関節リウマチ

関節は、関節包という袋のようなもので包まれており、関節包の内側には、滑膜という薄い膜があります。 関節リウマチは、この滑膜に慢性的な炎症が起こ炎症が起こり、腫れや痛みなどが生じる病気です。 免疫の働きは、 本来、体に侵入した細菌やウィルスなどの異物を排除して、体を守るための仕組みです。 しかし、何らかの理由で、自らの正常な細胞や組織を異物とみなし、それを排除するために攻撃し、病気(自己免疫疾患)を引き起こすことがあります。 「関節リウマチ」は、この免疫疾患の一つです。 多くは、手や足の指のような小さな関節から始まり、肩、肘、膝、あるいは股関節のような大きな関節に進みますが、大きな関節から起こる場合もあります。 関節リウマチの発症は、30~50歳代で最も多く、女性に圧倒的に多いのが特徴です。 特に、妊娠や更年期をきっかけに発症することが多いので、女性ホルモンが関わっていると考えられています。 また、家族や親戚に関節リウマチや膠原病(自己免疫疾患の一種)のある人がいる場合、関節リウマチを発症しやすいことがわかっています。

従来、関節リウマチの進行を抑えるのは難しいとされていましたが、近年、治療法は大きく進歩しました。 早期から治療を始めれば、症状の進行を抑えられるようになってきています。 症状が落ち着いて安定した状態を寛解といい、発症前とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。 寛解を達成するには、できるだけ早く発見し、治療を始めることが大切です。

現在(2017年)、全国で、関節リウマチの「患者調査」が大規模に行われており、日本の患者数は、70~80万人と推計されています。 病気の実績を細かく把握し、実際の治療などに還元されていくことが期待されています。


■関節リウマチとは?

関節リウマチとは、免疫の異常によって、関節に炎症・破壊が起こる病気

『関節リウマチ』とは、免疫の異常によって全身の関節に炎症が起こり、痛みや腫れ、こわばりが引き起こされ、 次第に関節や骨が壊れて変形していく病気です。 関節リウマチは、本来は病原体などから体を守るための免疫機構が、 誤って自分の体を攻撃してしまうために起こる「自己免疫疾患」の一つです。

関節は、「骨」「関節軟骨」「滑膜」「関節包」などで構成されています。 関節軟骨は骨と骨の間にあり、骨同士が直接ぶつからないよう、クッションの役割をしています。 骨と骨のつなぎ目である関節は、関節包という袋のようなもので包まれており、関節包の内側には、「滑膜」という薄い膜があります。 滑膜は、関節を滑らかに動かすための”潤滑油”となる「関節液」を分泌して、関節の動きをスムーズにしたり、関節に栄養を供給したりしています。 関節リウマチは、この滑膜に炎症が起こり、滑膜が増殖する病気です。 炎症が続くと、増殖した滑膜が関節軟骨や骨に入り込み、関節を破壊していきます。 関節軟骨が完全になくなると、骨と骨が直接ぶつかるようになるため、関節を曲げるのが困難になり、痛みも強くなります

関節リウマチでは、この「滑膜」という部分が攻撃の対象となり、滑膜に慢性的な炎症が起こります。 滑膜の炎症の原因は、免疫の”誤作動”です。本来、免疫は自分の体を守るために働く仕組みですが、自分の滑膜を”敵”とみなして攻撃してしまうのです。 なぜ免疫の誤作動が起こるのか、詳しい仕組みはわかっていません。 遺伝的な要因を背景に、妊娠や出産、怪我、手術、感染症などの外的要因が加わることで、誤作動を起こすのではないかと考えられています。 免疫が誤作動を起こすと、滑膜細胞と免疫細胞が活性化し、関節に炎症が起こります。 すると、関節の腫れや痛みが生じ、さらに炎症が進むと、骨や靭帯などが破壊されます。 その結果、関節の変形を引き起こし、日常生活に大きな支障を来します。 初期のうちは「関節の痛みと腫れ」が主な症状ですが、進行するにつれ、関節を構成する骨と軟骨が壊れて変形が起こり、日常生活に支障をきたすようになります。 1~2年で自然に治る場合もありますが、多くは進行性で、治療しないと、徐々に関節が破壊されて変形が進み、 動きが不自由になって、10年で半数が寝たきりになるというデータもあります。

