受動喫煙

受動喫煙とは、自分の意思とは関係なく、周囲のタバコの煙を吸い込むことを言います。 タバコの煙には、喫煙者が吸い込む主流煙、煙の先から出てくる副流煙、喫煙者から吐き出される呼出煙の3種類があります。 副流煙には主流煙よりも多くの有害物質が含まれています。 したがって、喫煙者本人よりも、受動喫煙の方がより一層、さまざまな病気を招くリスクが高くなります。


■さまざまな病気を招く「受動喫煙」

タバコの煙には、喫煙者本人が吸う主流煙と、吐き出す呼出煙、 火のついたタバコから立ち上がる副流煙があります。 喫煙者本人が口から吸い込む主流煙が身体に害を及ぼすのは当然ですが、タバコの先から立ち上がる副流煙にも強い毒性があります。 タバコの煙に含まれる発癌性物質の中には、主流煙より副流煙に多く含まれているものが数多くあります。 副流煙は主流煙に比べ、ニコチンで2.8倍、タールは3.4倍も多く含まれています。 国民栄養調査では、家庭または職場での受動喫煙者の血中ニコチン濃度も調べていますが、 それによると、毎日、喫煙者の近くでタバコの煙を吸わされた人は、近くに喫煙者がいない人よりも男性では2.7倍、 女性では4.0倍、血中ニコチン濃度が高くなっていたと報告されています。

健康を害することを承知の上で喫煙している人を、無理にやめさせることはできません。 しかし、喫煙が、喫煙者本人だけではなく、周囲の人の健康も害することは知っておくべきであると思います。 自分がタバコを吸わなくても、喫煙者の近くにいるだけで、呼出煙と副流煙の影響を受けてしまいます。 これが受動喫煙です。 受動喫煙は、肺癌心筋梗塞のリスクを高めます。 また、子供への影響では、中耳炎、咳や息切れ、 喘息、急性気管支炎や 肺炎のリスクを高めたり、 数学の理解力や読解力を低下させるなどの報告があります。 子供の肺は、新生児から小学校低学年の間に成長して、成人とほぼ同じ肺機能を持つようになります。 この間に受動喫煙があると、大きな影響を受けてしまいます。 例えば周囲の大人が屋外で喫煙しても、数時間は吐く息に有害物質が含まれていますので、室内に入れば子供に受動喫煙させてしまいます。 なお、最近では、『親の喫煙により、子供が「慢性骨髄性白血病」になるリスクが高まる』という論文も発表されています。

また、「受動喫煙」が、実際どれくらい発癌に影響しているのかを示すデータがあります。 日本人で、非喫煙者の既婚女性の肺癌による死亡率を、夫の1日の喫煙本数で比較したものです。 夫が非喫煙者の場合と比べて、夫の1日の喫煙本数が1~14本の場合には、1.42倍、20本以上吸う場合には1.92倍にもなります。 このように、受動喫煙はとても危険なものです。 これでは、喫煙者の近くでタバコの臭いや煙を吸わされる非喫煙者(受動喫煙者)は、たまったものではありません。

大気汚染に関連して、PM2.5が話題になったことはご存知と思います。 PM2.5は、粒子が非常に小さいため、肺の奥まで入りやすく、肺や全身の炎症を引き起こし、呼吸器や循環器疾患による死亡率を上げる原因になります。 タバコの煙も、典型的なPM2.5の1つなのです。 日本では、大気汚染は以前に比べ改善されましたが、タバコの煙による屋内の空気汚染が問題になっています。 例えば、喫煙可能な飲食店や、分煙が不完全な飲食店の禁煙席では、タバコの煙による空気汚染がPM2.5の環境基準を大きく上回っており、 喫煙してもいなくても受動喫煙による健康被害を受けています。 また、狭い密閉された喫煙室で喫煙する際、喫煙者は能動喫煙と受動喫煙の両方を行っていることになります。