胃癌の治療『内視鏡治療』

胃癌の早期癌に適した治療法の1つに、『内視鏡治療』があります。 内視鏡治療は、現在の胃癌の治療法の中で、体への負担が最も少ない治療法です。 近年、より大きな癌を、より確実に切除できる方法が開発され、内視鏡治療を受けられる人も増えてきています。


■内視鏡治療とは?

お腹を切らずに癌をとる、体への負担が少ない治療法

「内視鏡治療」は、早期癌を対象にした治療法です。 「内視鏡」という、先端にカメラなどがついた医療器具を口から胃の中に入れ、 お腹を切らずにいの内側から胃癌を切除します。

▼内視鏡治療のメリット
お腹を切らずに治療ができるので、患者の体への負担が非常に少なくなっています。 軽い麻酔をかけて行なわれるため、痛みも最小限ですみ、手術後の後遺症もありません。 癌の大きさにもよりますが、治療にかかる時間は1時間程度です。 胃癌の内視鏡治療は、開腹手術と同様に入院して行なわれますが、入院期間は短くなります。 お腹を切る手術は手術後10日~2週間の入院が必要ですが、内視鏡治療は5~7日程度ですむため、 入院費用も比較的安くなります。

▼内視鏡治療の注意点
お腹を切らずに行なう内視鏡治療も、手術の一種ですから、特殊な技術が必要とされます。 場合によっては、治療中に出血が起きたり、胃に孔が開いてしまうことがあります。 治療中に出血したり、胃に孔が開いた場合は、開腹手術に切り替えることもありますが、 多くは内視鏡を使って出血を抑えたり、小さな孔は医療用のクリップで閉じるなどして対処します。 また、治療後数日してから胃に孔が開くこともあるので、それに備えるためにも入院が必要になります。

■内視鏡治療の適応

早期癌の一部に対して行なうことができる


●内視鏡治療が受けられる人

内視鏡治療を受けることができるのは、原則として次のような条件を満たす人です。

▼リンパ節への転移がない
内視鏡では胃の中の癌しか切除できません。 胃の外側にあるリンパ節への転移がある人には適しません。

▼粘膜にとどまっている
癌が胃の粘膜にとどまっている早期癌が対象です。

▼大きさが2cm以下
癌の大きさが2cmより大きいと、転移している可能性が高くなります。

▼分化型
胃癌は、癌細胞の形や並び方から「分化型」と「未分化型」に分けることができます。 内視鏡治療は、転移の可能性が低い分化型の場合に行なわれます。

●内視鏡治療が受けられない人

4つの条件を満たしても、内視鏡治療が受けられない場合もあります。 例えば、癌の中に潰瘍や潰瘍の治ったあとがあると、切除するときに胃に孔が開く危険性が高いため、 内視鏡治療は受けられません。また、内視鏡で切除した部位には潰瘍ができるため、 癌が胃の入り口や出口付近にある場合は、潰瘍の傷跡で狭くならないように治療を控えます。 内視鏡で見づらく治療が難しい場所にある癌も適応になりません。こうしたことから、 実際に内視鏡治療の対象になるのは、施設によって差はありますが、早期癌患者の3割程度です。 逆に、適応条件を満たしていなくても、内視鏡治療が選択される場合もあります。 例えば、お年寄りや心臓に重い病気がある人にとって、お腹を切る手術は危険性が高いため、 内視鏡治療が行なわれることがあります。治療法の選択の際は、医師とよく相談して決めることが大切です。