お年寄りの骨折の予防・治療

お年寄りが太腿の付け根の骨を骨折した場合には、治療後に、歩くことや自立した生活を続けられるように、早期にリハビリテーションに取り組むことが重要です。


■お年寄りと骨折

以前より骨折しやすい人が増えている

「骨粗鬆症」が進むと、全身の骨が弱くなり、どの骨も骨折する可能性が出てきます。 中でも、ちょっとした転倒などでも骨折しやすいのは、「腕の付け根」「背骨」「手首」「太腿の付け根」 などです。特に、太腿の付け根(大腿骨頚部)を骨折すると、長期の入院やリハビリテーションが必要になるなど、 回復までに時間がかかるため、注意が必要です。 場合によっては、骨折が原因で介護が必要になることも少なくありません。

近年、太腿の付け根を骨折する人の数は、女性を中心に増加する傾向にあります。 1987年と2002年の人口1万人当たりの発生率(女性)を比較すると、年代が上がるにつれて、 2002年の方がより高くなっています。 社会の高齢化が進む日本では、高齢人口の増加に伴って、骨折を起こすお年寄りの数が増えています。

しかし、骨折の発生率が高まったということは、お年寄りが以前よりも骨折しやすくなったことを 意味していると考えられます。 お年寄りが骨折しやすくなった背景には、「骨粗鬆症の増加」や「運動不足による筋力などの低下」 などがあります。また、脳梗塞やパーキンソン病、認知症など、転倒を起こしやすい病気が お年寄りに増えていることも関係していると考えられます。

骨折を防ぐためには、骨粗鬆症の薬物療法を受けると同時に、運動を取り入れたり、食事に気をつけるなど、 ふだんから転倒しにくい体作りを行なうことが大切です。


■骨折の治療

骨折部分を固定したり、人口骨頭に置き換える

お年寄りの骨折のうち、手首や腕の付け根などの場合は、主に、骨折部分をギプスや三角巾などで固定する 治療が行なわれます。太腿の付け根の場合は、多くは入院して手術が行なわれます。 手術法は、骨折の位置や骨の分断の状態、年齢や生活の状況、できるだけ早期にリハビリテーションを 始められる方法などを総合的に判断して決められます。入院期間は、およそ1〜2ヶ月間です。
代表的な手術法には、「内固定術」「人工骨頭置換術」があります。

▼内固定術
太腿の付け根の骨の先端(骨頭)からやや離れた部分に骨折が起きた場合に、よく行なわれる方法です。 この部分は、骨がつきやすいところで、金属の板やねじなどで骨折部分を固定し、そのまま骨折部分が付くようにします。

▼人工骨頭置換術
太腿の付け根の骨頭に近い部分に骨折が起きたときに、よく行なわれる方法です。 この部分は「関節包」と呼ばれる組織に包まれており、骨が付きにくいという性質があります。 そのため、切開して骨頭を取り出し、人工骨頭に置き換えます。

●早期にリハビリテーションを行なう

骨折前と同様の生活を取り戻すためには、早期にリハビリテーションを始めることが重要です。 リハビリテーションは、主に次の2つに分けられます。

▼骨折した部分の機能回復
手術後に、平行棒や手すり、歩行器などを利用して、「立つ」「歩く」「階段を上り下りする」 などの歩行訓練が行なわれます。歩行訓練の開始時期は、骨折の起こり方によって異なります。 骨折部分が安定していれば、手術後数日以内から行なえます。 しかし、骨が細かく分断しているなどの場合には、それよりも遅くなることがあります。

▼骨折していない部分の機能維持
手術前から行ないます。お年寄りの場合、服用している薬などの影響で、入院してもすぐには手術を行なえないことがよくあります。 例えば、血液を固まりにくくする薬を服用している場合には、手術時に多量に出血する危険性があるため、 服用を中止し、薬の影響がなくなるまで1週間〜10日間ほど待機します。 このような待機期間中、体を動かさないでいると、筋力が低下したり、関節が硬くなったりします。 すると、手術後に歩行訓練を行なう際に、両手で平行棒につかまったり、骨折していない脚に体重をかけたりして、体を支えることが難しくなります。 そのため、手術前に、理学療法士によって、上肢や骨折していない方の脚などをベッド上で動かすリハビリテーションが行なわれます。

■退院後の注意

手すりをつけるなど住宅を改造し、外出時には杖を使うようにする

太腿の付け根を骨折したお年寄りが、退院後に反対側を骨折することがよくあります。 退院後は、骨粗鬆症の治療を継続し、再び骨折しないようにすることが大切です。
他に、次のようなことにも注意が必要です。

▼環境を整える

■転倒予防のための工夫

外出時には歩行車や杖、リュックなどを用いる

骨粗鬆症の人は、転倒による骨折の予防を心がけることが大切です。 運動は転倒予防に効果的ですが、「転倒しやすい」「骨折しやすい」「重症の骨粗鬆症」という人が無理にウォーキングをすると、 却って転倒、骨折する場合があります。転倒や骨折のリスクが高い人は、外出時には「歩行車」や「杖」「リュック」などを 活用しましょう。歩行車を使うことで、歩行が安定します。杖にも転倒防止効果があり、歩行車より手軽に利用できます。 また、背骨を圧迫骨折していると、前かがみの姿勢になりがちで、転倒しやすくなります。 リュックを背負うと、その重みで状態が少し後方にずれ、バランスが改善します。 両手が空くので、もし転んでも手を着くことができ、最も避けたい大腿骨の付け根を骨折するリスクも軽減できます。 靴は、かかとが低く、滑り止めが付いているなど、歩きやすいものを選びましょう。

●屋内ではイスや照明を工夫する

お年寄りの骨折の多くは、住み慣れた住宅で起こっています。「段差をなくす」「手すりをつける」など、必要に応じて住宅の改造を行ないましょう。 夜間にトイレに行くことが多い場合は、廊下や階段などに小さな照明を設置しておくと、転倒予防に役立ちます。 高齢になると、椅子に腰かけたり、椅子から立ち上がったりする際の体重移動が難しくなり、椅子ごと転倒してしまうことがあります。 肘かけのある椅子を使えば体重が椅子の中心にかかるので、椅子が安定します。 また、高齢になると視力が低下してきて、足元が見えにくくなります。 「床に散らかったものを片付ける」「電気コードを部屋の隅に固定する」など、つまづかないようにする注意も必要です。