インフルエンザ

例年、冬に流行が起こるインフルエンザ。 インフルエンザワクチンの接種は予防法の一つですが、最近その効果について新たなことがわかってきました。




■インフルエンザ

高熱や全身の筋肉痛などが現れ、命に関わる危険性もある

インフルエンザは、「インフルエンザウィルス」に感染することで起こる病気で、冬に流行期を迎えます。 多くの場合、12月頃に流行が始まり、翌年の1~3月頃に最も流行します。 年間の発症者数は、その年の流行がどの程度かによって異なりますが、例年、数百万~1000万人以上です。 インフルエンザは風邪と混同されることがよくありますが、異なる病気です。 インフルエンザはインフルエンザウィルスの感染で起こりますが、風邪は「アデノウィルス」「ライノウィルス」 「コロナウィルス」などのウィルスや、細菌の感染が原因となります。症状にも次のような違いがあります。

▼インフルエンザの主な症状
「38℃以上の高熱」や「関節痛、筋肉痛、倦怠感、頭痛」などの全身症状が現れます。

▼風邪の主な症状
「微熱」か「38℃前後の中等度の発熱」があり、「喉の痛み、鼻汁、咳」などが現れます。

一般に、風邪は軽症のことが多いのですが、インフルエンザは重症化して命に関わることがあります。 特に高齢者は肺炎を併発して重症化しやすく、予防が大切です。


■インフルエンザワクチン

侵入してきたウィルスの増殖を防ぐことができる

インフルエンザを予防するためには、インフルエンザワクチンの接種を受けるようにします。 体にウィルスや細菌のような異物が侵入すると、それを排除するために 「免疫」が働きます。 例えば、インフルエンザウィルスに感染すると、体内ではそのウィルスに対する「抗体」が作られます。 この抗体が体内にあると、次に同じウィルスが侵入してきても、免疫の働きによって排除されるのです。 インフルエンザワクチンを接種すると、インフルエンザウィルスに対する抗体が作られます。 これによって、インフルエンザウィルスから体が守られているのです。


●ワクチンの作られ方

人の世界で流行っているインフルエンザウィルスには、A型として2種類、H1N1とA香港型、B型の計3種類があります。 WHO(世界保健機構)がその年に流行しそうなウィルスをそれぞれから選んでワクチンが作られています。 インフルエンザワクチンはいわば3種混合なので、どれが流行っても対応できます。 ワクチンは、ウィルスを孵化鶏卵(発育中の卵)に注射して作られます。ウィルスを卵の中で増殖させ、その増殖したウィルスを 卵の外に取り出し、不活発化(死滅)させてワクチンにするのです。


●ワクチン接種の目的

自分だけでなく、周りの高齢者などを守ることにもつながる

インフルエンザワクチンの接種を受けると、インフルエンザにかかりにくくなります。従来は健康な成人で70~90%の効果がある といわれていました。予防接種をしないと、1000人のうち10人がインフルエンザにかかるとした場合、1000人全員が予防接種を していれば、インフルエンザにかかる人が70~90%減り、1~3人になるということです。 ところが、2012年のインフルエンザワクチンは、予測が当たっていたにもかかわらず、免疫の働きがしっかりしている 健康な成人でも40~60%程度の効果しかなかったといわれています。高齢者や「心臓や肺の持病」 「腎臓病」 「糖尿病」などがある、 感染後重症化するリスクの高い人では、免疫の働きの低下により、20~30%の効果しかなかったと考えられます。 たとえ選択したウィルスが流行ウィルスとぴったり合っていても、ワクチン製造過程でウィルスが変異して、 選択したウィルスとは違ったものになり、効果が低くなるのです。鶏卵内での増殖を促進するために、ウィルスに遺伝子操作を 加えたことが原因と考えられます。この問題を解決するため、鶏卵を使わない新しいワクチンの製造方法も開発されていて、 近い将来、そちらに移行できるよう準備されています。 以前に比べて効果が低下したとはいえ、ワクチンは、インフルエンザの予防手段として最も重要です。 ただ高齢者や感染後の重症化のリスクの高い人について考えると、ワクチンの接種だけで、インフルエンザ予防が十分とはいえません。

◆間接効果も期待される

ワクチンの接種を受けると、その人はインフルエンザにかかりにくくなります。これが「直接効果」です。 たとえ直接効果が低下していても、多くの健康な成人が接種を受ければ、インフルエンザにかかる人が減少し、 感染が拡大する危険性は低下します。このような効果を「間接効果」といいます。 従って、高齢者などをインフルエンザから守るためには、周囲の健康な成人がワクチンの接種を受けることが勧められます。 ただし、ワクチンの接種を受けられない人もいます。ワクチン製造過程で鶏卵が使われているため、 卵アレルギーのある人は接種を受けられません。また、微熱があるなど、体調が悪い人も避けてください。

◆日常生活でできる予防法とは?

インフルエンザウィルスは、感染者の咳やくしゃみによって飛び散った飛沫を吸い込んでしまうことで感染します。 ウィルスが付着したものに触れた手で鼻や口に触れることも、感染の原因となります。 そのため、インフルエンザの予防には、「手洗い」と「マスクの着用」が有効なのです。 「うがい」や「人込みを避ける」こともよいでしょう。また、「加湿や換気を心がける」など、 ウィルスが生き延びやすい環境を避けることも大切です。


●インフルエンザに感染したら

タミフルやリレンザなどの薬を用いて治療する

インフルエンザの治療は、「抗インフルエンザ薬」が中心になります。 インフルエンザが疑われる場合には、診察に加えて「迅速診断検査キット」による検査を行い、短時間で診断をつけます。 インフルエンザと診断された場合には、抗インフルエンザ薬を使用します。できるだけ、発熱後48時間以内に治療を開始しましょう。 抗インフルエンザ薬には、内服薬の「オセルタミビル(タミフル)」「ゾフルーザ」、吸入薬の「ザナミビル(リレンザ)」 「ラニナミビル(イナビル)」、点滴静注射の「ベラミビル(ラビアクタ)」などがあります。

感染症の拡大を防ぐために、安静にすることも大切です。また、咳やくしゃみによる飛沫が感染の原因になるので、 「咳エチケット」は感染が広がるのに役立ちます。症状の改善後もしばらくは注意が必要です。