麻疹(はしか)

強い感染力があり、大流行を引き起こすこともあるはしか(麻疹)。 感染の拡大を防ぐためには、ワクチンの2回接種が重要です。

■はしか(麻疹)とは?

はしかは、麻疹ウィルスが人から人に感染することによって発症する病気です。 世界では、2019年の1年間に、疑い例を含めて約130万人がはしかを発症しました。 2017年の1年間には、約11万人がはしかで亡くなっています。 日本でも、2019年には発症者数が700人を超え、最近5年間(2015~2019年)では最多になりました。

◆感染経路

麻疹ウィルスの感染経路には、主に次の3つがあります。

▼空気感染
空気中に漂う麻疹ウィルスを吸い込むことで感染します。

▼飛沫感染
感染者の咳やくしゃみ、会話などで飛び散った飛沫(しぶき)を吸い込むことで感染します。

▼接触感染
感染者と直接触れ合ったりすることで感染します。

◆麻疹ウィルスの感染力

一般にウィルスの感染力は、感染経路などによって異なります。 飛沫は、水分を含んでいるため重さがあり、空気中に放出されると、すぐに地面に落ちます。 一方、空気感染するウィルスは、周りに水分を持たず軽いことから、長い時間空気中に浮遊し、遠くまで飛んでいく場合があります。 そのため感染者から離れていても、感染する恐れがあります。 空気感染する麻疹ウィルスの感染力は、他のウィルスに比べて極めて強く、免疫のない人がウィルスを吸い込むと、ほぼ確実に感染すると考えられています。 また、基本的には、マスクの装着や手洗いでは、麻疹ウィルスの感染を防ぐことはできません。

【ウィルスの感染力】
免疫を持たない人の集団で、1人の感染症患者から平均何人に二次感染するかを示す指標に「基本再生産数」があります。 はしかの基本再生産数が12~18人であるのに対して、季節性インフルエンザは1.3~1.8人、 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)では4~7人、 風疹は6~7人で、はしかの感染力が強いことがわかります。




■はしかの経過

はしかは、次のような経過をたどります。

▼潜伏期
10~12日間ほどの潜伏期間を経て発症します。

▼カタル期(初期)
周りの人に対する感染力が最も強い期間です。38℃前後の発熱、咳、鼻水、目の充血などの症状が起こります。 また、頬の内側の粘膜にコプリック斑と呼ばれる、 はしかに特徴的な白い斑点(粘膜疹)が現れます。 また、腹痛や下痢などが起こることがあります。

▼発疹期
コプリック班が出た翌日から、耳の後ろから首にかけてはしか特有の発疹が現れます。 最初は小さく赤い発疹ですが、発疹どうしがくっついて徐々に大きくなり、色が濃く鮮やかになります。 発疹は、顔や胸、背中、腹部に広がり、腕や太もも、手足の先に至るまで、1~2日以内に全身に広がっていきます。

▼回復期
熱が下がり始め、発疹は茶褐色の沈着を残した後、だんだん消えていきます。

コプリック班
上半身の発疹


■はしかの合併症

はしかは、肺炎や中耳炎などの合併症が起こりやすく、1000人に1人ほどの割合で脳炎(*1)を発症するとされています。 また、「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」という重篤な合併症が起こることがあります(*2)。 亜急性硬化性全脳炎は、麻疹ウィルスが脳内に持続的に感染して徐々に変化し、はしかが治った後数年から10年程度たってから発症するとされ、慢性的に進行します。 初めは「学業成績や記憶力の低下」「感情不安定」などの精神的な症状が起こり、「うまく歩けない」「持っているものを落とす」 「字がうまく書けなくなる」「体がガクンとなる」などの運動障害が現れます。 その後、体がピクッと動く「不随意運動」が周期的に見られるようになります。 さらに進行すると、意識が消失し、全身の筋肉が緊張して自発運動が困難になり、命を落とす重症の病気です。

【(*1)脳炎】
はしかによる脳炎は非常に重症で、重度の後遺症が残ることが多いです。

【(*2)】
ワクチンを接種していない乳幼児で、特に発症頻度が高いです。5歳未満ではしかを発症すると約1400人に1人の割合、0歳でははしかを発症すると 約600人に1人の割合で発症するという報告が、最近(2017)米国で発表されました。


■ワクチンの接種で予防を

はしかは、現段階では有効な治療薬がないため、「麻疹ワクチン」を接種して予防することが重要です。 麻疹ワクチンを接種すると、麻疹ウィルスに対する免疫ができ、典型的なはしかを発症することはなくなると考えられています。 はしかの予防接種は現在、主に麻疹ワクチン(*3)と風疹ワクチンが混合されている「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)(*4)」を接種するのが一般的です。 1回の接種で抗体ができる割合は約95%、2回の接種では約99%とされています。 そのため、はしかの予防接種は、2回の接種(1回目は1歳の時、2回目は小学校入学前の1年間)が推奨されています。 現在、日本における予防接種の基本的な理念は、「予防接種・ワクチンで防げる疾病は予防すること」とされています。 しかし実際には、はしかの場合、2回の予防接種を受けていない人が少なくありません(*5)。 予防接種の費用は、定期接種(*6)の対象年齢であれば、国と自治体が全額負担します。ですから、そのタイミングで必ず受けるようにしましょう。 一方、定期接種の対象年齢でない場合、費用は全額自己負担になりますが、予防接種を受けることは可能です。 特に成人では、年代によって予防接種を受けているかどうかが異なります。 はしかにかかったことがなく、予防接種を受けていない・受けたかどうかわからないという人は、子供や家族を守るためにも、ぜひ予防接種を受けてください。 以前に予防接種を受けたことがある人が、受けたことがないと思って、再度予防接種を受けても問題はありません。 希望する場合は、事前に医療機関に、MRワクチンの用意があるか問い合わせるようにしましょう。 日本では、国内由来のはしかは抑えられていましたが、近年は海外から持ち込まれることで、感染が広がる機会が増えています。 集団感染を防ぐためにも、積極的にワクチンの接種を検討してください。

【(*3)風疹】
風疹は、風疹ウィルスの感染によって起こり、38℃前後の発熱、耳の後ろや首のリンパ節の腫れ、目の充血、全身の発疹、咳などの症状が現れます。 妊婦が妊娠20週ごろまでに風疹ウィルスに感染すると、胎児にも感染して、生まれてきた子供に 難聴や心疾患、 白内障緑内障・ 網膜症などが起こります。「先天性風疹症候群」を発症する可能性があります。

【(*4)】
麻疹風疹混合ワクチンは、妊娠中には接種できません。また、接種後2ヵ月間は、避妊をする必要があります。

【(*5)】
2018年度の調査では、全国で1歳児の1回目では1万4653人が、小学校入学前の2回目では5万6800人が受けていませんでした。

【(*6)】
予防接種法によって、対象となる病気、対象者、接種期間などが定められている予防接種のこと。