関節リウマチの薬物療法

関節リウマチ薬物療法はこの十数年の間に大きく進歩しました。 従来、関節リウマチの薬物療法は、非ステロイド性抗炎症薬(痛み止め)やステロイド薬などで、関節の腫れや痛みなどの症状を軽減することが中心で、 病気の進行を抑えるのは困難でした。痛みは取れても、炎症が続いていれば関節の破壊は進み、一度破壊されてしまった関節は元に戻りません。 しかし、この十数年間で治療法は大きく変わりました。抗リウマチ薬のメトトレキサートや生物学的製剤という有効な薬の登場で、 最近では、病気の進行を抑える治療が行えるようになってきています。 病気が完治するわけではありませんが、病状が治まって進行が止まった状態である寛解をも目指せるようになってきました。 患者調査によると、2016年には半数以上の人が寛解を達成したという報告もあります。 寛解が達成できれば、発症前とほとんど変わらない生活を送ることができます。 そのためにも、できるだけ早く発見し、治療を始めることが大切です。 関節リウマチが疑われるような症状があったら、診断や治療方針の決定にはリウマチ専門医の受診が勧められます。 その後の薬物療法は、多くの場合、近所のかかりつけ医で続けることができます。


■使う薬の基本

抗リウマチ薬であるメトトレキサートから使う

関節リウマチに対する治療薬を抗リウマチ薬と呼びますが、最近では、内服で使う合成抗リウマチ薬と、 注射で使う生物学的製剤に大きく分けて考えられるようになっています。 まず用いられるのは内服薬です。


●内服薬〜合成抗リウマチ薬〜

化学的に合成された薬で、最近は、生物学的製剤に対して合成抗リウマチ薬とも呼ばれます。 一般に、”抗リウマチ薬”といえばこのタイプの薬を指し、その多くは免疫抑制薬や免疫調整薬と言われてきた従来型の抗リウマチ薬です。 現在、関節リウマチの薬物療法で中心となっている第一選択薬が「メトトレキサート」で免疫の働きを抑える薬です。

◆メトトレキサート

以前は、抗リウマチ薬の中でも重症の場合に使う薬とされていましたが、近年は世界的に関節リウマチの標準的な治療薬と位置付けられており、 現在、患者さんの約8割が使用しています。 関節リウマチは、免疫細胞が過剰に分裂・増加することで、関節の炎症や、滑膜細胞の増殖などが起こり、骨や軟骨の破壊から関節破壊に繋がります。 免疫細胞にはいくつか種類があります。そのうち、司令塔である「T細胞」の命令により、 炎症性サイトカインの「TNF・α」「IL・6」などがたくさん作られるという免疫の仕組みの”誤作動”により、 骨を壊す「破骨細胞」が活性化し、病気が進行します。 メトトレキサートは、滑膜細胞の活性化や免疫細胞が分裂するときに必要な「葉酸」というビタミンの働きを妨げ、 T細胞の増殖をコントロールしたり、滑膜細胞の増殖を抑えたりすることで、炎症を抑えます。 関節の腫れや痛みを軽減するだけでなく、骨の破壊や関節の変形を食い止める効果もあります。

【注意点・副作用】

メトトキレサートは胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあるため、妊娠中や授乳中、妊娠を希望している期間には使えません。 また、関節リウマチの重い合併症がある場合も、メトトキレサートは使うことができません。 さらに、重い呼吸器病や肝臓病、腎障害がある場合にも使えません。
副作用としては、口内炎や吐き気、下痢、肝機能障害、間質性肺炎などが現れることがあります。 これらの副作用によって、服用を中止せざるを得ないケースもあります。

◆その他の従来型抗リウマチ薬

メトトキレサートが使えない場合は、他の抗リウマチ薬を使います。 主な抗リウマチ薬には、タクロリムスイグラチモミドが主に使われます。 いずれも免疫の異常な働きを抑える作用があり、症状の軽減とともに、骨などの破壊や関節の変形を抑える効果が期待できます。 メトトレキサートを使っても効果が不十分な場合に、併用することもあります。 抗リウマチ薬の使用中は免疫の働きを低下させる作用があるため、風邪や肺炎、インフルエンザなどの感染症に注意が必要です。

