■強力に骨密度を上昇させる新薬



●副甲状腺ホルモン(PTH)製剤

2010年にテリパラチドという注射薬が使われ始めています。 ビスホスネート製剤やSERMが骨の骨破壊を抑えて骨密度を上げるのに対し、積極的に骨形成を促す薬です。 骨芽細胞を増やして働きを活性化させることで、新しい骨を作り、骨の組織の量を増やします。 1年前(2013年)に腰椎の骨密度を6~8%ほど上昇させ、背骨の骨折を約7割減らす効果がみられています。 現在、1日1回自分で注射するタイプと、週1回通院して注射を受けるタイプの薬があります。 ただし、骨折の危険性の高い骨粗鬆症に用いる薬とされており、薬価もビスホスホネート製剤の十数倍になります。 また、作用が強力なことと、動物実験では長期間使うと骨の悪性リンパ腫が増えたことから、 今のところ使用期間は1日1回注射するタイプが2年、週1回注射するタイプが1年半までと決められています。


●抗RANKLモノクロナール抗体

2013年6月に使われ始めた注射薬で、デノスマブという薬があります。
骨代謝の仕組みには、情報伝達を担うさまざまな分子が関わっています。 その一つのRANKLは、破骨細胞を作り、その働きを増殖するという、骨吸収の促進に積極的に関わる受容体の分子です。 デノスマブはRANKLを標的として、その働きを特異的に阻害する、骨粗鬆症の薬では初の分子標的薬です。 6ヵ月に1回、1mlというごく少量の薬を皮下注射するだけで、骨吸収を強力に抑制します。 薬価は、1回分がこれまでの標準的な治療薬の6ヵ月分に相当するくらいです。

この薬の効果は、背骨の骨折を6~7割減らし、大腿骨の付け根の骨折も平均で4割、75歳以上の高齢者に限れば6割ほど減らす効果がみられます。 しかも、ビスホスネート製剤などの従来の骨吸収抑制薬では、3年ほどで骨密度がそれ以上あまり上がらなくなるのですが、 デノスマブの場合、これまでのデータで、腰椎の骨密度が平均的には3年で約8%、5年で約10%、8年で13~14%といった具合に、伸び続けています。 骨密度の上昇は、大腿骨でも続いています。
副作用に関しては、ビスホスネートで指摘されているような顎骨壊死や大腿骨の特殊な骨折が起こった例もありますが、 作用が強いから副作用も強いというわけではありません。