■内視鏡治療のタイプ
新しい方法によって治療の対象が広がった
内視鏡治療の方法には、次のようなものがあります。
●2チャンネル法(内視鏡的粘膜切除術)
従来から行なわれている、代表的な治療法です。胃に内視鏡を挿入し、見やすいように癌を染色して、 電気メスで切除する範囲に印をつけます。場合によっては、切除しやすいように胃の粘膜の下に 生理食塩水を注入して、癌を隆起させます。隆起した胃の粘膜の中心をつまんで持ち上げ、 スネアと呼ばれる特殊な金属の輪をかけて締め付け、スネアに電流を通して癌を焼き切ります。 なお、実際の治療では、癌を取り残さないために、印から5mm~1cmほど外側を焼き切ります。 2cmの癌でも3cmほど切除することになるため、癌の大きさによっては、一度に焼き切ることができません。 その場合は、癌を分割して切除することになりますが、この方法だと癌を取り残す可能性が高くなってしまいます。
●内視鏡的粘膜下層剥離剤(ESD)
近年、新しく開発された治療法で、電流メスを使って癌のある部分の胃の粘膜を剥ぎ取ります。 まず、2チャンネル法と同様に癌を染色して、切除する範囲に印をつけます。 胃の粘膜の下に生理食塩水を注入して、癌を隆起させます。印の外側を取り囲むように、 胃の粘膜を切ります。最後に、専用の電気メスを使い、胃の粘膜の下の組織ごと、癌を剥ぎ取っていきます。 この方法だと、スネアをかけられない大きさの癌でも切除することができ、 癌の取り残しは大幅に減少します。しかし、2チャンネル法より技術的に難しいため、 治療にかかる時間は少し長くなります。最近、「内視鏡的粘膜下層剥離術」は急速に広まっており、 今後は胃癌の内視鏡治療の主流になると考えられています。