非扁平上皮癌の治療

■肺癌のタイプも薬の選択に関わる

肺癌は、「非扁平上皮癌」「扁平上皮癌」「小細胞肺癌」に大別され、非扁平上皮癌はさらに「腺癌」「大細胞癌」に分けられます。 非扁平上皮癌は喫煙者に多く、腺癌は肺癌全体の約50%、大細胞癌は約5%を占めています。 扁平上皮癌と小細胞癌は喫煙者に多く、扁平上皮癌が全体の30%、小細胞肺癌は約15%を占めます。 こうした肺癌のタイプによっても、抗癌剤の選択は異なります。


■非扁平上皮癌の治療

遺伝子変異があれば、分子標的薬の使用が可能

非扁平上皮癌の場合、特定の遺伝子変異のある人とない人がいます。現在わかっているのは、「EGFR(上皮成長因子受容体)」 というたんぱく質を作る遺伝子に変異がある場合と、「EML」「ALK」という遺伝子が融合して 「EML4-ALK融合遺伝子」が生じている場合です。これらは通常、どちらか一方があるか、どちらもないかで、 両方がある人はほぼいません。こうした遺伝子変異の有無により、分子標的薬が選択されます。

▼EGFRの遺伝子変異がある場合
分子標的薬の「ゲフィニチブ」「エルロニチブ」が用いられます。 どちらも内服薬で、効果が見られる限り継続して服用します。効果が見られなくなってきた場合や、 患者さんが副作用に耐えられないという場合は、従来の抗癌剤に切り替えます。

▼EML4-ALK融合遺伝子がある場合
「クリゾニチフ」という分子標的薬が選択されます。この薬も内服薬で、効果が高いと考えられています。 効果が見られる限り服用を継続しますが、効果が見られなくなってきたり、患者さんが副作用に耐えられないという場合は、 従来の抗癌剤に変更します。

▼遺伝子変異がない、不明の場合
前述のどちらにも遺伝子変異がない、あるいは変異の有無がわからないといった場合は従来の抗癌剤を用いて治療します。

●従来の抗癌剤の用いられ方

従来の抗癌剤にはさまざまな種類がありますが、肺癌の治療の中心になるのは「プラチナ製剤」です。 プラチナ製剤と、それ以外の抗癌剤の中から1個を選んで組み合わせ、2剤併用での治療が行われます。 最近は特に「ペメトレキセド」という抗癌剤を、プラチナ製剤に組み合わせることが多くなってきています。 主に非扁平上皮癌の治療に用いられます。

●より効果的な方法もある

さらに効果を高めるために、「ベバシズマブ」という分子標的薬を加えて用いる場合もあります。 ベバシズマブには、癌細胞が成長するのに必要な新しい血管ができるのを妨げる作用があり、 「血管新生阻害薬」とも呼ばれています。 従来の抗癌剤は、点滴で投与されます。月1回の治療を4~6ヵ月間繰り返し行い、その後は治療を休むのが一般的です。 しかし、最近は治療を休まず、その間にペメトレキセドやベバシズマブを単独で用い続ける、「維持療法」 も行われるようになってきました。
こうした治療の効果が見られなくなった場合、まだ用いていないほかの種類の抗癌剤を1剤選び、単独で使用します。


■扁平上皮癌などの治療

従来の抗癌剤を2剤併用するのが基本

それぞれ次のような治療が行われます。

▼扁平上皮癌の場合
プラチナ製剤が中心に用いられ、それ以外の抗癌剤を1剤選んで併用します。 多くは、「ゲムシタビン」「ドセタキセル」「バクリタキセル」のいずれかを併用します。

▼小細胞肺癌の場合
プラチナ製剤を中心に、「エトボンド」「イリノテカン」を併用するのが一般的です。