気管支喘息の薬(薬物療法)
気管支喘息の治療では、「吸入ステロイド薬」を中心とする発作予防の薬物療法が基本になります。 発作がないときにも根気よく治療を続けて、健康な人と変わらない生活ができる状態を目指します。 喘息の治療には、炎症を抑えるステロイド薬、気道を広げる気管支拡張薬、 アレルギー反応によって出てくる刺激性物質の作用を抑える抗アレルギー薬などが用いられています。
■喘息の長期管理に使う薬とは?
現在、長期管理薬の中心となっているのは、吸入で使うステロイド薬と、気管支拡張薬の長時間作用性β刺激薬です。
【質問】吸入ステロイド薬とは?
【答】
喘息の症状のもとにある、気道の慢性的な炎症を抑える最も強力な作用を持ち、継続して使うことで、気道をよい状態に保ち、 発作を起こりにくくする効果があります。喘息治療は4段階のステップに分けて考え、重症度に応じて段階的に強化していきますが、 どのステップでも、基本となるのは吸入ステロイド薬です。 毎週症状が出るほどではない軽症の人なら、低用量の吸入ステロイド薬を単独で使うだけで治まる人もいます。 吸入ステロイド薬にはそれぞれ低用量~高容量の製品があり、段階に応じて使い分けられます。
【質問】長時間作用性β2刺激薬とは?
【答】
気管支拡張薬には作用時間の短いもの(短時間作用性)と長いもの(長時間作用性)があり、症状を取るには短時間作用性の薬が、 長期管理には長時間作用性の薬が用いられます。吸入ステロイド薬と併用する薬の中でも、β2刺激薬は、気管支を広げる作用が最も強く、 通常、吸入ステロイド薬とこの薬の併用が第二の治療ステップとなります。 最近は、この2剤をあらかじめ配合した吸入薬が登場し、広く使われるようになっています。
【質問】配合剤のメリットとは?
【答】
β2刺激薬で気管支を広げるだけの治療では、経過がよくないことは明らかになっています。 しかし、従来、吸入ステロイド薬とβ2刺激薬を処方されると、吸入ステロイド薬ばかり残っているという患者さんが多かったのです。 吸入ステロイド薬は吸入してもすぐに楽になるわけではないため、効果を実感しにくいからでしょう。 その点、配合剤であれば、確実にステロイド薬を併用できます。 β2刺激薬ばかりに頼る不十分な治療を防ぐことができ、効果の点でも、相乗効果が期待できるといわれています。 ただし、配合剤は種類が限られるので、それでうまくコントロールできなければ、単剤の吸入ステロイド薬と長時間作用性β2刺激薬を組み合わせたり、 追加したりすることもあります。
【質問】吸入薬の種類による適応は?
【答】
喘息の長期管理に使う吸入薬には、現在、吸入ステロイド薬の単剤が5種類と、長時間作用性β刺激薬との配合剤が4種類ありますが(2014/4月)、 剤形としては、粉末状の薬を使うドライパウダー剤と霧状の薬を使うエアゾール剤の2つのタイプに大きく分けられます。 吸入薬の場合、中身のステロイド薬の性質の面と共に、剤形や器具の面からの使いやすさも重要です。 ドライパウダー剤は、自力で吸い込む必要があるため、目安としては、麺類をすすり込めるくらいの力が必要でしょう。 一方、エアゾール剤は押せば薬が噴霧されるので強く吸い込めなくても使えますが、噴霧と吸入のタイミングを合わせる必要があります。 器具を押す力が弱くなったり、タイミングよく吸えない人は、補助器具を付けて使う方法もあります。
【質問】吸入薬で起こる副作用は?
吸入ステロイド薬は内服薬と比べて全身性の副作用が少ないといわれますが、吸入薬で起こりやすい副作用もありますか?
また、β2刺激薬による副作用は?
【答】
声のかすれ(嗄声)が出てくることがあります。なかには、真菌(カビ)感染によるカンジダ症が原因のこともあり、その場合は舌の痛みなども現れます。 特に糖尿病の管理が悪い人などは感染が起こりやすいので注意が必要です。 また、β2刺激薬を使用すると心拍数が増すので、多量に使うと動悸がして、心臓に負担もかかります。
【質問】他に併用する薬とは?
【答】
配合剤が登場した当初は、それだけ使えばほとんどの人がよくなるかと期待されましたが、その後の大規模臨床研究で、 それだけでコントロールできる人ばかりではないことがわかりました。 症状のない状態を目指すには、別の作用を持つ薬や、経口ステロイド薬などが必要になる人がいます。
【質問】どのような薬が使われますか?
抗アレルギー薬では、主に内服のロイコトリエン受容体拮抗薬が用いられます。 気管支の収縮や炎症、粘膜のむくみ、気道の過敏性などに関わるロイコトリエンという物質の作用を抑える薬です。 気管支拡張薬では、徐放性テオフィリンの内服薬が夜間の発作予防や日中の症状コントロールなどに用いられます。 通年性アレルギーがある難治性喘息には、アレルギー反応の中心的な役割を果たしているIgEの働きを抑える抗IgE抗体という注射薬もあります。
■発作が起こった時に使う薬とは?
速やかに作用する気管支拡張薬を用いるのが基本で、横になれる程度の軽度の発作では、通常、短時間作用性β2刺激薬の吸入薬を使います。 長期管理薬としてブデソニルドとホルモテロールの配合剤を使う場合は、追加吸入することで発作治療にも使えます。 そのほか、短時間作用性のテオフィリン薬(内服)や抗コリン薬(吸入)、ステロイド薬(吸入・内服)などを使うこともあります。 医師から指示された薬を使っても治まらなかったり、重い発作のときは受診が必要です。
■薬を使っていれば喘息は治る?
残念ながら、喘息自体は治りません。吸入ステロイド薬を使って発作が起こらないようになった人も、薬の使用を中止すると、また炎症がぶり返してしまいます。 ただし、薬を使って症状がない状態を保てば、健康な人と変わらない生活が送れます。それが今の治療目標です。 喘息を持ちながら、オリンピックで活躍した人もいます。