圧迫骨折

背中や腰が曲がったり、痛みが出た場合は圧迫骨折が起こっている可能性があります。 圧迫骨折は、寝たきりの原因になることもあります。症状を知り、早期発見、早目の治療を行いましょう。


■圧迫骨折とは?

骨粗鬆症などでもろくなった骨が押し潰される

「圧迫骨折」とは、背骨の椎体という部分が、潰れたように折れることです。 圧迫骨折の原因で最も多いのが骨粗鬆症です。高齢者や女性に多い傾向があります。 骨粗鬆症のある人は、骨の強度が低下してもろくなっています。そのため、転んで尻もちをつくなど比較的弱い力が加わっただけでも、 圧迫骨折が起こることがあります。また、転倒などによる衝撃がなくても、自分の体の重さに耐えられずに骨が潰れてしまうことで、圧迫骨折が起こることもあります。 その場合は、自分で気付かないことが多いのです。重いものを持つなどといった日常動作も圧迫骨折に繋がることがあります。 圧迫骨折は寝たきりの原因にもなるため、放置しないで適切な治療を受けることが大切です。


■圧迫骨折の症状

背中や腰が曲がったり、痛みが出たりする

骨粗鬆症による圧迫骨折の多くは、椎体のうち、背中と腰の境目にある胸椎と腰椎の間の移行部に発生します。 そして、1ヵ所にとどまらず、”ドミノ倒し”のように骨折部位が拡大していくことがよくあります。 椎体が何か所も潰れると、背骨が変形して、背中や腰が曲がり、身長が縮み、背筋を伸ばすことができなくなります。 すると、背中が重苦しい、だるい、背中全体が痛むといった症状が起こってきます。 ただし、日常生活の中で徐々に骨が潰れて骨折に至るため、多くの場合は痛みが現れません。 骨の変形が進み、背中や腰がさらに曲がると、内臓が圧迫されて、吐き気・食欲不振、お腹が張る(腹部膨満感)、便秘、痔など様々な症状が現れてきます。 また、内臓が圧迫されると、腹部にかかる圧力が高まります。 そのため胃食道逆流症が起こることがあります。 胃食道逆流症は、胃液が食道に逆流する病気で、胸やけが起こったり、食道に潰瘍ができることもあります。 骨粗鬆症が原因で圧迫骨折が起こった人の多くに、胃食道逆流症がみられます。 肺が圧迫されると、息苦しさ呼吸機能の低下がみられるようになります。 痛みが続くことで、意欲が低下したり、気分が落ち込む抑うつ状態になる場合もあります。 早期の段階で気付くためにはセルフチェックを行い、疑わしい場合には、整形外科や内科、婦人科などを受診するようにしましょう。

◆破裂骨折

一般に、圧迫骨折は、椎体の前方だけが潰れます。しかし、圧迫骨折の中には、椎体の後方も潰れる場合があり、破裂骨折と呼ばれています。 椎体の後方が潰れて後ろに飛び出すと、神経を圧迫することがあり、痛みのほかに、下半身の痺れ麻痺などの神経症状が現れます。


圧迫骨折とは?


■圧迫骨折の治療

まずは保存療法を行い、改善しなければ手術が検討される

圧迫骨折は、エックス線やMRI(磁気共鳴画像)などの画像検査によって診断されます。 圧迫骨折と診断された場合は、麻痺などの神経症状がなければ、まず保存療法が行われます。

●保存療法

安静痛みのコントロールが基本になります。無理をせず、できるだけ安静を保ち、コルセットギプスなどで、 骨折した部分を中心にしっかり固定して、骨がくっつくのを待ちます。痛みを抑える鎮痛薬も使われます。 骨粗鬆症があれば、骨粗鬆症の薬による治療が行われます。 コルセットなどは市販されていますが、患者さんの体形に合わせて背骨のカーブを維持するのが難しい場合があります。 また、市販の腰痛用のベルトは骨折した部分を十分に固定できないことがあります。 コルセットやギプスなどは医療機関で患者さんの体形に合わせて作ってもらう方がよいでしょう。 保存療法で痛みが軽くなってきたら、リハビリを開始します。 多くの場合、保存療法を2~3ヵ月行えば、折れた骨がくっつき、痛みも軽くなっていきます。


●椎体形成術

保存療法を2~3ヵ月間続けても、骨がくっつかない場合は、椎体形成術が行われます。 椎体形成術は、圧迫骨折を起こして潰れた椎体に、医療用の骨セメントなどを注入して骨を修復する手術です。 最近では、バルーン椎体形成術(BKP)が行われています。 患者さんにうつ伏せになってもらい、麻酔をかけた後に、エックス線などで患部を観察しながら、潰れた椎体内に特殊な針を刺します。 そして針の先から出したバルーンを膨らませて、椎体を一時的に元の形に復元します。 椎体からバルーンを抜いた後の空間に、ペースト状の骨セメントを注入します。 骨セメントが固まると、潰れた椎体はほぼ元通りに修復されます。 手術は、順調にいけば10~15分程度です。ただし、椎体の潰れ方が激しい場合などは、バルーンを膨らませる前に、椎体をきれいにする必要があります。 その場合は、手術に40~50分程度かかることがあります。入院期間は数日間で、退院後はリハビリを行います。 椎体形成術を受けると、痛みが軽くなり、曲がった背中や腰も改善します。 ただし、骨粗鬆症のある人は、全身の骨の強度が低下しているため、治療後、再び別の椎体で圧迫骨折が起こる可能性があります。 特に、椎体形成術を行った椎体は強度が増すため、その上下の、治療を行っていない椎体に負担がかかり、圧迫骨折がを引き起こすことがあります。 そのためコルセットを日常的に使い、激しい運動は行わないようにするなど、負担をかけないようにします。 圧迫骨折が再び起こるのを防ぐためには骨粗鬆症の治療を継続して骨を強くする必要があります。


●破裂骨折の治療

破裂骨折の場合は、椎体形成術を行うことが困難なため、骨折した骨に金属製のスクリューを埋め込み固定する手術などが検討されます。 圧迫骨折や破裂骨折の手術後のリハビリでは、医師や理学療法士の指導の下、転倒しないようにバランス感覚を鍛える片脚立ちや、 スクワットなどの下半身の筋力トレーニングなどを行います。


圧迫骨折の治療