肺炎
『肺炎』は、誰でもかかる可能性がありますが、お年寄りや慢性的な病気がある人などは、特にかかりやすいといわれています。 肺炎予防のポイントや初期症状を知り、発症と重症化を防ぎましょう。
■肺炎にかかりやすい人
肺の病気や糖尿病などがある人、お年寄りは要注意
私たちの体には、細菌やウィルスなどの病原体が侵入するのを防ぐ 「免疫」という仕組みが備わっています。 この免疫の働きが弱まったり体力が低下すると、肺炎にかかりやすくなります。 特に次のような人は肺炎にかかりやすいといわれています。
- ▼糖尿病や心臓病、腎臓病、肝臓病、癌などの病気がある人
- 「糖尿病」や「心臓病」、 「腎臓病」、 「肝臓病」、 「癌」など全身的な病気があると、 体力だけでなく免疫の働きも低下して、感染しやすくなってしまいます。
- ▼ステロイド薬や免疫抑制薬などを長期間服用している人
- 「関節リュウマチ」や「膠原病」などで、 これらの薬を長期間服用していると、免疫の働きが低下します。
こうした慢性的な病気や全身的な病気がある人は、健康な状態では発症しないような細菌などでも、肺炎を起こしがちです。
また、いったん肺炎を発症すると、肺炎が重症化しやすいうえに、糖尿病や心臓病などのもともと持っていた病気も悪化しやすいのです。
免疫の働きは、加齢によっても低下します。特に、75歳以上で体力が低下している人は、肺炎に注意が必要です。
また、高齢になると、糖尿病や腎臓病などの全身的な病気を複数持っている人も少なくありません。
病気が軽い場合でも、その数が多い人ほど、肺炎によって全身の状態が悪化し、死亡する確率も高くなります。
●肺炎予防のために
睡眠や栄養を十分にとり、うがいや手洗いを徹底する
- ▼日常的に気をつけること
- 肺炎を防ぐには、まず風邪やインフルエンザにかからないことです。 人ごみをなるべく避け、うがいや手洗いを徹底して、ウィルスの体内への侵入を防ぎましょう。 うがいは水道水で十分です。のどの奥まで洗うように3~4回行なってください。 日頃から体の免疫機能を高めておくことも大切です。 特に、睡眠不足は、体力や免疫の働きを低下させることがわかっています。 十分な睡眠と栄養バランスのよい食事を摂り、規則正しい生活をしましょう。 また、喫煙は肺の防御機能を低下させ、炎症を起こしやすくなります。 肺炎の予防のためにも、禁煙することが大切です。
- ▼肺炎を早期に発見する
- 肺炎を発症すると、「咳が長く続く、息切れがする、色のついた痰が多く出る、高熱が出る」などの症状が現れます。 お年寄りは、高熱などの肺炎の典型的な症状が現れにくいことが多いのですが、「呼吸が荒い」「脈が速い」などが、肺炎のサインになります。 これらの症状が見られたら、早めの受診が大切です。重症になると「意識障害や髄膜炎」などが現れることもあります。 しかし、中にはワクチンの接種によって、重症化や死亡の危険性を減らせる肺炎もあります。
■肺炎球菌ワクチンの効果
インフルエンザワクチンと併せて接種すると効果的
肺炎の原因となる病原体で最も多いのが、「肺炎球菌」です。 慢性的な病気のある人やお年寄りが肺炎球菌による肺炎にかかると、重症化して亡くなることも少なくありません。 肺炎球菌による肺炎を防ぐ方法の1つが、「肺炎球菌ワクチン」の接種です。 病原菌が体内に入ると、免疫の働きによってその病原体に合わせた「抗体」という物質がつくられます。 抗体は、再び病原菌が体内に入ってきたときに、免疫の働きによってそれを撃退・排除するために必要なものです。 肺炎球菌ワクチンは、肺炎を起こす可能性のある23種類の肺炎球菌に対して抗体を作ることができます。 最近の調査では、肺炎球菌ワクチンの接種により、特に重症化しやすい肺炎球菌による肺炎の死亡率が 減少することがわかっています。 また、抗菌薬が効きにくい肺炎球菌の肺炎が増えていますが、これを予防する効果もあります。
●インフルエンザワクチンも接種する
肺炎を防ぐには、引き金となる風邪やインフルエンザにならないことも大切です。 予防のためには、インフルエンザワクチンを接種することをお勧めします。 アメリカで行なわれた調査では、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンを接種した方が、 インフルエンザワクチンだけを接種した場合よりも、肺炎での死亡率が低いという結果が得られています。
●ワクチン接種の際の注意
お年寄りや持病のある人は医師と相談して接種する
慢性的な病気があり、肺炎にかかると重症化しやすい人や、お年寄りなどでは、肺炎球菌ワクチンの接種が勧められます。 肺炎球菌ワクチンの接種は、日本では一生に1回しか認められていませんが、一度接種すると、約5年間は有効です。 受ける時機は、医師と相談するとよいでしょう。
●費用を一部負担する自治体も増えている
肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザワクチンほど知られていませんが、接種者の数は年々増えつつあります。 ワクチン接種には、健康保険が適用されず、費用は全額自己負担となります。 しかし、ワクチン接種が医療費の削減につながることから、最近では費用の一部を助成する自治体も増えています。 肺炎球菌ワクチンの接種を考えている人は、自治体や地域の保健所などに、問い合わせてみるとよいでしょう。
■その他
- ▼冬はウィルスや細菌にとって最適の環境
- 気温が低く、空気が乾燥する冬は、ウィルスや細菌に感染しやすい季節です。 鼻やのどの粘膜が乾燥して、傷つきやすくなっているためです。 免疫機能が低下した体で、窓を閉め切った部屋にこもっていると、部屋の中にウィルスや細菌が蔓延して、感染症にかかりやすくなってしまいます。 冬は、体を冷やさないようにし、加湿器などで室内の湿度を保って、定期的に窓を開けて換気をしましょう。 帰宅したら、手洗いやうがいをすることも重要です。
- ▼お年寄りに多い誤嚥性肺炎
- 年をとると、噛む力や飲み込む力が弱くなり、食べ物や唾液などが誤って気管に入りやすくなります(誤嚥)。 また、吐き出す力も弱くなっているため、排出するのも難しくなります。 睡眠中、気付かないうちに唾液が誤って気管に入ることもあります。 このようなことが多いと、口の中のさまざまな細菌が肺に入り、肺炎を起こしてしまいます。 これが「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は、寝たきりの人や栄養状態の悪い人によくみられます。 誤嚥性肺炎の予防には、歯磨きやうがいなどで口の中を清潔にし、細菌を減らすことが大切です。 また、誤嚥を防ぐためには、食事のときは上半身を起こしましょう。 食べ物や飲み物にとろみをつけるなど、飲み込みやすくする工夫をするのもよいでしょう。