◆分子標的薬

内服の抗リウマチ薬の中でも最近使われるようになった薬で、2013年に発売されたトファシチニブと、 2017年に発売されたバリシチニブがあります。分子標的薬と呼ばれるタイプの薬で、 炎症を起こす引き金となるJAK(ヤヌスキナーゼ)という分子を狙って作用することから、JAK阻害薬とも呼ばれます。 作用の仕方は”飲む生物学的製剤のようなもの”と考えるとわかりやすいかもしれません。 内服薬ながら、生物学的製剤と同等の効果があるとされ、他の抗リウマチ薬や生物学的製剤で治療をしても効果が十分に得られなかった場合に、服用が検討されます。 ただし、生物学的製剤と同様に価格が高く、また、副作用の感染症にも注意が必要です。 また、副作用の感染症には、生物学的製剤と同様に十分な注意が必要です。 JAK阻害薬では特に帯状疱疹が起こりやすいことが知られています。 痛みなどの帯状疱疹の初期症状に注意してください。 薬物療法の選択肢が増え、寛解を目指せるようになってきています。担当医と相談して、薬とうまく付き合っていきましょう。


●注射薬〜生物学的製剤〜

関節リウマチの新たな治療薬として2003年から新たな治療薬として使われ始めたのが、生物学的製剤です。 バイオテクノロジーにより生物が作り出す物質を薬にしたものです。 生物学的製剤は、T細胞、TNF(腫瘍壊死因子)-α、IL(インターフェロン)-6などの増殖を抑制する薬です。 滑膜細胞や免疫細胞が活性化すると、T細胞からサイトカインが分泌されます。 サイトカインが免疫細胞と結合すると、「滑膜や骨を攻撃しろ」という指令を出し、炎症を引き起こします。 生物学的製剤は、このサイトカインに対して作用します。 生物学的製剤は、抗リウマチ薬よりも高い抗炎症効果を発揮します。また、骨を破壊する細胞の働きも抑えて、関節の変形を食い止める効果もあります

生物学的製剤はたんぱく質でできていて、口から飲むと効果が得られないため、注射薬として、点滴や皮下注射で用いられます。 関節リウマチで滑膜細胞や免疫細胞が活性化すると、リンパ球の一種のT細胞からサイトカインが分泌されます。 このサイトカインが免疫細胞と結合すると、滑膜や骨などを攻撃するように指令が出て、炎症が引き起こされます。 関節リウマチに用いられる生物学的製剤には大きく分けて2つのタイプがあります。 1つはサイトカインに結合することで免疫細胞に指令が伝わるのを妨げるタイプ(TNFα阻害薬、IL-6阻害薬))、 もう1つはT細胞の働きを抑えてサイトカインの分泌量を減らすタイプ(細胞標的薬)です。 生物学的製剤は、従来型抗リウマチ薬よりも強力に炎症を抑えます。骨の破壊を抑え、関節の変形を止める効果もあります。 メトトレキサートなどの従来型抗リウマチ薬を使っても効果が不十分な場合や、メトトレキサートを使えない場合に、追加して用いるのが基本です。

現在、関節リウマチに使える生物学的製剤は、「インフリキシマブ」「エタネルセプト」「アダリムマブ」「トシリズマブ」「サリルマブ」 「アパタセプト」「ゴリブマブ」「セルトリズマブ」など8種類あります。 治療効果や副作用などはほぼ同等とされていますが、種類によって「2ヵ月に1回の点滴(通院)」「週に1回の皮下注射(自己注射)」など、使用法が異なります。 そのため、主に患者さんの生活スタイルや希望などによって、使いやすいものが選ばれます。

【副作用・注意点】

免疫の働きを強力に抑えるため、感染症には注意が必要です。


●その他の薬

▼非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)
痛み止めとして広く使われている薬です。関節リウマチに対しては、現在は、痛みがあるときに必要最小限の量で用いる薬とされ、 抗リウマチ薬との併用で、補助的に使われます。

