風疹

風疹は、春から夏ごろにかけて流行がピークになります。 稀に重い合併症を引き起こしたり、妊娠中に感染すると赤ちゃんに先天性の障害が起こるなどの恐れがあります。 風疹を予防するには、予防接種が有効です。

■風疹とは?

風疹ウィルスに感染して、発疹などの症状が現れる

「風疹」は、子供がかかる病気と思われがちですが、最近では大人の患者が9割近くを占めているとされています。 日本では2013年に風疹が全国的に流行し、1万4000人以上が風疹に罹ったと報告されています。 風疹は、風疹ウィルスの感染によって起こります。 風疹の感染経路は飛沫感染が中心で、感染した人の咳やくしゃみ、会話などで風疹ウィルスを含んだ飛沫が飛び、 その飛沫を鼻や口から吸いこむことによって感染します。会話をしているだけでも風疹ウィルスを含んだ飛沫が1~2mくらいは飛んでいます。 風疹ウィルスに感染すると、平均16~18日間ほどの潜伏期間を経て発症します。 ただし、風疹ウィルスに感染しても15~30%程度は、「抗体はできるけれど症状が現れない」不顕性感染であるとされています。 不顕性感染の場合でも、気付かないうちに周囲に感染を広げてしまうことがあるため、注意が必要です。 風疹を発症すると、主な症状として発疹が現れます。赤い小さな発疹が顔や全身に広がっていきます。 そのほか、38℃前後の発熱、耳や首の後ろのリンパ節の腫れ、目の充血、咳などの症状があります。 大人では関節痛が現れることも多くあります。大人がかかると高熱が出たり、発疹が長引いたりするなど重症化することもあります。




■風疹の治療

対症療法を行い、安静にすることで治ることが多い

風疹ウィルスそのものに対して効果のある薬は今のところありません。 医療機関では、発熱、関節の腫れや痛みなどがある場合は、解熱薬や鎮痛薬などによる対症療法が行われます。 多くの場合、風疹の主な症状は、3~5日間ほど自宅で安静することで治るとされています。 ただし、風疹は稀に合併症を引き起こす頃があり、重症化する恐れがあります。 合併症には、脳に炎症が及んで意識障害や痙攣が起こる脳炎や、 血液成分の1つである血小板の数が少なくなる血小板減少性紫斑病などがあり、入院での治療が必要になります。


■先天性風疹症候群とは?

妊娠20週ごろまでの感染で、赤ちゃんに障害が起こることも

風疹で最も注意したいのが、妊婦への感染です。 大規模流行となった2013年の調査では、風疹の患者数は女性より男性の方が約3倍多く見られました。 風疹を発症した成人女性(20~60歳)のうち、感染原因・経路に記載があった人を見ると、職場が207人、家族が197人などで、 家族では夫からの感染が最も多く、87人でした。 妊娠20週ごろまでに妊婦が風疹ウィルスに感染すると胎児にも感染して、産まれてきた赤ちゃんが先天性風疹症候群を発症する可能性があります。 妊娠初期に感染するほど、複数の症状がみられる可能性が高くなります。 先天性風疹症候群では、難聴、心疾患白内障緑内障網膜症、低出生体重、精神・運動神経発達の遅れ、血小板減少性紫斑病、肝脾腫などが現れます。 精神・運動発達の遅れでは、現れ方の程度に差がありますが、知的な発達や運動面での発達が、年齢相当よりもゆっくりしているなどが見られます。 先天性風疹症候群は、命に関わることもあります。2012~13年の流行によって、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群と診断されました。 6ヵ月から1歳ごろまでに行われた予後調査の結果、そのうちの11人のお子さんが亡くなっていることがわかりました。 厚生労働省は、早期に先天性風疹症候群の発生を失くし、2020年度までに風疹をゼロにすることを目指しています。


■風疹の予防

予防接種を受けることで、風疹を予防することができる

風疹は、風疹ワクチンの摂取で予防できます。風疹の予防接種は、主に内科や小児科などで受けられます。 風疹ワクチンは、1回の摂取だけでは、20人に1人は抗体ができないと考えられているため、2回の接種が勧められます。 2回接種する場合は、1回目から最低1ヵ月以上の間隔をあけてください。 妊娠中は、風疹の予防接種を受けることができません。妊娠・出産年齢の女性は、子供の頃の接種を含めて妊娠する前に合計2回の接種を受け、 接種後、2ヵ月間は妊娠しないようにしましょう。 風疹ウィルスに対する抗体があるかどうかわからない場合は、医療機関で血液を採って行う抗体検査によって抗体の有無を調べることができます。 男性では、風疹の予防接種を受けていない人が多く見られます。これは風疹を含むワクチンの定期予防接種制度の移り変わりが関係しています。 生年月日によって風疹の定期接種を受けているかどうかが異なるので、確認してください。 接種を受ける機会がなかった人や、受けたかどうかわからない人、風疹に罹ったことがあるかどうかわからない人などは、 自分や家族を風疹から守るために、予防接種を受けることをお勧めします。 以前に接種を受けたことがある人が接種を受けていないと覆って、再度接種を受けても問題はありません。 接種希望の場合は、医療機関に風疹ワクチンの用意を事前に問い合わせるとよいでしょう。 現在、主に麻疹ワクチンと風疹ワクチンが混合されている麻疹風疹混合ワクチンが使われています。 主な副反応には、発熱や発疹などがあります。 風疹の予防接種の費用は、定期接種の年齢(1歳児、小学校入学前の1年間の幼児)の場合は、居住地の自治体が接種の費用を全額負担しています。 それ以外の年齢の場合は、自費になりますが、費用は医療機関によって異なります。 自治体によっては、摂取費用の助成を行っているところもあります。

◆海外に渡航する場合

2016年には、インド、中国、インドネシアなどで、風疹に罹っている人が多く見られました。 また、2017年には、フィリピンで風疹が流行したという情報もありました。 さらに、風疹の患者数を把握していない国もまだ多くあったり、風疹の予防接種を実施していない国もあるため、注意が必要です。 厚生労働省検疫所では、「海外渡航で検討する予防接種の種類の目安」として、風疹の予防接種を受けることを推奨しています。 風疹の抗体がない人が海外へ行く場合は、事前に麻疹風疹混合ワクチンの接種を受けるようにしましょう。