骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症のガイドラインでは、薬物治療を開始する基準が定められ、治療薬の有効性などが総合的に評価されています。 骨粗鬆症と診断されたら、その危険性が認められる場合には、積極的に治療を受けて骨折を防ぎましょう。


■骨粗鬆症とは?

治療によって骨を強くし、骨折を起こしにくくする

骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる病気です。 女性では閉経を迎えるころから、男性ではそれより10年ほど遅れて増え始め、高齢になるほど多くなります。 骨の強度を決める要因としては、約7割が骨密度、残る3割ほどが骨の構造や材質を含めた骨質と考えられています。 私たちの骨では、破骨細胞が古くなった骨を壊す骨吸収と、骨芽細胞が新しい骨を作る骨形成が、 絶えず繰り返されて、日々少しずつ作り替えられています。これを骨代謝といい、そのバランスが崩れて、 骨吸収が骨形成を上回ると、骨密度が低下します。これが、骨が弱くなる第一の原因です。 また、骨の構造は、主材料である カルシウムなどを コラーゲンがつなぎ合わせることによって保たれています。 コラーゲンの働きが低下すると、骨質が劣化します。さらに、最近では、全身の代謝状態も骨の強度に関与すると考えられています。

骨の強度が低下するだけなら症状はありませんが、そのために骨折が起きれば、日常の生活が制限され、生活の質が低下します。 特に高齢者が歩行に関わる大腿骨の付け根の骨折を起こすと、寝たきりのきっかけになりかねません。 骨粗鬆症の治療は、そうした骨折を予防することが最終的な目的となります。 骨の強度を保つには、骨の健康維持に必要な栄養素を摂れる食事や、適度な運動が欠かせませんが、すでに骨が弱くなっている人では、 併せて薬による治療が行われます。近年、効果の高い治療薬が増え、治療によって骨を強くしたり、骨折を起こしにくくすることが目指せるようになっています。


■治療開始の時期

骨折の危険性が高ければ、治療を開始する

骨粗鬆症の治療の中心は、 「薬物療法」です。治療の主な目的は、骨折を予防し、QOL(生活の質)を維持することにあります。 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2006年版」では、従来の骨粗鬆症の診断基準とは別に、 「治療開始の基準」を設け、骨折がなくても、骨折の危険性が高い場合には、早めに治療を開始することが重要であることを明示しています。
次の2つに該当する場合には、骨折がなくても薬物治療が行なわれます。

①骨量がYAM(若年成人の平均値)70%未満(骨粗鬆症)の場合。
②YAM70%以上80%未満の閉経後の女性および50歳以上の男性で、「過度の飲酒(1日に日本酒2合以上が目安)」 「喫煙」「骨折の家族歴(両親のいずれかが、太腿の付け根を骨折したことがある」のいずれかに当てはまる場合。

これまでは、①に該当する患者と、骨が弱くなり骨折した患者が、薬物療法の対象とされてきました。 しかし実際には、骨折が起きてから治療が行なわれるケースが多かったといえます。
最近、骨粗鬆症や骨折についても研究が進み、「多量の飲酒によって、骨を作る働きが抑えられる」 「喫煙は、女性ホルモンの分泌を低下させ、カルシウムの吸収を妨げる」 「生まれつきの体格や太腿の付け根の骨の形態などが、骨折のしやすさに関係している」などの報告があり、 このような条件に1つでも当てはまると「骨折の危険性が2倍になる」ことがわかってきたため、 ②に該当する患者も、治療を開始することが勧められています。


■どうなったら骨粗鬆症の薬を使う?

骨が弱くなっても症状はありません。骨粗鬆症のガイドラインでは下図のような薬物治療開始基準が示されています。
骨粗鬆症治療の目的は骨折を予防することです。そこで、一定以上に骨折のリスクが高くなったら薬物治療の対象とします。 骨折リスクの大きな目安となるのが、骨密度と、強い力が加わったわけでもないのに骨が折れる脆弱性骨折の既往です。 骨密度が若年成人平均値70%未満だと骨粗鬆症と診断されますが、 骨密度で70%未満というのは、骨の強度としてはおおよそ半分以下に低下した状態と考えられます。 すでに脆弱性骨折のある人も、また骨折を起こしやすいことがわかっています。こうした人が薬物治療の対象となります。 また、骨密度が若年成人値の70%以上80%未満の骨量減少とされる段階でも、危険因子から骨折リスクが高いと判断されれば、薬物治療が勧められます。 そのほか近年、骨代謝との関連が注目されているのが 糖尿病慢性腎臓病(CKD)などの生活習慣病です。 これらの病気がある人は、骨質の劣化も進みやすいことから、やはり骨量減少の段階から治療が勧められます。


骨粗鬆症のガイドライン