▼ステロイド薬
炎症や免疫を抑える作用があり、効果が速やかに現れるため、治療の初期に抗リウマチ薬の効果が出てくるまで、併用することがあります。 ただし、ステロイド薬は、多い量を長期間使うと、副作用で骨がもろくなり、関節の変形や破壊が進んでしまうことがあるので、 少量を短期間(3〜6ヵ月間ほど)用いるのが原則です。 他の薬で十分にコントロールできず、継続的に用いられることもありますが、その場合もなるべく副作用が出ない程度の少量を用います。

▼抗RANKL抗体製剤
骨粗鬆症の治療に使われていた生物学的製剤のデノスマブが、2017年から関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制ににも使えるようになりました。 通常6ヵ月に1回、皮下注射で使います。メトトレキサートなどとの併用で、補助的に用いられます。

●薬の選択

生物学的製剤はメトトレキサートの効果が十分でない場合に併用したり、メトトレキサートの副作用が強く現れた場合に単独で使ったりします。 8種類の中からどの薬を選択するかは、「何を標的にするか」以外に、点滴の場合に通院できるかどうか、 自己注射の管理ができるかどうかなど、患者さんの環境や状態、症状の程度、合併症などを見極めながら決めていきます。 また、妊娠中の女性、あるいは妊娠を希望している期間は、メトトレキサートが使えないので、副腎皮質ステロイドや生物学的製剤を使用して治療を行います。 今まではエタネルセプトを使うことが多かったのですが、新しく登場したセルトリズマブは、胎盤を介して胎児に移行しないといわれているので、 女性の患者さんの選択肢が増えました。

また、今では関節リウマチを発症すると、一生薬を使い続けなければいけないと考えられていましたが、生物学的製剤の場合、 寛解が1〜2年続いた後に、使用をやめても寛解を維持できるケースが見られるようになりました。 発症後6〜10年の患者さんで2〜4割、早期の患者さんであれば5〜6割の人が該当するのではないかと考えられています。 その場合でも、生物学的製剤とメトトレキサートを併用していた患者さんは、メトトレキサートを使い続けます。 しかし、最近、メトトレキサートだけで5年ぐらい寛解が続き、使用をやめることができたケースが出てきています。 このように寛解が期待できるケースは、早期に治療を受けた場合に多く見られます。 薬物療法の効果を発揮しやすくするためにも、早期治療が大切です。


●薬の費用

「日本リウマチ友の会」が行ったアンケート調査によると、生物学的製剤の高い効果を実感する一方で、経済的な不安を感じている人が多くいました。 生物学的製剤は基本的には長期間使う薬です。しかし、必ず使い始めた時の薬の量でずっと治療を続けるというわけではありません。 治療によって寛解に達し、その状態を長く維持することができれば、薬を使用する頻度や量を減らすことも可能です。 関節リウマチの治療では、まず寛解を目指すことが第一です。そのうえで、自分の病状や経済的な負担、長期的な経過などを考慮しながら、総合的に薬を選びます。 免疫抑制薬、生物学的製剤共に健康保険が適用されます。費用は、生物学的製剤の場合、自己負担額が3割の人で、年間およそ40〜60万円です。 生物学的製剤の難点は、高価なことですが、2種類の薬ではより薬価の安い後続医薬品(バイオシミラー)も登場しています。 先発の生物学的製剤とほとんど同じ成分で、同等の効果が確かめられたもので、価格は7割ほどに抑えられています。 また、高額療養費制度などの公的助成を利用できる場合もあります。


■痛みや関節の動き、変形の程度から手術を検討

関節リウマチの手術のメリットは、主な症状である「痛み」「関節の動き・機能」「見た目」の3点を同時に改善できることです。 最近は、足首、足指、手首、手指などの小さい関節の手術が注目されています。 以前は再発が多く、あまり勧められませんでしたが、薬で手術後の再発をかなりコントロールできるようになったため、 積極的に手術が検討されるようになっています。

【関連項目】:『関節リウマチの手術』


関節リウマチの薬