■腹腔鏡手術の後遺症とその対策

胃を切除することによって、後遺症が現れることがある


●手術の後遺症

腹腔鏡手術の後は、腸閉塞になりにくいという利点があります。しかし、胃を切除したことに伴う後遺症は、 腹腔鏡手術でも開腹手術でも、同じように起こります。

▼ダンピング症候群
通常、食べたものは胃の中にとどまり、少しづつ小腸に送られます。 しかし、幽門を切除すると、食べた物が一度に小腸に流れ込むことから、食事の直後や約2~3時間後に、 「動悸、吐き気、冷や汗、めまい、脱力感」などが現れる「ダンピング症候群」が起こります。

▼貧血・骨粗鬆症
胃の中には、カルシウムや鉄分の吸収を助ける物質が存在します。胃を広範囲に切除すると、 その物質が減少して吸収しにくくなり、「貧血」や「骨粗鬆症」が起こります。

▼逆流性食道炎
胃の入り口を切除すると、本来は腸へ流れていくはずの消化液が逆流して、胸焼けなどが生じる 「逆流性食道炎」を起こすことがあります。

この他、「胆石」ができることもあります。


●「縮小手術」で後遺症を少なくする

後遺症を少なくするには、「縮小手術」が有効です。縮小手術は、従来の手術法よりも胃やリンパ節の 切除範囲をなるべく小さくしたもので、胃の消化機能に及ぼす影響を少なくすることができます。 縮小手術の対象となるのは、リンパ節転移の可能性が少ない早期癌です。 主に、胃の出口である幽門、リンパ節、胃の周辺の神経などを残します。 幽門を残すと、ダンピング症候群を防ぐことができ、胆のうや大腸につながる神経を残すと、 手術後の下痢や胆石が起こりにくくなります。縮小手術も、腹腔鏡を使って行なうことができます。