関節リウマチは診断が難しく、以前は初診から診断までに1年以上かかることもありました。 最近は「抗CCP抗体」を調べることで、初診から1ヶ月以内の診断も増えています。 発症の仕組みの研究も進み、診断や治療がより効果的に行われるようになってきています。 従来、関節リウマチの進行を抑えるのは難しいとされていましたが、近年、治療法は大きく進歩しました。 早期から治療を始めれば、症状の進行を抑えられるようになってきています。 症状が落ち着いて安定した状態を寛解といい、発症前とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。 さらに、現在では、全国で患者調査が行われていて、患者さんそれぞれの状態に合ったより良い治療法の確立が目指されています。

関節リウマチは現在、日本にはおよそ70万~80万人の患者がいると推定されており、男性より女性に多く、女性の患者数は男性の約4倍です。 患者の高齢化が進んでいるため、高齢者に多いのですが、発症するのは30~50歳代が多い病気です。 この年代は、育児、家事、仕事など、通常、人生で最も多忙な時期に重なることが多いため、患者や家族の生活への影響は大きくなります。


●免疫の異常とは?

関節リウマチが起こる根本的な原因についてはまだ不明な点が多いのですが、 「免疫」の異常が関与していることがわかっています。 免疫とは、体内に侵入してきたウィルスや細菌などの異物に働きかけ、これらを排除して体を守る、体の仕組みの一つです。 関節リウマチでは、何らかの原因でその免疫の働きに異常が起こり、本来は異物に対して働く「免疫細胞」が、 体の一部である滑膜に対して働いてしまうのです。 その刺激で、炎症を起こす「炎症性サイトカイン」と痛みを起こす「発痛物質」が作られ、滑膜に炎症が起こったり、骨が破壊されたりします。


■症状の進み方

関節に集まった免疫細胞が「滑膜」を攻撃すると、関節に炎症が起こり、腫れや痛みが生じます。 炎症が続くと、骨の代謝を担っている「破骨細胞」が活性化し、本来壊すべき古い骨だけでなく、新しい骨まで壊してしまうため、軟骨や骨の破壊が進みます。 すると、骨の「骨粗鬆症化」が起き、骨の表面に「骨びらん」と呼ばれる小さな傷がつき始めます。 骨びらんが深くなると、軟骨が失われ、骨と骨が直接こすれ合って「亜脱臼」が起きます。 こうなると、関節が変形して、関節における骨の噛み合わせ、筋肉のバランスなどが崩れてきて、その結果、目には見えない程度の関節の変形が始まり、 「物がつかみにくい」「歩行しにくい」「座りにくい」など、日常生活に支障が出ることがあります。 症状は徐々に進行し、やがて骨と骨の間の軟骨がほとんどなくなります。 クッションの役割をする軟骨がないと、関節を動かすたびに骨と骨が直接ぶつかり、曲げ伸ばしが困難になります。 例えば、膝の関節に起こり、痛みが強いと、膝を曲げるのが困難になり、正座などはできなくなります。 さらに、炎症が長引くと軟骨は完全に消滅し、骨と骨が接合して1本のようになったり、逆に離れて不安定になったりします。 この段階になると痛みは多少和らぎますが、関節が破壊されて動かなくなります。


●自覚できる初期症状

関節リウマチの炎症は”火事”に例えられます。火事が燃え広がると、消火が大変になるように、 炎症を放っておくと、どんどん広がり、関節の破壊を抑えることが難しくなっていきます。 最近の研究では、発症してから2年間が、最も軟骨や骨の破壊が進む時期だとわかってきました。 ですから、骨の変化や関節の変形が起こる前に関節リウマチを発見し、治療を開始しなければなりません。 そのためには、次に挙げるようなサインを見逃さないようにします。 関節リウマチの初期症状は漠然としていますが、そのサインを見逃さないことが大切です。

