マイコプラズマ肺炎

肺炎の中でも、特に若い人に多いのが『マイコプラズマ肺炎』です。 症状は風邪によく似ていますが、長く続く頑固な咳が特徴です。 近年患者数が急増しており、重症化する例も少なくありません。


■「マイコプラズマ肺炎」とは?

若い人に多く見られる肺炎。2006年から患者数が急増。

肺炎は、細菌などのさまざまな病原体に感染して起こります。そのなかで、近年増加の傾向にあるのが 『マイコプラズマ肺炎』です。 通常、マイコプラズマ肺炎は、秋から冬にかけて多く見られます。 ところが、2006年は春先から患者数が増え続け、冬本番の頃には例年を大きく上回りました。

「マイコプラズマ」は微生物の一種で、大きさは約1マイクロメートル(1/1000mm)と、 細菌とウィルスの中間くらいの大きさをしています。細菌と異なり、細胞壁がないのが特徴です。 肺炎は、「肺炎球菌」の感染によるものが多く、風邪が治りきらない人やお年寄りなど、 体力が低下している人に多く見られます。 一方、「マイコプラズマ肺炎」は、健康な人にも発症します。子供や若い年代の人に多いのですが、 お年寄りにも増えつつあり、重症化して入院する人の数は若い年代の2倍近くになっています。

マイコプラズマは、感染した人の咳などで飛び散った病原体を吸い込んだり(飛沫感染)、 直接病原体に触れた手で口や鼻を触ったりしてうつります(接触感染)。 感染力が強く、家庭や学校、職場などで集団感染する例が多くなっています。 ただし、マイコプラズマに感染しても、必ずしも肺炎になるわけではありません。 多くはのどの炎症(上気道炎)ですみ、肺炎を起こす人は感染した人の10%以下とも言われています。


●マイコプラズマ肺炎の症状

風邪によく似た症状だが、長く続く頑固な咳が特徴

一般的な肺炎と異なり、マイコプラズマ肺炎は感染後すぐに症状があらわれるわけではありません。 感染から約3週間後に、以下の症状が現れます。

▼頑固な咳
痰を伴わない、乾いた咳が長く続くのが特徴です。咳が軽い人もいますが、 多くは、夜眠れないほどの激しい咳が出ます。
▼透明または白っぽい痰
透明な痰や白っぽい痰が出ることがあります。
▼発熱
高熱が出ることもあれば微熱が出ることもあります。軽い悪寒がある場合もあります。

これらの症状以外にも、「だるさや関節痛、頭痛、のどや耳の痛み」などが現れます。


マイコプラズマ肺炎が重症化すると

マイコプラズマ肺炎の症状は、風邪と似ていることから、風邪と間違われたり、あるいは他の肺炎と 間違われたりすることがあります。しかし、風邪薬や他の肺炎の治療に使われる「ペニシリン系」や 「セフェム系」の抗菌薬は、マイコプラズマ肺炎には効果がないため、重症化してしまうことも 少なくありません。 重症化すると、脳や耳、肝臓などに障害が起こり、脳を包む膜に炎症が生じる「髄膜炎」「中耳炎、副鼻腔炎、肝機能障害」などを引き起こすこともあります。 また、一時的に「ぜんそく」になることもあります。気になる症状が現れたらすぐにかかりつけ医を 受診して、自分の体を守り、他の人に感染を広げないことが大切です。


●マイコプラズマ肺炎の診断と治療

治療には「マクロライド系」などの抗菌薬が使われる

◆検査と診断

医師は、まず問診で症状を詳しく尋ね、聴診器で胸の音を確認します。重症の場合、聴診器を当てると ”ブツブツ”という音が聞こえます。また、「胸部エックス線検査」で肺の様子を確認します。 マイコプラズマ肺炎では、気管支に沿って炎症が起こるので、それに合わせた線状の影や、 肺に空気が入らない「無気肺」が見られます。マイコプラズマ肺炎で肺に水がたまる人は20%以下ですが、 その場合は水のたまった部分が白い影として写ります。しかし、多くは胸部エックス線検査だけでは確定できません。 肺炎の病原体を確定するためには、病原体を培養する「培養検査」が行なわれることもありますが、 結果が出るまでに日数がかかります。また、「血液検査」も行なわれますが、結果が出るまでに、 やはり、1日程度かかってしまいます。そのため、通常は、症状や経過、流行情報などから判断して、治療を開始します。

◆治療で使われる主な薬

「マイコプラズマ肺炎」には、マイコプラズマが増殖するときにたんぱく質を合成するのを阻害する 「マクロライド系」「テトラサイクリン系」の抗菌薬がよく効きます。 最近では、マクロライド系の新しい抗菌薬「ニューマクロライド系」が使われることもあります。 通常、これらの抗菌薬は約1週間、ニューマクロライド系の抗菌薬では3日程度、飲み薬で服用します。 なお、副作用として、「胃腸障害や肝機能障害」などが起こることがあります。 7歳未満の子供の場合、テトラサイクリン系では歯が変色することがあるため、 基本的にマクロライド系やニューマクロライド系の抗菌薬が使われます。

症状が長く続く場合は、薬を替えたり、服用期間を長くします。喘息の症状が強い場合には、 「気管支拡張薬」「吸入ステロイド薬」が使われることもあります。 マイコプラズマに感染すると、6~30日間は他の人にうつす可能性があります。 特に、咳が出ている間は感染が起こりやすいので、症状が治まったからといって 勝手に薬の服用をやめず、必ず医師の指示に従うようにしてください。


●日常生活での注意点

予防には手洗い・うがいを徹底し、発症後は安静にしてマスクをする

マイコプラズマの感染を予防するためのワクチンはありません。 手洗い、うがいをしっかりして、日常生活の中で注意をすることが大切です。 また、家庭や職場で感染した人が出ると、家族や同僚にうつす場合がよくあります。 ”タオルなどの共用を避ける””食事は1人分づつに取り分ける”など、感染防止に努めましょう。 マイコプラズマに感染したら、十分な睡眠と栄養をしっかりとって安静を保ちます。 そして、外出する際はマスクを着用し、他の人にうつさないように十分注意するようにしてください。


●その他

▼マイコプラズマ肺炎とインフルエンザや風邪との違い
マイコプラズマ肺炎の症状は、インフルエンザとも似ています。 しかし、インフルエンザでは突然、高熱や関節痛などが生じるのに対し、 マイコプラズマ肺炎は、2~3日かけてだんだん症状が強くなるという違いがあります。
また、風邪は一般に2~3日で治り、長引いた場合でも徐々に軽くなります。 一方、4~5日たっても症状が治まらない場合には、マイコプラズマ肺炎が疑われます。 他の症状が治まったものの、咳だけが長く続く場合も要注意です。