検査
健康診断などで一般的に行われている検査です。癌があると、その部分が白っぽく写し出されます。 2cm以上の末梢型肺癌であれば、多くの場合は見つけられるのですが、 癌の発生した場所によっては写らないこともあります。
●CT検査
肺癌をより早期に、小さな状態で見つけるためには、「CT検査」が有効です。
この検査では「管球」と呼ばれる、エックス線を照射する装置が体の周りを回転し、肺を輪切り状に撮影します。
従来は1枚づつ位置を変えて撮っていたため、撮影に10分くらいかかりましたが、最近普及して来ている
「ヘリカルCT」や「マルチスライスCT」は、螺旋状に連続撮影するため、
息を止めてから約10秒で終了します。
立体的な画像が得られるので、5mmや3mmの癌や癌になる前の状態の病変まで見つけることができ、
このような非常に小さな病変の中には、淡いすりガラスのように見える状態で見つかることもあります。
ただし、”すりガラス状”の病変は肺癌に限らず、肺炎などでも見られることがあり、自然に消えることもあるので、
すりガラス状の病変が見つかった場合は、すぐに精密検査や手術を行わず、2~3ヶ月後に
再度CT検査を行い、経過を観察します。病変が少しでも大きくなっていれば、癌の可能性があると考え、
CT検査で観察しながら組織を採取して、癌かどうかを調べたり、体への負担が少ない手術を行ったりします。
■肺癌の早期発見のために
50歳以上の人は、年に1回は検査を
「50歳以上の男性」「1日の喫煙本数×喫煙年数が400以上」「咳や痰が2週間以上続く」「血痰がでる」 といった項目に1つでも該当する人は、肺癌発症の危険性が高い「肺癌ハイリスク群」です。 肺癌ハイリスク群の人は、早期発見のために、喀痰細胞診を年2回、エックス線検査を年1回は受けましょう。 エックス線検査では、できるだけCT検査を受けることをお勧めします。 なお、咳や痰が2週間以上続いたり、血痰が出る場合は、肺癌の可能性があるので、早く受診して喀痰細胞診や 気管支鏡検査などを受ける必要があります。
肺癌は、50歳以上の人に多い癌です。たとえ肺癌ハイリスク群に該当しなくても、50歳になれば、 肺癌の早期発見に積極的に取り組むことが大切です。そのため、少なくとも年に1回は、喀痰細胞診と エックス線検査の両方を受けましょう。 健康診断や自治体の検診などでは、一般的に胸部エックス線検査と喀痰細胞診が行われています。 喀痰細胞診は、オプションになっていることもあるので、その場合は積極的に申し込みましょう。
【蛍光気管支鏡検査】
正常な組織には、ある特定の光に反応して光る「自家蛍光」という性質があります。
癌ができると、その性質が失われて自家蛍光が起きなくなります。この性質を利用して、
中心型肺癌の場所を特定するのが「蛍光気管支鏡検査」です。
蛍光気管支鏡検査では、自家蛍光を促す特定の波長の光を当てると、
正常な組織は淡い緑色に光り、癌組織は黒っぽく見えます。
通常の気管支鏡検査では見つけにくい癌でも、蛍光気管支鏡検査では、場所の特定がしやすくなり、
より早期の肺癌を見つけることが可能になります。また、癌の広がりも調べることができます。