▼朝起きたときに関節がこわばる
朝、目覚めた直後に関節がこわばり「手に力が入らない」「手を握ったり開いたりしにくい」「手が思うように曲げられない」 「体を動かしにくい」など、「朝のこわばり」と呼ばれる症状がみられます。 日常生活では「顔を洗えない」「瓶のふたを開けられない」「洋服のボタンがかけられない」などの支障が起こります。 スポーツをした翌朝などに、朝のこわばりが起きることもありますが、その場合は5分間ほどで治まるのに対して、 関節リウマチの場合は、15分間以上、時には1時間以上も続くのが特徴です。 この朝の関節のこわばりが1時間以上続く場合は、注意が必要です。 滑膜が炎症を起こすと、潤滑油として働く関節液の粘度が低下するなど、関節液の質が低くなります。 しかし、起床して体を動かしていると、質の落ちた関節液でもある程度働くようになるので、時間が経つと症状は和らぎます。 ただし、1日中こわばりの症状が続くこともあります。

▼動作に支障が出る
昼寝や長時間座っていたりして、関節を長時間動かさずにいた後にスムーズに動かせない場合なども、関節リウマチが疑われます。

▼軟らかく、紡錘状に腫れる
指の関節や付け根、手首など複数の関節に腫れや痛みが現れます。 特に手指の第二関節の痛みが強く、左右対称に起こることが多いのも特徴です。 手や足の小さな関節から起こり始め、肘や肩、膝などの大きな関節に広がっていきます。 特徴的なのが関節の腫れ方で、関節が腫れた形が「紡錘(糸巻き)状」に見えるのが特徴です。 触った時の感触は軟らかく、水枕の感覚に例えられる場合があります。

▼痛む
「獣に食いちぎられるよう」「串刺しにされるよう」などという激しい痛みから、「じわじわとした痛み」「ほとんど痛みを感じない」場合まで、 また、「押すと痛い」「動かすと痛い」など、痛みには個人差があります。

▼微熱やだるさが続く
風邪ではないのに、37℃程度の微熱やだるさが続くことがあります。 風邪の場合と異なるのは、「喉の痛み、鼻水、咳」などの症状がなく、2週間以上、微熱やだるさが続くことです。 ただし、この症状は、関節リウマチに特有というわけではありません。

これらの症状が1つでもあれば、できるだけ早く、かかりつけ医に相談することが大切です。 特に朝のこわばり、関節の腫れと痛みがある場合は、要注意です。 問診や血液検査などを受けた結果、関節リウマチが疑われる場合には、かかりつけ医から関節リウマチの専門医の紹介を受け、早めに受診してください。

これらの症状は、すべて炎症によって起こります。炎症が長引くと、症状も重くなるので、治療により、早く炎症を止めることが大切です。 発症後1年ほどの初期の段階では、関節の腫れはあっても、外見上は明らかな変形は見られません。 「エックス線検査」の画像を見ると、骨に傷が付き始めていることが多いのですが、 ただ腫れているだけと放置してしまいがちです。 外見で変形がわかるようになるのは、通常、発症後10年以上経ってからです。 このころには、関節の破壊はかなり進んでいて、「物をつかむ、歩く」などの基本的な動作も困難になってきます。


■発症に影響を及ぼす要因

関節リウマチが起こりやすい人がいる

遺伝的要因と環境的要因があります。遺伝的要因として、特定の型の白血球を持つ人は関節リウマチを起こしやすいと考えられています。 ただし、その条件に当てはまらないのに発症する人もいます。 現在は、遺伝的要因に、環境的要因が加わって発症すると考えられています。 現在日本における関節リウマチの患者さんは70~100万人いるといわれています。 関節リウマチを起こしやすい人には、次のような傾向が見られます。

▼女性
性別を見ると、多くが女性で、女性と男性の比率は4対1という統計もあります。

▼30歳~50歳代
発症年齢は、30歳~50歳代に集中しています。一般にお年寄りの病気だと考えられがちですが、いわゆる壮年の女性に多いといえます。

▼出産後
出産が関節リウマチ発症のきっかけになるケースがよく見られます。 妊娠中は、胎児を異物とみなして排除することのないように、免疫の働きがある程度抑えられています。 出産後、免疫の働きは元の状態に戻りますが、その際に、免疫の働きが過剰になり過ぎて、 関節リウマチの発症につながることがあると考えられています。

