COPD(慢性閉塞性肺疾患)

喫煙歴があって、咳や痰が多かったり、息切れしやすい場合は、『COPD』が疑われます。 COPDは、呼吸機能が低下するだけでなく、肺癌や心筋梗塞、骨粗鬆症など、全身の病気と並存することが多いので、全身状態にも注意が必要です。 また、COPDは、自覚症状がないうちに進行します。 慢性の「咳」「痰」「息切れ」を見逃さず、早めに医療機関を受診することが大切です。 40歳以上で喫煙している人は、呼吸機能検査を受けることが勧められます。


■COPDとは?

慢性的に咳、痰、息切れが起こり、呼吸が十分に行えなくなる肺の病気。

「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」は、呼吸の際の空気の通り道である「気管支」や、肺の中の細い気管支の 先端にある「肺胞」に炎症が起こって、肺の中の空気の流れが悪くなり、呼吸に欠かせない肺の組織が壊れていく病気です。 これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていた病気がCOPDに含まれます。 COPDの主な原因は喫煙です。タバコの中には多くの有害物質が含まれており、それらが気管支の壁に炎症を起こすだけでなく、 中には、気管支の末端にある「肺胞」にまで侵入して、組織を壊す物質もあります。 気管支や肺胞の炎症は、主に、呼吸するときに有害な物質を吸い込むことで起こります。 喫煙者のうち、COPDを発症する人の割合は15〜20%といわれていますが、患者の95%以上は「喫煙歴のある人」です。 また、喫煙していない人でも、受動喫煙による影響を受けると考えられます。 そのほか、大気汚染や、粉塵などが炎症の原因になると考えられています。 大気汚染で知られる「PM25」もその一つで、タバコに多く含まれています。PM25のように粒子が非常に小さい物質は、 たやすく肺胞まで侵入してしまいます。 COPDの推定患者数は、10年前には40歳以上の約630万人といわれていましたが、現在では約700万人に増加しているといわれています。 COPDの患者数は世界的に増え続けていて、2020年には世界の死亡原因の第3位になると予想されています。 患者の約8.5%が40歳以上で、ピークは65〜75歳となっています。


●症状

気管支に炎症が起きると、「咳」「痰」が出るようになります。さらに炎症が進むと、気管支の内腔が狭くなって空気が 通りにくくなります。さらに肺胞の壁が壊れて肺胞同士が融合するなど、肺全体が弾力を失い、膨らんだままになってしまいます。 すると、吸い込んだ空気が肺にたまって吐き出せなくなり、新たな空気を吸い込むことが難しくなります。 そのため、「息苦しさ」を感じます。 また、酸素を取り入れて二酸化炭素を排出する「ガス交換」の働きが十分に行えなくなるため、「息切れ」が生じます。 喫煙の習慣があり、階段や坂道を上ると息切れがしたり、同年代の人と階段や坂道を歩いていて、自分だけ遅れてしまうような場合は、 COPDが疑われます。COPDが進行すると、安静時にも息切れを起こすようになります。


●COPDは”全身の病気”

動脈硬化や骨粗鬆症、肺癌などとの並存が多く見られる

これまで、COPDは、”肺の病気”とされていましたが、最近では、他の症状や病気と並存することが多いため、 ”全身の病気”といわれるようになっています。 COPDの患者さんは、炎症により気管や気管支などの粘膜が傷ついているので、病原体に感染しやすくなっています。 そのため、風邪やインフルエンザ、肺炎などの感染症を起こしやすいことが知られています。 感染症を起こすと、咳や痰、息切れなどの症状が急激に悪化することがあり、これを「憎悪」と呼びます。 また、他の病気を合併するケースが多いこともわかってきました。例えば、「骨粗鬆症」「筋力低下」「心筋梗塞」 「消化器疾患」「抑うつ」「糖尿病」などです。肺の病気が全身に影響を及ぼす理由は、肺に炎症が起きる前後に出る物質 (サイトカイン)が、血液を介して全身に巡り、炎症性の疾患を起こすからです。 ほかにも、COPDの患者さんは息切れを起こすため、運動を避けるようになりがちです。 運動不足になると、筋力低下も起きやすくなります。さらに外出を避け、引きこもるようになると、 抑うつを起こすこともあります。

次のような症状や病気と並存するケースがみられます。

▼全身の筋肉が萎縮する
体を動かすと息切れするため、運動不足になりやすく、筋肉が萎縮する傾向があります。

▼動脈硬化
日本では、脳梗塞や脳出血など、脳の動脈硬化が主な原因となる病気との並存が多く、心筋梗塞や狭心症など、 心臓の動脈硬化が主な原因となる病気との並存が多く見られます。 最近は、日本でも心筋梗塞や狭心症との並存が増加してきています。

▼肺癌
COPDが中等度以上になると、2割の人に肺癌が並存するといわれています。 ただし、初期でも肺癌が並存することがあります。

▼骨粗鬆症
骨粗鬆症は高齢の女性に多い病気ですが、COPDがあると、早い時期に骨粗鬆症になったり、 進行が早まったりすることがあります。

▼うつ
患者の半数近くにうつ状態が見られます。COPDでは、常に息切れがあり、咳と痰が出ることなどから、 家に閉じこもりがちになり、気持ちが落ち込みやすいと考えられます。

▼肺性心
COPDで肺の機能が低下すると、肺動脈の血圧が高くなり、心臓の右心室に肥大や拡張が起こることがあります。 この状態が肺性心です。進行すると心不全を起こす危険性があります。

▼胃潰瘍
胃潰瘍が並存することがあります。


●COPDの受診の目安

40歳以上の喫煙者で、咳や痰が続く場合は検査が必要

COPDが疑われるのは、次のチェック項目のうち3項目以上が当てはまる場合です。

  • 1日に何度も咳が出る
  • 1日に何度も痰が出る
  • 40歳以上である
  • 喫煙歴がある
  • 同年代の人に比べて息切れしやすい

痰を伴わない空咳の場合は、COPD以外の病気が疑われます。しかし、痰の色が白っぽく、朝起きたときしか 痰が出ないような場合でも、咳と痰が毎日出るのは、初期のCOPDである可能性があります。 さらに進行すると、同じ世代の人と並んで歩いたときや、階段を一緒に上り下りした時に息切れがして、 1人だけ遅れるようなことが起こります。

上記のチェック項目で3項目以上が当てはまる場合や、それに加えて、「長年空気の汚れたところに住んでいた」 「粉塵の舞う場所でマスクをしないで働いていたことがある」などの条件が重なる人は、早めに呼吸器科や呼吸器に 力を入れている内科などを受診することが勧められます。