▼怪我や感染症
怪我をしたり、「風邪」「気管支炎」 「膀胱炎」 「歯周病」などの感染症を起こすと、免疫の働きが活性化しやすく、 これらが発症のきっかけになることがあります。

▼精神的ストレス
精神的ストレスが大きいと、ホルモンのバランスが乱れたり、自律神経の働きが影響を受けたりして、 免疫の働きが活性化され、関節リウマチが発症するきっかけになる場合があります。

■関節リウマチの検査と診断

●関節リウマチの主な検査

まず血液検査、画像検査を行う

関節リウマチの治療は、最近、目覚ましく進歩し、炎症を止めて症状を抑えるだけでなく、 関節破壊の進行を止めたり、日常生活をほぼ正常に保つ「寛解」というレベルまで目指せるようになってきています。 関節リウマチが疑われる場合、まずは問診で症状や家族歴が確認されます。 また、「触診」で、関節の腫れや熱っぽさがないかどうかが調べられます。 続いて行われるのが、「血液検査」「画像検査」です。 血液検査では、CRPや赤沈(血沈)などから、体内の炎症の有無やその程度がチェックされます。 また、関節リウマチの発症時に多く現れるリウマトイド因子(RF)の有無も調べられます。 診断に当たっては、腫れや痛みなどの症状や、「血液検査」「画像検査」などから総合的に、医師が判断します。


◆血液検査

血液検査には、「自己抗体検査」「炎症反応検査」があります。

▼自己抗体検査
「リウマトイド因子」「抗CCP抗体」などの自己抗体を調べます。 どちらも体内にあるかどうか、ある場合にはその量を調べます。 リウマトイド因子は、リウマチ以外の病気でも陽性になることがあるので、陽性でも診断が確定しない場合や、 陰性でも疑わしい場合には、「抗CCP抗体」を調べます。この2つの検査で、関節リウマチの約7割が見つかります。

▼炎症反応検査
体内に炎症が起こっているかどうか、起こっている場合には、その強さを調べます。 検査には、「赤沈」「CRP(C反応性たんぱく)」「MMP・3」があります。

▼画像検査
エックス線による画像検査で、関節リウマチの進行を調べます。例えば、骨の表面に細かな傷がついた「骨びらん」 があるかどうか、骨と骨の間の隙間は正常かどうかなどを調べます。早期には、エックス線検査では異常が見つかりにくいことがあるので、 必要に応じて、超音波検査や「MRI(磁気共鳴画像)検査」を行います。

◆注目されている新しい検査

関節リウマチの早期診断に役立つとして注目されているのが、血液検査でわかる抗CCP抗体と、関節超音波検査です。

▼抗CCP抗体
免疫細胞が誤作動を起こし、自分の体の成分を攻撃するために作り出した抗体(自己抗体)です。 抗CCP抗体が陽性の場合は、関節リウマチの可能性がかなり高いと考えられます。 比較的早期の段階で陽性を示すのも特徴です。

▼関節超音波検査
骨の破壊や関節の変形を調べるには、エックス線検査が有効ですが、早期には異常が見つからないことがあります。 そこで有効なのが関節超音波検査です。画像で滑膜の炎症の状態を直接調べることができ、早期診断に役立ちます。 抗CCP抗体は血液検査なので、どの医療機関でも受けられます。一方、関節超音波検査は、リウマチ専門医のいる医療機関など、 受けられる医療機関はまだ限られていますが、その数は増えつつあります。 日本リウマチ学会日本リウマチ財団のホームページで専門医を検索できます。

■関節リウマチの治療

病気が起きても、薬などの治療により、症状がほぼなくなった状態を「寛解」と呼びます。 関節リウマチの場合、以前は痛みを止める「対症療法」が中心でしたが、 現在では、薬が著しく進歩し、炎症を止めて、寛解を目指した治療が行えるようになっています。
関節リウマチには3つの段階の寛解があります。

【関連項目】:『関節リウマチの治療』 / 『関節リウマチの薬物療法』